藤原遥人の海外大放浪紀[第4回]米大学見聞録(西海岸後編) -UCLA, Pomona College, USC-

海外大進学という選択肢を当たり前にしたく、この連載に取り組んでいる藤原遥人です。前回の記事はこちらからご覧ください。僕は日本で生まれ育ち、海外大受験を意識していたものの結局日本の大学に進学しました。大学進学後、憧れの米英大を一度自分の目で見てみたく、全て自分で計画して自費で米英に渡航し、在校生の知り合いの力も借りながら20校以上見学しに行きました。この連載では、そんな非帰国子女純ジャパの僕から見た海外トップ大の実態を書いていきます。今回はアメリカ西海岸後編です。

2023年9月11日から18日まで、サンノゼ→サンフランシスコ→ロサンゼルスに行き、6校見学してきました。今日はその内後半3校、UCLA (University of California, Los Angeles),Pomona College,USC (University of Southern California)の見聞録を紹介します。

・Stanford University
・San Francisco State University
・UC Berkeley (University of California, Berkeley)
・UCLA (University of California, Los Angeles)
・Pomona College
・USC (University of Southern California)

UCLA

UCLAはくまがアイコンで、くまの銅像や旗がキャンパス中にありました。Bruinはくま君のことだそうです。

学業的に優秀でありながらスポーツの名門校でもあるUCLA。バスケやアメフトが全米屈指に強く、広大なキャンパスに各スポーツのコートが沢山あって、大坂なおみがテニスの練習をしにきたこともあるそう。オリンピックメダリストは200人以上いるみたいです。そしてLAという立地もあいまって、10個ほどあるカリフォルニア大学の中で一番のパーティースクール。まだ暑い9月に行ったので、生徒が水着で芝生の坂にダイビングして滑り落ちる遊びをしていたり、確かに陽キャ大学感は出ていました。

UCLAのレベル感は、日本でいう早慶や地方国立レベルだと思いました。全国の高校の学年一位達がその大学に集まるというより、基本はカリフォルニア州の高校出身の上位10-30%が合格して通うイメージです。

僕は映画専攻に興味があったので、アメリカの5大フィルムスクールの一つであるこのUCLAのfilmmakingの建物に行くのはとても楽しみにしていました。時期的に授業はまだやっていなかったので、近くにいるfilmmakingの学生らしき人何人かにランダムに声をかけて実態を教えてもらいました。ハリウッドが近いのでハリウッド映画の第一線で働いている人が講義をしに来てくれることもよくあるらしく、就職のほとんどがコネで決まる映画業界で働こうとする学生にとっては授業の時間もコネ作りの時間だそうです。ただ、多くの生徒が近くのハリウッドでアシスタントとして働きながら授業を受けるため自主映画はあまり作らず、誰かが自主映画を作ろうと声をかけてもあまり人が集まらないんだとか。

また、UCLAでは知り合い伝手に、化学と物理の博士課程にいる日本人の方2人を紹介してもらい、敷地内にあるバーみたいな場所でお話しさせてもらいました。学部(大学)→大学院→博士課程(phD)とある中で最終地点にいる、学問の化け物みたいな二人の話の見えている世界に気圧されました。アメリカのphDでは、大学ごとに受けるというより自分がしたい研究分野の教授がいるところに受けにいくイメージで、大学が研究員として生徒を雇うので、学費がかからないどころかお給料をもらえます。日本から海外のphDに進む人向けに船井財団やJASSOなどの奨学金もあり、それを貰えるとアメリカの大学側が日本からの留学生に払わなくてはならないお金が減るので、phDへの合格率もぐんと高まるそうです。

大学院生は学部生へのチューターとしてバイト程度のお金を貰えることもありますが、基本学部生と同じで授業料は払わなくてはなりません。一方でphDだとむしろ大学からお金が貰えます。大学からしたら、学部生と大学院生はお客さんで、phDにお金を払ったり研究費用を稼ぐために授業をしてあげてるようなものらしいです。アメリカトップの大学にようやく入れたとしても、まだ学問の真髄には触れられず、お客さんとして授業を受けるだけなんですね。ただ、国際機関や多国籍企業の専門職に就くにはその分野のphD取得がマスト条件であることはよくあるので、phDを出ていないならあなたがやってることは勉強ごっこにすぎないんだよ、という認識が各業界のトップにはあるのだと思います。

UCLAやUC Berkeleyは、2年生のコミュニティカレッジ(コミカレ)を卒業して3年次から編入する日本人も多く、高校から直接進学する以外の米大進学の身近な選択肢です。カリフォルニア州にある、語学学校以上大学未満の短大のようなコミカレに2年間通い、オールAを取って良いエッセイを書くとUCLAなどレベルの高い大学に編入できます。トップオブトップはStanfordなどに編入できることもありますが、滅多にありません。コミカレオレンジコースト大学、サンタモニカ大学、ディアブロバレー大学は日本人も多いそうです。コミカレはそもそも、編入目的で進学する人も多いので、編入前提でどんな履修を組んで単位を取ればいいか相談に乗ってくれる担当員がいて、ちゃんと計画立てて努力すれば、高3から4年制大学に直接入るより楽にいけます。コミカレ自体はお金を払えば誰でも入れます。

