第42回:江戸時代もパズルはあったの? 裁ち合わせ!

江戸時代のパズル本

江戸時代にもパズルは流行っていました。ここで紹介するのは『勘者御伽双紙(かんじゃおとぎそうし)』(1743年)と『改算記(かいさんき)』(1659年)の2冊です。これらには様々なパズルが紹介されています。

その一つに「裁ち合わせ」があります。「裁つ」とは、紙や布などをある寸法に切るという意味です。特に、衣服に仕立てるために型に合わせて布地を切ることを意味しています。

問題1 縦横比2:1の長方形の紙を裁ち、正方形と直角二等辺三角形をつくれ

『勘者御伽双紙』の問題にチャレンジしてみましょう。縦横の長さの比が2:1の長方形を裁ち正方形と直角二等辺三角形にせよ、とあります。

 

実に多くの解答が紹介されています。簡単なのは次のように3つと4つに分割する方法です。

 

 

直角二等辺三角形にする方法には次が紹介されています。

 

問題2 十字の形をした紙を切って、正方形の形に並べ直しなさい。

次も正方形にする問題です。

数学者中根彦循

著者中根彦循(なかね げんじゅん、1701-1761)の父は数学者中根元圭(なかね げんけい、1662-1733)。父元圭の師は関孝和の高弟建部賢弘(1664-1739)です。

息子彦循も父と同じく建部賢弘に師事し、後に京都で数学をおしえました。著書『勘者御伽双紙』は古くから伝わる数学遊戯や中国数学、和算の面白い問題を集めたものです。

現在でも知られる小町算は元々田中由真著の『雑集求笑算法』に通小町九十九夜として最初の紹介があったものを彦循が『勘者御伽双紙』上巻の冒頭で小町算として引用しました。

問題3 32cm×50cmの長方形の紙を切って、正方形の形に並べ直しなさい。

1627年に吉田光由によって生みだされた数学書『塵劫記』は江戸時代の最大のベストセラー書籍となりました。1659年に山田正重(生没年不明)は『塵劫記』をはじめ『参両録(さんりょうろく)』(1653)、『因帰算歌(いんきさんか)』(1640)などの数学書の誤りを正した『改算記』を著しました。


ヒントは面積です。以下単位cmを省略して計算します。32×50=1600。これを正方形にした場合、1辺が40の正方形となることがわかります。

32×50 → 40×40

これらをじっくり眺めていると答えが見えてきます。32と40の最大公約数は8、50と40の最大公約数は10です。つまり、40×40の正方形は8×10の長方形を横に5つ、縦に4つの20個でつくられることがわかります。

したがって、横32cmを4等分した横8cm、縦50cmを5等分した縦10cmの長方形を、横5つ、縦4つに並べ直すと一辺40cmの正方形になります。

 

江戸時代の人々が考えて楽しんでいた数学パズルは現代でも十分に楽しめます。次回以降江戸時代のパスルを紹介していきます。

執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)

1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。「桜井進の魔法の算数教室」と「桜井進の数学浪漫紀行」を毎月開催。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
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