海外大進学という選択肢を当たり前にしたく、この連載に取り組んでいる藤原遥人です。前回の記事はこちらからご覧ください。僕は日本で生まれ育ち、海外大受験を意識していたものの結局日本の大学に進学しました。大学進学後、憧れの米英大を一度自分の目で見てみたく、全て自分で計画して自費で米英に渡航し、在校生の知り合いの力も借りながら20校以上見学しに行きました。今回からは、そんな非帰国子女純ジャパの僕から見た海外トップ大の実態を書いていきます。今回はアメリカ西海岸前編です。
2023年9月11日から18日まで、サンノゼ→サンフランシスコ→ロサンゼルスに行き、下記の6校を見学してきました。今日はその内3校Stanford, San Francisco, UC Berkeleyの見聞録を紹介します。
・San Francisco State University
・UC Berkeley (University of California, Berkeley)
・UCLA (University of California, Los Angeles)
・Pomona College
・USC (University of Southern California)
Stanford University
言わずと知れた西海岸最強の大学。僕が訪れた間は休校期間中だったので元々行く予定はなかったのですが、たまたま電車で30分のところに泊まっていたので、見るだけ見てみようと、早起きして行きました。キャンパスのサイズが半端なくて、杉並区と同じくらいの面積だそうです。パロアルトという駅が最寄り駅で、そこから歩いて5分とマップには書いてあったのですが、それは車で入る最初の門までが5分なだけで、実際にキャンパスにちゃんと入るまでは30分くらい歩きました。10kgのバックパックを背負ってこの日は熱もあったので、広いキャンパスは最悪でした。歩いていく所ではなかったです。
キャンパス内には学生寮だけでなく教授の寮もあって、無料バスが走り回っているのでそれに乗って移動するか、みんな自転車かスケボーで移動します。緑多い真夏のカリフォルニアのキャンパスをスケボーで走るスタンフォード生がカッコ良すぎて、帰国後すぐスケボー買いました(笑)
結局この日建物の中に入ることはできなかったのですが、アメリカ有数の巨大キャンパスと西海岸特有の太陽に照らされた眩しさが想像通りの「アメリカのキャンパスライフ」を体現してて、初っ端から圧倒されました。
世界屈指のテック企業が集まるシリコンバレーの近くにあるので、エンジニアやデータアナリストなどコンピューターに強い学生のインターンシップの機会が沢山あるそうです。アメリカの物価は今の円安(1ドル=150円台)を考えると日本の3倍くらいあるので、給料も当然高くて、大企業のインターン生だと、週3程度の勤務で月収60万円ほどは当たり前に稼げるそうです。
Stanford大学のイメージとして、勉強をガツガツやって学術的な議論をするというより、技術や能力を身につけて社会との関わりを持って実装化していく感覚があります。そのためビジネスやエンジニアリングに興味がある人には大人気で、シリコンバレーの近く(車で10分の位置にGoogleの本社がある)という立地も生かして産学連携が沢山取られています。
折角なのでGoogleの本社にも突撃してみました。車は借りていなかったので電車とバスで約1時間かかって到着です。車社会のアメリカでは、電車は車を買えない貧しい人の交通手段で、黒人や身だしなみの整っていない人、車椅子などハンディキャップを負った人、移民家族などが多かった印象です。
Googleに着いたのはお昼頃だったので社員がテラスで食堂のランチを食べている時間で、どうやってGoogleに入社したのか5人くらいにインタビューしてみました。
イリノイ州出身でイリノイ大学でコンピューターサイエンス(CS)の学位を取ってインターンに応募し、その働きぶりが認められて入社した男性。中国で生まれ育ち中国の大学を卒業後ニューヨーク大学の大学院に進学してCSを選考し、Googleで働いていた知り合いの紹介で入社した女性。イタリア出身で、MBAからアメリカに進み、紹介で入社してアメリカの永住権を取ったおじさんなどがいました。
総じて言えるのは、最終学歴(大学or大学院)をアメリカで取得していることと、CSなどコンピュータに強い理系学部かMBAを取っていることが大前提のようでした。その上で紹介での就職が多く、Stanfordなどシリコンバレーの近くの大学だと企業と学生の交流イベントも多く存在して人脈を広げやすいとのこともあり、就職しやすいらしいです。日本以上に学歴が大事だという雰囲気を感じました。
San Francisco State University
