第43回:江戸時代もパズルはあったの? 目付字はデジタルマジック!

動物当てマジック

つぎの12匹の動物から一つ選んでください。それを当ててみせましょう。4色のカードをよくみて選んだ動物がいるカードの色をすべておしえてください。

私が選んだ動物があるカードは黄色と緑です。

あなたの選んだ動物は馬です!

というマジックです。この元になったのが江戸時代の「椿の目付字」と呼ばれるマジックです。動物当てマジックの種明かしの後に「椿の目付字」を見てみることにしましょう。

動物当てマジックの種明かしその1 隠れた数字

どうやってカードの色から動物を当てるのか、まずはその秘密からです。実は、次のように動物とカードには番号がふられています。とらからいのししまで左から1から12、そして赤は1、黄は2、緑は4、青は8です。

相手の答えが「黄と緑」であれば、黃2+緑4=6とカードの数をたし算します。6とは左から6番目のことです。これより馬とわかります。

選んだのが青ならば、青8なので左から8番目の猿が答えです。
選んだのが赤と黃と緑ならば、赤1+黃2+緑4=7なので左から7番目の牛が答えです。

動物当てマジックの種明かしその2 二進数

動物の順番はいいとして、4色のカードの番号がなぜ1、2、4、8なのか。馬がなぜ黃と緑にあるのか。謎解きの鍵は二進数です。

十進数とは十個の数字「0、1、2、3、4、5、6、7、8、9」で表した数のことです。十個の数字を用いた数の表し方を十進法と呼びます。

私たちは十進数をお金で理解しています。3095円とは千円札が3枚、百円玉が0枚、十円玉が9枚、そして1円玉が5枚のことだとわかっています。数字の位は右から1の位、10の位、100の位、1000の位ということです。

二進数とは二個の数字「0、1」で表した数のことです。普段に二進数を使うことがないので二進数の扱いには慣れていません。十進数と比べることで二進数も理解できます。

ポイントは位の数です。十進数は1からはじめて10倍ずつ大きくした10、100、1000が位の数になります。それに対して二進数は1からはじめて2倍すつ大きくした2、4、8、16が位の数になります。

二進数の位の数は、1円玉、2円玉、4円玉、8円玉と捉えるのがわかりやすいです。二進数0110(ぜろ いち いち ぜろ)とは、1円玉が0枚、2円玉が1枚、4円玉が1枚、そして8円玉が0枚を表すと捉えるのです。

したがって、二進数0110は十進数では0+4+2+0=6を表すということです。

十進数→二進数の計算方法 「1、2、4、8」がポイント

二進数の位の数は、「1、2、4、8」であることさえ押さえておけば、十進数を二進数で表す計算は簡単です。5の場合、「1、2、4、8」の中から5になるものを選ぶのは至って簡単です。5=1+4なので、1の位と4の位が1となり、残りの位は0となるので二進数0101です。

6=2+4なので、2の位と4の位が1となり、残りの位は0となるので6は二進数0110です。

9=1+8なので、1の位と8の位が1となり、残りの位は0となるので9は二進数1001です。

10=2+8なので、2の位と8の位が1となり、残りの位は0となるので10は二進数1010です。

11=1+2+8なので、1の位と2の位と8の位が1となり、残りの位は0となるので11二進数1011です。

12=4+8なので、4の位と8の位が1となり、残りの位は0となるので12は二進数1100です。

このように動物当てマジックとは、動物の番数(十進数)をわざと慣れていない二進数で表したマジックなのです。マジックらしくするために最初のイラストには動物の順番もカードにも数字がふってありません。二進数を応用したのが電子計算機、デジタルコンピューターです。この動物当てマジックはデジタルマジックといえます。

江戸時代のデジタルマジック「目付字(めつけじ)」

京都の吉田光由によって1627年に著された数学書が『塵劫記(じんこうき)』です。無量大数までの数の数え方、かけ算九九、わり算九九、そろばんの使い方から始まり金銭・体積・面積、連立方程式といった興味深い問題が目を引くイラストとともに紹介されています。

一家に一冊あったといわれるほどに普及した『塵劫記』は江戸時代最大のベストセラーとなりました。その中にデジタルマジックである目付字が様々なデザインで紹介されていきました。中でも有名なのが「椿の目付字」です。

数の単位である一、十、百、…、不(不可思議)、無(無量大数)の21の漢字が椿の花びらに描かれてあります。動物当てマジックと同じように、一つ選びその漢字が花びらにある5本の枝を答えます。

動物当てマジックは簡単にするために1枚のカードに描かれた動物の数は少ないです。椿の目付字では、4枚のカードを5本の枝に増やし、1本の枝にはわざと関係ない葉っぱにも漢字を描いて複雑に見えるようにしてあります。

5本の枝をよく見るとそれぞれに一、二、四、八、十六と書かれてあります。

デジタルマジック「椿の目付字」で遊んでみよう

漢字を1つ選んだなら、5本の枝のピンクの花びらに注目して(葉っぱは無視)どの枝にあるか調べます。例えば、二と四の枝にあるとすれば、二+四=6として6番目の漢字「億」が答えとわかります。

執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)

1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。「桜井進の魔法の算数教室」と「桜井進の数学浪漫紀行」を毎月開催。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
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