第26回:完全数って何? 6と28に共通すること!

天の6と地の28

「神は6日間で世界を創造した」というのが天地創造説。月が地球の周りを1周する公転周期が28日。天の6と地の28に共通することはさてなんでしょうか。

ヒントは約数。
6の約数は1、2、3、6。28の約数は1、2、4、7、14、28。
約数をたし算してみます。ただし、自分自身は除くとします。

6の約数の和:1+2+3=6
28の約数の和:1+2+4+7+14=28

この結果を見れば気づくことがあります。

6も28も自分自身を除いた約数の和に等しい。

さて、他にこのような数を見つけてようとすると簡単には見つけられません。6と28は特別な数のようです。今から2500年前の古代ギリシャ時代、このような数は完全数と名付けられました。

6は最小の完全数、28は2番目の完全数です。天地創造説の6と月の公転周期の28が完全数であることに特別な意味──6と28はそれぞれ地上と天界における神の完全性を表していると考えられていました。

さて、3番目の完全数はいくつでしょうか。約数を調べて、その和を計算すればいいのですが、一つ一つ調べるのは大変です。それでも古代ギリシャ時代には3番目の完全数496と4番目の完全数8128が発見されています。

5番目の完全数33550336が発見されるたのはなんと15世紀。古代ギリシャから約二千年後のこと。古代ギリシャ時代から15世紀までの二千年の間にわずか5つしか発見されていない! 完全数がいかに珍しく、発見が難しい数だということがわかります。

ユークリッドの発見 完全数と素数の関係

見つけるのが難しい数、完全数。それはまるで素数のようです。素数も約数とは大いに関係する数です。約数が1と自分自身の2つしかない自然数が素数です。

2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、…
素数

古代ギリシャ時代の数学者ユークリッドは完全数が素数と関係していることを発見しました。その素数は2のn乗から1をひいた形をした素数──メルセンヌ素数です。ユークリッドは完全数と素数の関係を発見しました。

メルセンヌ素数2n−1と2n-1との積は完全数である。
ユークリッドの発見

メルセンヌ素数があれば自動的に完全数もつくれるということです。
1番目のメルセンヌ素数はn=2のとき2²-1=3。2n-1=2¹=2なので、これらの積3×2=6が1番目の完全数。2番目のメルセンヌ素数はn=3のとき2³-1=7。2n-1=2²=4なので、7×4=28が2番目の完全数。3番目のメルセンヌ素数はn=5のとき2⁵-1=31。2n-1=2⁴=16なので、31×16=496が3番目の完全数。4番目のメルセンヌ素数はn=7のとき2⁷-1=127。2n-1=2⁶=64なので、127×64=8128が4番目の完全数。という具合です。

5番目の完全数の計算にチャレンジ

このようにメルセンヌ素数のnから完全数は計算できます。

メルセンヌ素数のn → 完全数 = (2n−1)×2n-1

5番目のメルセンヌ素数から5番目の完全数を計算してみましょう。5番目のメルセンヌ素数のnは13です。上の公式のnに13を代入すれば

(213-1)×213-1= ?

計算できましたか。答えは、33550336です。

5番目の完全数3355万0336の発見まで長い年月を要したのは素数の発見が難しかったからだとわかります。17世紀にはイタリアの数学者カタルディによって6番目(n=17)と7番目(n=19)のメルセンヌ素数が発見されたことにより6番目と7番目の完全数がわかりました。

完全数の謎解きは現在進行形 奇数の完全数はあるか?

18世紀にはスイスの数学者オイラーによって8番目のメルセンヌ素数が発見されました。n=31なので、(2³¹-1)×2³⁰=230垓5843京0081億3995万2128が完全数です。

2018年には51番目のメルセンヌ素数2⁸²⁵⁸⁹⁹³³-1(n=82589933)が発見されました。2486万2048桁になる巨大な数です。これに2n-1=2⁸²⁵⁸⁹⁹³²をかけたのが51番目の完全数です。その桁数はなんと4972万4095桁!

ユークリッドは、素数が無限にあることも証明しています。しかし、メルセンヌ素数が無限にあることはそれとは別で未だ証明されていません。つまり、完全数も無限にあることも未解決です。さらに、これまで見つかった完全数はすべて偶数です。奇数の完全数はなさそうです。しかしその証明も未解決です。

2500年前に始まった完全数を探し求める計算の旅は現在進行形でこの瞬間も続いています。次の完全数を手にするのは君かもしれない。

執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)

1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。「桜井進の魔法の算数教室」と「桜井進の数学浪漫紀行」を毎月開催。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
桜井進WebSite

スペシャルレポート(注目校を徹底研究レポート!)

子どもたちの可能性を引き出す!最先端の教育がわかるスペシャルレポート

スペシャルレポートをみる
中学受験スタディ(首都圏) 中学受験スタディ(関西)
高校受験スタディ(首都圏) 高校受験スタディ(関西)
スタディ公式SNSで最新情報をチェックしよう!