第25回:三平方の定理の証明?

三平方の定理とは

前回は、古代エジプトの縄張り師を紹介しました。そこに登場したのが三平方の定理でした。三平方の定理とは、直角三角形の3辺の長さの間に成り立つ関係です。

3²+4²=5²、5²+12²=13²、8²+15²=17²
が成り立つので、三角形の3辺の長さを(高さ、底辺、斜辺)と表せば、(3、4、5)、(5、12、13)、(8、15、17)はどれも直角三角形になります。

今から四千年前の古代エジプト時代、この三平方の定理が利用されていたことに驚かされます。

市松模様が三平方の定理、発見のきっかけ!?

正方形のマス目が敷き詰められたデザインといえば、身近にいろいろと見つかります。市松模様、床のタイル、学習ノートなどなど。正方形に対角線をかいて模様を考えます。小さい三角形は直角二等辺三角形です。

このタイル模様をながめていると、面積の関係があることに気づきます。

図の2番目の濃さの正方形は一番うすい直角二等辺三角形2個分です。そして、一番濃い大きな正方形は直角二等辺三角形4個分です。つまり、一番小さい直角二等辺三角形にくっついている3つの正方形の面積の関係が②+②=④ということです。


どんな直角二等辺三角形でもこの面積の関係が成り立つというのが三平方の定理です。

三平方の定理を証明したといわれるピタゴラス

市松模様の中に見つかる面積の関係や(高さ、底辺、斜辺)が(3、4、5)の三角形が直角三角形になる事実は四千年前には知られていたようです。

この面積の関係がどんな直角三角形でも成り立つことを証明したとされるのが2500年前の数学者ピタゴラスです。このことから三平方の定理はピタゴラスの定理とも呼ばれます。ちなみに日本では江戸時代に、鉤股弦の法(こうこげんのほう)と呼ばれていました。

見るだけでわかる三平方の定理の証明

ピタゴラス以来、現在までに三平方の定理は数百通りの異なる証明があります。記号・数式を使った証明は初心者にはハードルが高いので、見るだけでわかる証明を紹介します。

a²+b²=c²のa²は平方(2乗)の式なので、a²、b²、c²と3つの平方があるので「三平方」と呼ばれます。繰り返しになりますが、3つの平方a²、b²、c²は面積を表すことからa²+b²=c²とは面積の関係です。

直角三角形㋐の周りにつくられる3つの正方形を㋑㋒㋓とします。三平方の定理とは、
正方形㋓の面積=正方形㋑の面積+正方形㋒の面積
簡単に
㋓=㋑+㋒
と表されます。

これを図を使いながら証明してみます。
① 一番大きな正方形㋓の4辺に直角三角形㋐をくっつけると一回り大きな正方形ができあがる。
② 一回り大きな正方形の右下にある直角三角形㋐を左上に移動する。
③ 一回り大きな正方形の右上にある直角三角形㋐を左下に移動する。
④ 左下にできた直角三角形㋐を2つ合わせた長方形を右下に移動する。
⑤ 一回り大きな正方形の右上、左下にそれぞれ正方形㋑、㋒がぴったりおさまる。
⑥ 一回り大きな正方形から直角三角形㋐4つ分を取り除いた部分が正方形㋓であり、正方形㋑+㋒である。ゆえに、正方形㋓の面積は正方形㋑の面積と正方形㋒の面積の和に等しい。


説明を読む方が大変かもしれません。要は図を見ながら三角形と正方形の移動を順に追いかけるだけです。すると、最後に㋓=㋑+㋒が現れてきます。これで三平方の定理が証明されました。

執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)

1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。「桜井進の魔法の算数教室」と「桜井進の数学浪漫紀行」を毎月開催。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
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