Pomona College

僕の中高の仲良かった友達が進学した大学に遊びにいきました。元々は一日だけ寄ろうと思っていたのですが、場所を見ずに予約した宿がロスの中心街から3時間も離れているところだったので、お願いして友達の寮のロビーのソファで寝かせてもらいました。

Pomona Collegeはリベラルアーツカレッジ(リベカレ)と呼ばれる大学の種類に属します。リベカレとは研究よりも教育に力を入れており、学生数も数百人程度に少なく絞って先生一人に対する学生の数を少なくし、一人一人の人間的成長に注力する大学のことを言います。基本的に自然の多い郊外にあって寮制なので勉強だけに集中しやすく、一般教養を広く浅く学んで学生同士が参加型の授業で沢山議論を交わし、学問の高みを目指すというより自分の生活を豊かにすることを目的としています。そのため総合大学では2年生まで教養科目を学んで3年生から専攻を決める通常の大学と違い、4年間教養科目を学び続けます。あた大学院がありません。

リベカレと総合大学の違いは、まずは大学院があるかどうか。リベカレは必ず、UniversityではなくCollegeです。CollegeとUniversityの違いは、Collegeは大学の学部4年間のことで、Universityは学部と大学院を合わせた呼び名だという点です。Stanfordは大学院まであるのでStanford Universityです。代表的なリベカレは他にもAmherst CollegeやWellesley Collegeなどがあります(両方ともマサチューセッツ州)。

Pomona Collegeと同じ敷地内に他4つのリベカレが隣接しており、受ける授業もごちゃ混ぜだったり、いくつかある食堂も好きな場所を使えたりと、5つのCollegeで大きな一つのCollegeのような感覚でした。他の4つの中には女子大があったり、ガリ勉が多い大学があったり、それぞれ特色があるそうです。

僕が到着した日にはPomona College対他のCollegeの対抗アメフト試合が開かれていて、人生初のアメフト観戦に興奮しました。生徒も沢山見に来てたけど、一番声出して応援したり「何やってんだよ!」「ファールだろ!」と罵声を飛ばしていたのは選手の親たちでした。親たちが一番盛り上がっていました。そしてこのアメリカ人のアメフト選手たちがまじでかっこいい!平均190cmくらいありそうな巨体にごつい体でヘルメットを外したらロン毛。これは男として負けたと思いました。

結果はPomona Collegeが勝って、金曜夜だったので試合後のFootball Partyが学校の敷地内の上級生の寮で開かれていました。

Football Partyは寮の外でデッカい音楽を流しながらお酒を飲んで踊るクラブみたいな状態でした。アメフトの試合を見に行った女子たちが試合後の選手たちの元に集まって踊るカオスな夜。平日は勉強で忙しく、日曜からまた次の日に向けて勉強を始める彼らの唯一の楽しみで、金土で弾け切らないとストレスが溜まってしまうので、学校側も見逃している雰囲気でした。

少人数で寮制の大学なので、毎日同じ寮のロビーで寝るまで喋ったりビリヤードをしたりして、深い交友関係が見られました。こうやって色んな国から来た留学生同士でお互いの国の文化の違いとか哲学的なこととか、雑多なテーマを夜遅くまで議論して学びを深めるのがリベカレあるあるだそう。正直めちゃくちゃ楽しそうでした。

USC

USCは当初の予定にはなかったのですが、ロスで半日余ったので、映画専攻の有名な大学で調べてそのまま行って見ることにしました。『スターウォーズ』のジョージルーカス監督に『バックトゥーザヒューチャー』のロバートゼメキス監督、人類初の月面着陸のアームストロング船長が卒業しています。安倍さんも一時期在籍していたそうです。

filmmakingの建物に入ってみると、シンプソンズの銅像や昔の映画のポスターがずらっと並んでいて、ここから作品が生まれているんだという実感が生まれました。

USCの映画学部の正門。Hollywood walk of fameの星が床にありました。

大学院生にインタビューしてみると、USCには映画専攻の学部上がりの人ばかりではなく、他の業界で働いていて未経験で映画業界に入ってくる学生も多いらしく、意外な門戸の広さに驚きました。恐らく、他の業界にいて人生の経験値をあげている人だからこそ書ける物語もあるということなんだろうなと思いました。

サンタモニカに近い立地で、真夏の太陽の中芝生の多いキャンパスをスケボーで走ったり、木陰で本を読んでいる人がいたり、スポーツも強い大学なのでコートでアメフトの練習をしている生徒がいたり、これぞアメリカのキャンパスライフと言わんばかりのかっこよさがありました。

ちなみにUSCはUniversity of Southern Californiaの略ですが、学費が高く金持ちの坊やしか入れないという揶揄から、University of Spoiled Childrenと呼ばれています(甘やかされた子供たちの大学)。

 

次回は東海岸前編、Harvard University, MITを始めとしたボストンやニューヨークの見聞録を書いていきます。お楽しみに!

著者紹介

藤原 遥人(ふじわら はると)

開成高校在学時代、学校で教えないことを高校生が中学生に教え、勉強の面白さを伝える塾、寺子屋ISHIZUEを創業。現在東京大学文科一類を休学中。東大では、ハーバード大学とアジアのトップ大学の国際交流を図る学生団体HCAPに所属。休学中はアメリカ横断やヨーロッパ一周一人旅など海外への視野も広げている。



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