大学ランキングはさほど高くなく、平均レベルの州立大学です。新学期の時期に行ったので、色んなサークルや学生団体がキャンパス内の道に机を広げて新入生に勧誘をしていました。僕も新入生のていで勧誘を受けて話を聞きました。活気があってすごく楽しかったです。キャンパス自体は小さくて、道路に面していてショッピングモールの隣にあり、キャンパス内は基本徒歩で歩き、通学も出てすぐにある路面電車で通う人も多かったです。人数もあまり多くない分、授業の人数もコンパクトで先生と生徒の距離が近い印象を受けました。
僕がたまたま建物の廊下を歩いていたら、僕のことを日本人だと判別したらしい日系アメリカ人の教授が話しかけてきてくれて、5分後に始まるAsian American Studiesの授業においでよと誘ってくれました。教授1人、補助の先生2人、生徒6人くらいの規模感で、大きい机をみんなで囲んで自己紹介をし合い、新学期だったので今後の授業の流れを説明されました。生徒同士の距離を縮めるために、できる楽器を演奏する時間になり、僕はピアノで丸の内サディスティックを弾きました。授業がAsian American Studiesということもあって、アジアに興味のある学生やアジア系のバックグラウンドを持つ学生が多かったので、丸の内サディスティックを知ってる人も何人かいて嬉しかったし、教授はサックスで乗ってくれました。
キャンパスを歩いててかなりびっくりしたのは、建物内の廊下に無料配布用の避妊具が入った箱が設置されていたことです。性問題を公に語ることが日本よりも受け入れられているアメリカの特徴が現れていました。
UC Berkeley
カリフォルニア大学バークレー校です。全部で9個あるキャンパスの中でここが一番最初にできたキャンパスらしく、始祖としてのプライドを持っていました。在校生は大学のことをCal(Californiaの略)と呼ぶらしく、自分たちがカリフォルニア大学だと主張しているようでした。
キャンパスはStanfordのような緑豊かなドデカいキャンパスというより、サンフランシスコの外れの街の中にある洒落たキャンパスで、気候は暑すぎず寒すぎずという感じです。僕は大学の雰囲気が大好きでした。街の治安は悪いらしいです。交通の便も良く、BARTという鉄道で通えるのが魅力的でした。
慶応義塾大学から交換留学か何かで1年だけUCBに留学している先輩に案内してもらいました。その先輩はアメリカ国籍ではない留学生だけが住むInternational Houseという寮に住んでいて、慶応時代からやっているアイスホッケーをUCBでも続けているとのことでした。アメリカ4大スポーツのアイスホッケーを本場でやっているのは本当にかっこいいと思いました。International Houseに住まない場合は、友達3人で近くの家を借りてシェアハウスする、みたいな住み方が多いそうです。
UCBはノーベル賞受賞者輩出数が、ハーバード大学とケンブリッジ大学に続く世界の大学で3位で、特に理系研究やアカデミック全体としての強さは全米有数のレベルの高さがあります。孫正義さんもUCBの経済学部を卒業しています。またHAASというビジネススクールも有名で、MBAを取りに社会人が留学に来るパターンも多いですし、HAASは学部生の内から応募してビジネスを学べる、大学としては珍しい機関で、UCBの中でも人気だそうです。
UCBではUrban Studiesという都市計画の専攻に興味があったので、その学部の建物に行って学生のていで授業に進入してきました。普通の授業という感じではなく、Urban Studiesの分野の有識者を呼んで特別授業をしてくれるという内容でした。他にも色んな学部の授業に侵入してみましたが、基本一方的に教授の話を聞いてメモ取って、たまに当てられたり生徒が質問するという形で、日本の授業形態と似ているなと感じました。よく日本は一方通行、海外は双方向と比較されがちですが、海外大も特に数百人規模の大人数の授業は日本と同じ感じで、聞くだけという感じでした。みんなの前で自信を持って手をあげて質問したり、それに対して別の生徒がこうじゃないかって意見を回答したり、やる気のある生徒の気概はかなり感じました。また、日本の大学と違うところは20人程度の少人数の補修クラスのようなものがあって、そこではディスカッションや質疑応答などを沢山含むアクティブラーニングが行われているそうです。
次回は西海岸後編、UCLA、Pomona College、USCの見聞録を書いていきます。お楽しみに!
著者紹介
藤原 遥人(ふじわら はると)
開成高校在学時代、学校で教えないことを高校生が中学生に教え、勉強の面白さを伝える塾、寺子屋ISHIZUEを創業。現在東京大学文科一類を休学中。東大では、ハーバード大学とアジアのトップ大学の国際交流を図る学生団体HCAPに所属。休学中はアメリカ横断やヨーロッパ一周一人旅など海外への視野も広げている。