第7回 どうしてカメラの絞りの値は5.6のような中途半端な数なの?

前回・前々回と√の計算が使われるところを7つ紹介しました。√のつづきとしてカメラの絞りの数値について紹介していきます。

シャッタースピードと絞り

デジカメの液晶パネルの表示をよく見てみるといくつもの数値があります。中でも1/60、1/125やF8、F5.6といった2つの数値が映りに大きく影響します。カメラはレンズを通して光をセンサーに取り込むことで映像を記録します。光の量を調節する仕組みに大きく2つあります。

1つがシャッタースピード。1/60という表示は1/60秒間だけシャッターを開けることを意味しています。被写体が高速で動く場合にはシャッタースピードを1/1000秒のように小さくすることできれいに撮影することができます。

もう1つが絞り。図のように絞りを調節することで光の量を調節します。F8、F5.6は絞り値のことで、この数値は大きくなるほど絞り穴の直径が小さくなり光の量も小さくなります。

シャッタースピードと絞りの1段階調節の意味

シャッタースピードと絞りは1段階の調節で光の量を2倍もしくは半分になることがポイントです。シャッタースピードはわかりやすいです。1/2、1/4、1/8、1/15、1/30、1/60、1/125、1/250の単位は秒なので、1段階だけ時間を小さくすれば(1/30秒から1/60秒)シャッターが開いている時間は半分になり光の量も半分になり、逆に1段階だけ時間を大きくすれば(1/30秒から1/15秒)シャッターが開いている時間は2倍になり光の量も2倍になります。

絞り値1.4は√2のこと

光の量を2倍(2分の1)の2と1.4で思いつくことと言えば√2=1.41421356…です。√2とは、√2×√2=2となる数のことでその値は1.41421356…です。

次のように絞り値は1からはじめて√2=1.4…をかけていったときの小数第1位までの数値となっています。

 

シャッタースピードの場合と同じく、絞り1段階の調節で光の量を2倍もしくは半分になります。

 

絞り値は絞り穴の大きさ(直径)に反比例する

絞り値は、絞り穴の大きさ(直径)に反比例の関係にあります。絞り値が2倍、3倍とすれば、絞り穴の大きさ(直径)は1/2倍、1/3倍になるということです。

そして、絞り穴の面積と光の量は比例の関係にあります。絞り穴の面積は絞り穴の半径の2乗に円周率πをかけた値になり、絞り穴の直径と半径は比例の関係にあることから、絞り穴の面積は、絞り穴の直径の2乗に比例します。絞り穴の直径が2倍になると、その半径も2倍になり絞り穴の面積は2の2乗で4倍になります。

絞りを1段階上げるつまり絞り値を√2倍すると、絞り穴の直径は反比例するので1/√2倍になります。すると、絞り穴の面積は、絞り穴の直径の2乗に比例するので1/√2×1/√2=1/2倍になります。つまり、光の量も1/2倍になります。

 

ぜひご自身のデジカメの絞り値を見て、1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16、22という数値が順に√2=約1.4倍になっていることを確認してみましょう。絞りの意味がより一段とわかると思います。

執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)

1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。「桜井進の魔法の算数教室」と「桜井進の数学浪漫紀行」を毎月開催。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
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