第11回 ドレミファソラシド謎解きの旅 その1 4月4日とピアノの謎解き

ピアノは楽器の王様

ピアノは身近にある楽器です。家庭や学校だけでなく、最近は街中でもピアノを見かけます。音を出すだけならピアノほど簡単な楽器はありません。鍵盤をたたくだけです。ドレミファソラシドも順に鍵盤をたたくだけ。バイオリンやトランペットではこうはいきません。

音域の広さ、多様な音色、音量の調整、同時にいつくもの音を出せる、独奏も合奏もできるといった特徴を持つピアノはまさしく楽器の王様です。

何の違和感もない自然なドレミファソラシドですが、できあがるまでには長い年月が必要でした。私たちは知っています。オクターブ違う2つの音は周波数が違っても同じ音に聞こえること、「ドとソ」「ドとミとソ」といった複数の音を同時に鳴らすときれいに聞こえること。ピアノにはたくさんの弦があって、調律師が音を調整していること。
ドレミファソラシドには何か秘密がありそうです。ドレミファソラシド謎解きの旅に出かけましょう!

4月4日は何の日?

音階「ドレミファソラシド」の謎解きをするのに必要になるキーワードが「周波数」です。音は空気の振動。これを「音波」といいます。実際にはこの空気の波を見ることはできません。そこで波を図示したのが次の図。山と谷を繰り返すのが波です。

波の違いを説明するのに用いられるのが「振幅」「周期」そして「周波数」です。「振幅」は音の大きさ、「周期」は山から山(谷から谷)にかかる時間のことを表します。そして1秒間にある波(山1つと谷1つのセット)の数が「周波数」です。周波数の単位はHz(ヘルツ)です。例えば、冷蔵庫のブーンといううなり声(低い音)は250Hz(ヘルツ)。ソプラノ歌手の歌声(高い音)は2000Hzという具合です。

音楽の世界では音の基準があった方が便利です。ドレミファソラシドはイタリア語、英語とドイツ語ではCDEFGABCです。1939年の第2回国際標準音会議で基準となるラ(A)は440Hzとすると決められました。1秒間に440コの波がある音波がラ(A)です。そこで4月4日は「ピアノ調律の日」となりました。

時報「ピッ、ピッ、ピッ、ピ〜ン」の「ピッ」が440Hzのラ(A)、「ピ〜ン」はその1オクターブ上の880Hzのラ(A)です。ピアノには弦の調節「調律」が必要です。調律師は440Hzのラ(A)を基準に調律を行います。4月は英語で「April(エイプリル)」だから、ちょうどAの音が440Hzは、4月4日にピッタリです。

グランドピアノは88鍵ある理由

なぜ現在のグランドピアノは88鍵なのでしょうか。人間の耳は約20Hzから20000Hzまでの範囲の音を聞き取ることができます。しかし、ドレミファソラシドとして聴き分けられるのは4000Hzまでです。そこで1番目の鍵盤のラ27.5Hzから88番目の鍵盤のド4186Hzとなっています。

グランドピアノが出す音の中に基準音440Hzのラと1オクターブ上の880Hzのラも含まれてています。左から1番目の鍵盤はラで27.5Hzこれが一番低い音で順にオクターブ上のラの音は次のようになります。13番目の鍵盤はラで55Hz、25番目の鍵盤はラで110Hz、37番目の鍵盤はラで220Hz、49番目の鍵盤はラで440Hz、61番目の鍵盤はラで880Hz、73番目の鍵盤はラで1760Hz、85番目の鍵盤はラで3520Hzです。

グランドピアノの曲線の謎解き

このように音が1オクターブ上がるとは周波数が2倍になることを意味します。逆に1オクターブ下がると周波数は2分の1になります。ピアノは弦を弾くことで音が鳴る楽器です。弦の長さを変えることで鳴る音の周波数を変えることができます。

弦の長さが短いほど周波数が大きい高い音がでます。弦の長さを長くすると周波数が小さい低い音がでます。弦の長さを2分の1にすれば周波数は2倍になり、弦の長さを2倍にすれば周波数は2分の1になります。つまり、弦の長さと周波数は反比例の関係にあります。

一番高い音(一番右の鍵盤)が88番目の鍵盤ド(ド8:8番目のド)4186Hzの弦の長さは5cmほどです。ここからはじめて、1オクターブ低くなるたびに弦の長さは2倍になるので、弦の長さが計算できます。

1オクターブ低い76番目の鍵盤ド(ド7)2093Hzの弦長さは10cm、以下64番目の鍵盤ド(ド6)1046.5Hzの弦長さは20cm、52番目の鍵盤ド(ド5)523Hzの弦長さは40cm、40番目の鍵盤ド(ド4)261.6Hzの弦長さは80cm、28番目の鍵盤ド(ド3)130.8Hzの弦長さは160cm、16番目の鍵盤ド(ド2)65.4Hzの弦長さは320cm、4番目の鍵盤ド(ド1)32.7Hzの弦長さは640cmになります。

この鍵盤と弦の長さの関係を図示してみます。ド8から1オクターブ下がるごとに弦の長さが2倍になる弦の先端をつないでみると曲線が現れます。別な図に描き直してみます。xの値をド8を0、ド7を1、ド6を2、ド5を3、ド4を4、ド3を5として弦の長さをy(cm)とすると、y=5×2xという関係式になります。

x=5の場合、y=5×25=5×32=160(cm)となります。2xのxを指数と呼ぶことからこのxとyの関係式は指数関数と呼ばれます(指数については、連載第8回どうして0乗は1になるの?前編参照)。指数関数のグラフが指数曲線です。グランドピアノにあるカーブはこの指数曲線に由来するということです。

実際のグランドピアノは大きさは一番長いところで3m以内に納まっています。ド2の320cmとド1の640cmは納まりません。弦を弾いて鳴る音の周波数を決めるのは「弦の長さ」以外に「張力」「線密度(単位長さ当たりの重さ)」があります。いま計算した弦の長さは、すべての弦の張力と線密度を同じものにした場合のものです。

一つの鍵盤は1〜3本の弦で引っ張られていて合計230本ほどの弦があります。1本の弦は70〜90kgの力(張力)で引っ張られています。張力を大きく(強く引っ張る)すると高い音がでるようになります。ド2とド1のところは張力と線密度を調整して弦の長さがピアノ本体に納まるようにしてあります。

ピアノ調律師は、チューニングハンマーと呼ばれる工具を用いて、弦が巻かれているチューニングピンを回すことで弦の張力を調整して音の高さを調節します。グランドピアノを見る機会があったら、ぜひ弦に注目してみてください。

周波数の説明ができたので、次回は2500年前古代ギリシャからドレミファソラシド謎解きの旅を始めていきます。

執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)

1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。「桜井進の魔法の算数教室」と「桜井進の数学浪漫紀行」を毎月開催。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
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