
赤・青・黄・緑の図形を移動してみると!
赤・青・黄・緑の4つの図形でできた直角三角形があります(図の左)。このうち緑以外の赤・青・黄、3つの図形を移動してみます(図の右)。はたして、1マスすき間ができています!
一見すると2つの直角三角形は形も大きさも同じに見えます。それにもかかわらず1マスすき間が増えているのですから。さあ、この謎解きできますか。

トリックはどこに?
赤・青・黄の図形を移動する前後の直角三角形をよく見てみましょう。一見すると赤と青の直角三角形の斜辺どうしをつなげたラインは、前後の直角三角形で変わらない──直線──に見えます。ここにトリックがあります。

直角三角形に見えるどちらの図も、実は直角三角形ではありません。直角三角形の斜辺は直線です。しかし、直角三角形に見えるどちらの図もその斜辺は折れ線なのです。折れ線の部分は一見すると直線にみえることがトリックです。
直角三角形を囲む長方形を考えるとわかりやすくなります。長方形に対角線(上図の赤線)を引いてみます。3つの図形②③④を移動する前は、対角線と③④の間にすき間があります。そして、移動した後は対角線から③④がはみ出しています。これは一見してはわかないほど小さいです。
対角線に対して凹んだ部分とはみ出た部分の面積
移動の前後の直角三角形にみえる図形と長方形の面積を計算してみます。
移動前 ①+②+③+④=長方形(①+②)+直角三角形③+直角三角形④
=5×3+5×2÷2+8×3÷2
=15+5+12=32
移動後 (正方形の1)+①+②+③+④=1+32=33
長方形 5×13=65
すると、長方形を対角線(赤線)で半分にした面積は、65÷2=32.5です。したがって、移動前の面積32と長方形を対角線(赤線)で半分にした面積32.5との差は32.5−32=0.5です。これが対角線に対して凹んだ部分の面積です。
移動後の面積33と長方形を対角線(赤線)で半分にした面積32.5との差は33−32.5=0.5です。これが対角線に対してはみ出た部分の面積です。
つまり、移動の前後で、直角三角形にみえる図形の面積と長方形の半分の面積との差はどちらも0.5という小さい値であることから、③④の斜辺をつなげたラインが見た目で折れ線には見えずに長方形の対角線に見えてしまいます。

どこがフィボナッチ数なのか
折れ線がつくり平行四辺形は小さくて見えないけれど、すき間の正方形ははっきり見えることから不思議に思えるマジックになっています。
青と赤の直角三角形の縦横の長さはそれぞれ2と5、3と8です。そして長方形の縦横の長さはそれぞれ5と13です。これらの数はフィボナッチ数1、1、2、3、5、8、13、…の2から13までの数です。
フィボナッチ数については本連載
第29回:フィボナッチ数って何? 入門編
第30回:フィボナッチ数って何? 中学入試問題にチャレンジ!
第31回:フィボナッチ数って何? フィボナッチ数たし算マジックの謎を解け!
をご覧ください。
青の直角三角形の縦:横=2:5は倍率にして5/2=2.5、赤の直角三角形の縦:横=3:8は倍率にして8/3=2.66…。この倍率が異なることが折れ線になることを意味します。そして、2.5倍と約2.67倍が近い数であることが、青と赤の直角三角形がよく似た形にみえる理由です。

執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)
1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。「桜井進の魔法の算数教室」と「桜井進の数学浪漫紀行」を毎月開催。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
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