第18回:関数電卓って何に使うの?

小学6年生で手にいれた関数電卓 SHARP EL-514

連載第13回で関数電卓を使って2の12分の1乗の計算を紹介しました。今回は関数電卓で三角比の計算にチャレンジしてみましょう。

冒頭の画像は私が持っている関数電卓の一部です。左から2番目の関数電卓が1979年、私が小学6年生で購入したものです。シャープEL-514にはピタゴラスと名付けられており数学の計算機であることがわかります。

あれから45年間、ずっと壊れずに現役で使い続けています。小学6年生の私は関数電卓のキーを叩くのが大好きでした。はじめて見る不思議な文字や記号にワクワクしたことを今でも覚えています。

取扱説明書はついてきましたが私はいっさい見ません。このキーはどんな計算をするのだろう、謎解きが面白かったのです。その関数電卓謎置き物語はいつか紹介したいと思います。

「tan」で高い木の高さを計算

今回とりあげるのは「tan」キーです。学校の校庭に一本の高い木があります。高くてメジャーを使ってその高さを測ることができません。でも高さを知りたい、こんなときにtanが大活躍します。

まず木から離れた立ち位置を決めます。木の根元から立ち位置までの直線距離をメジャーを使って測ります。その長さを底辺とします。15[m]とします。

次に地面から目までの距離(高さ)を測ります。1.7[m]とします。さらに木のてっぺんと目を結ぶ線と地面となす角(仰角)を測定します。ノートの上だけならば、角度の計測には分度器だけでOKです。これが学校の校庭となると分度器だけで角度を測るのは難しくなります。

即席クリノメーター(傾斜儀)をつくる

そんなときに役立つのがクリノメーター(傾斜儀)と呼ばれる角度を測るための道具があります。プラスチック製の分度器、ストロー、一本の紐と重りがあれば即席クリノメーターを作ることができます。

分度器の底辺にストローを取り付けます。分度器の原点部分にできれば穴を空けて紐をつけます。紐の先に重りを取り付ければ出来上がり。分度器を手に持ち、木のてっぺんにストローの先を向けます。

その時、目と木のてっぺんを結ぶ直線上にストローがあるように分度器の傾斜を調節して重りをつけた紐が示す角度を読みとります。そうすれば仰角がわかります。90度であれば地面と水平(仰角0度)です。60度であれば90度との差30度が仰角となります。

三角比tan(タンジェント)

これで求めた角度が25°だったとします。関数電卓の「tan」キーは三角比(三角関数)という数学です。直角三角形の直角以外の鋭角と底辺と高さの関係を表すのがtanです。

tan 鋭角=高さ/底辺

直角三角形の1つの鋭角が変わると、底辺と高さの比も変わります。この比を三角比と呼びます。三角定規で説明してみましょう。直角二等辺三角形の場合、2つの鋭角はどちらも45°です。底辺を1とすれば高さも1になるので、それらの比は1/1=1です。これが、tan45°=1の意味です。

関数電卓のDEGモード

では関数電卓でtanを計算してみましょう。まず角度の単位をDEGモードにします。もう一つRADモードがあり、この2つの角度の単位を切り替えるキーがあるのでそれでDEGモードにします。

関数電卓の上部表示部分に「DEG」とあればOKです。もし「RAD」と表示されている場合には切替キーにより「DEG」にします。

「tan」「4」「5」「)」(省略可)「=」

とキーを叩けば結果が1と表示されるはずです。

木の高さを計算する

準備が整ったところで木の高さを計算してみます。「tan 鋭角=高さ/底辺」の関係から「高さ=底辺×tan 鋭角」となります。したがって、図のように、高さx=底辺×tan 鋭角=15×tan 25°となります。

この最後の式を関数電卓で計算します。「1」「5」「tan」「2」「5」「=」とすれば、6.9946…と出力されます。約7[m]とわかりました。これに目線までの高さ1.7[m]を加えれば求める木の高さとなります。7+1.7=8.7[m]が答えです。

関数電卓の「sin」「cos」キーの謎解き問題

さて関数電卓の「tan」の隣には「sin」と「cos」というキーがあるはず。これも三角比です。2つの三角定規の直角三角形の3辺の長さから「sin」と「cos」はどの2辺の比なのかを探ってみてください。私が小学6年生の時に同じ謎解きをして遊んでいました。

関数電卓を使った問題です。「sin」または「cos」キーを使って計算結果が「π」になる計算を考えてみてください。次回はその答え合わせからはじめます。

執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)

1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。「桜井進の魔法の算数教室」と「桜井進の数学浪漫紀行」を毎月開催。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
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