第4回:塾の先生が教えてくれた「見守る」と「放置」の違い

「勉強は塾に任せて、家では見守るだけでいいんですよ」

塾の先生にそう言われて、最初は戸惑うでしょう。見守るって、具体的に何をすればいいの? それって、放置とどう違うの?

中学受験では、親の関わり方が合否を左右すると言われます。でも、その「関わり方」が難しいのです。過干渉すぎても、もちろん放置しすぎてもダメ。ちょうどいい距離感とは、いったいどこなのでしょうか。

中学受験で失敗したと感じる保護者には、ある共通点があります。それは「過干渉」です。塾選びや日々の学習管理、進捗状況の確認。親がすべきことは多岐にわたりますが、子どもの勉強に干渉しすぎるのは逆効果なのです。

大人に限らず、小学生の子どもにとっても、決められたことに取り組むのは退屈に感じることが多いもの。親が「これやりなさい」「次はこれ」と指示を出し続けると、子どもは勉強へのモチベーションを失うだけでなく、自分で考えて行動する力も身につきません。

でも、だからといって完全に放置していいわけでは、もちろんありません。小学生には、まだ長期的な計画を立てて実行する力が十分に育っていないからです。では、「見守る」とは何をすることなのでしょうか。

塾講師として長年受験生を見てきた先生は、こう説明します。「見守るというのは、子どもが困ったときにすぐに手を差し伸べられる距離にいるということです。常に監視するのではなく、子どもが『助けて』と言えるような存在でいること」

具体的には、こんなことです。子どもが勉強している内容について、完全に無関心ではいけません。「今、何を勉強してるの?」「難しそうだね」と、関心を示す。でも、「こうしなさい」と指示はしない。子どもが「わからない」と言ってきたら、一緒に考える。でも、すぐに答えを教えるのではなく、「どこまでわかった?」と聞いて、自分で考える時間を持たせる。

ある母親の話です。「以前は、子どもが勉強している横にべったり張り付いて、間違いを見つけたらすぐに指摘していました。でも、それをやめて、別の部屋で家事をしながら『何かあったら呼んでね』って言うようにしたんです。最初は不安でしたけど、不思議なことに、子どもの方から『ちょっと見て』って来るようになって」

見守るということは、信じるということでもあります。「この子なりに、考えているだろう」「この子なりのペースがあるだろう」と信じる。すぐに結果が出なくても、焦らず待つ。
でも、見守っていても、子どもが明らかに困っているときはあります。そういうときは、もちろん手を差し伸べていい。「最近、しんどそうだけど大丈夫?」「塾、楽しい?」と声をかける。そして、子どもが話したくなったら、じっくり聞く。

なかなか取り組もうとしないとき、どうすればいいか

「見守る」とわかっていても、子どもがいつまでもダラダラしていて、全然机に向かわない。そんな状況になると、親としては焦りが募ります。そこで口から出てしまうのが「早くやりなさい」という一言。でも、この声かけがうまくいかないのは、多くの親が経験済みのはずです。

子どもがなかなか取り組めない理由は、実はいくつかのパターンに分かれます。疲れていて体が動かない場合、何から手をつければいいかわからない場合、そして、なんとなく気分が乗らないだけの場合。それぞれで、親の対応は変わってきます。

疲れているなら、まず休ませることが先決です。「30分だけ横になっていいよ」と言って、タイマーをかけてあげる。それだけで、気持ちが切り替わることが多いのです。一方、何から始めればいいかわからない子には、「今日は算数の計算だけやってみようか」と、最初の一歩を小さく絞り込んであげると動き出しやすくなります。

気分が乗らないだけなら、「一問だけやってみて」という声かけが効果的です。人間は一度始めてしまうと続けやすくなる性質があります。最初のハードルを極限まで下げることで、「ついでにもう少し」となることが多いのです。

また、勉強の「始まり方」を家庭内でルーティン化することも有効です。「帰ったらまずおやつ、それから15分だけ休憩、そのあと塾の宿題」というように、流れを決めておく。毎日同じ流れがあると、子どもは「次はこれをする時間だ」と、親に言われなくても体が動くようになっていきます。

大切なのは、取り組めなかった日を責めないことです。「今日はやる気が出なかったんだね」と受け止めて、「明日はどうする?」と前を向かせる。責めてしまうと、勉強そのものへの抵抗感が強くなり、悪循環に陥ってしまいます。

中学受験を専門とする学習塾では、学習面は塾が、生活管理やモチベーションアップは家庭が、と役割分担を推奨しています。親が勉強内容まですべて見ようとすると、親子ともに疲弊してしまうからです。

「勉強のことは塾に任せる。私は、この子が安心して勉強に集中できる環境を作る」
そう割り切ることで、親も子も楽になれることがあります。親は、子どもにとって一番信頼できる「安全地帯」であればいい。どんなときでも「あなたの味方だよ」と伝え続けられる存在であればいい。それが、見守るということなのかもしれません。

【プロフィール】熱海康太(あつみ・こうた)

一般社団法人日本未来教育研究機構 代表理事。大学卒業後、神奈川県内の公立学校、私立小学校で教壇に立つ。その後、民間教育研究所の主任研究員を経て、現職。即効性、再現性、持続性のある教育実践をSNSで発信し、教育関係者から支持を集める。全国10,000人以上の先生方に講演を行うなど、幅広く活動。著書に『こどもモヤモヤ解決BOOK~もふもふ動物に癒やされながら、みんなの悩みをスッキリさせる159のヒント~』(えほんの杜)、『こんなときどうする? 失敗&ハプニング立ち直り術: 5分でカイケツ道場シリーズ』(実務教育出版)、『学級通信にも使える!子どもに伝えたいお話100』『伝わり方が劇的に変わる!6つの声を意識した声かけ50』(東洋館出版社)など10冊以上の教育書を執筆。

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