注目キーワード
  1. 文化祭
  2. 部活
  3. 先輩ママ

藤原遥人の海外大放浪紀 第1回:米英大の入試方式と必要な英語力

当サイト4つ目の連載をさせていただく藤原遥人です。これまでの連載はこちらからご覧ください。僕は高校時代海外大進学を目指していました。結局東大に進学したのですが、目指していた米英大を自分で見てみたく、夏休みや休学期間を使って見学に行きました。大学1年の夏休みにアメリカ5都市を巡り、冬には東大のプログラムでハーバード大学に1週間滞在し、そのままヨーロッパ周遊一人旅に出てイギリスの大学も巡りました。各大学に高校時代の友達も多いので、寮に泊めさせてもらったり授業に忍び込んでみたり、現地の学生と食堂でご飯を食べたりパーティーに参加したりと、そこでの生活もある程度経験することができました。

海外大進学者は年々増え続けています。海外大に進んだ先輩達のお陰でノウハウも溜まり、ネットで簡単に情報が得られるようになりました。また日本にはフルカバーの奨学金(年間約1000万×4年間)を貰える財団が複数あり、それが少ないほどんどの国に比べて海外大進学が「金持ち」の選択肢だけではなくなっています。

この連載を通して、海外大進学を一つの選択肢として当たり前に考える家庭を増やしたいです。ずっと国内で育ってきた子がほとんどの日本では、大学に進学するときに無意識に日本の大学しか選択肢に入れません。学校の先生も海外大のことに詳しくないので情報を得られず、国内の大学の中で私立か国立か、文系か理系かということばかりが進路選択での話題に上がります。家庭内でも、とりあえず「良い大学」に行って欲しいと言う親御さんが多いですが、その中には海外の大学は含まれていません。

海外大に行くメリットは英語力がつくだけでなく、学びたい学問が決まっていなければまずは色んな学問に浅く広く触れながらやりたいことを見つけたり、文系理系両方学びたければダブルメジャーができたり、留学生が大多数の学校に行って色んな文化や宗教のバックグラウンドを持つ友達ができたり、世界で活躍する大学の卒業生の先輩とのコネクションができたりと、学問的にも経験的にもキャリア的にも、日本の大学では得られないことが沢山あります。

僕自身、中1の夏にアメリカのフロリダに家族旅行に行ってから海外への憧れが人一倍あり、高校入学時から海外大進学を意識して情報収集や英語の勉強に奔走していました。ただ学校の勉強がどうしてもやる気がでず、海外トップ大に進学する上ではほぼオール5が最低条件なのですが、成績が全く振るわず大学での海外進学は諦めて、大学生になってから再入学か院進学で海外に行くことにしました。東大に進学したものの海外に行けなかったことが悔しくて、諦めきれず、まずは現地に行って雰囲気を肌で感じたいと、自分で計画して在校生の友達の助けも借りながら20校以上の米英大学を見学しにいきました。

既に沢山の海外大に関する情報がネットに転がっていますが、この連載では、海外大についての情報をほとんど知らない読者に向けて、客観的な情報も勿論入れつつ、非帰国子女で純ジャパの僕から見た米英大の雰囲気について、僕の独断と偏見で語っていこうと思います。実際にその大学に通っているわけではないので感覚のずれはあるかもしれませんが、沢山の大学を浅く広く触れた分、比較して特徴や印象を書けるのは僕の経験こそのものだと思います。

この連載を機に、是非海外大情報をgoogleやYouTubeや本でリサーチして、選択肢の一つにしていただきたいです。特に、米英トップ大学に焦点を当てて話していきます。
連載第1回の今回は、まずは基本的な海外大情報についてまとめたいと思います。

入試方式

そもそも求める人材がアメリカとイギリスでは全く異なります。平たく言うと、アメリカは多様性のある学校作りをするために色々なバックグラウンドを持つ生徒を、ギリスは学問的レベルの高い生徒を集めたいのです。というのも、多くのアメリカの大学は4年制で、1.2年生でリベラルアーツ教育(文系理系を横断的に色々な学問を広く浅く学ぶ)を受けた後、3年生になる時点では専攻を1つか2つに絞り、3.4年生で狭く深く学びます。イギリスの大学は3年制で、1年生の時点から専攻を決めてガッツリ一つの学問を集中して学びます。

入試方式はそもそも日本と全く違って一回ポッキリの入学試験はありません。高校3年間の成績の高さとTOEFLやIELTSといった留学生向けの英語テストでの点数の高さが最低限の要件として求められた後、アメリカでは学生の人生観を問うエッセイが、イギリスでは学問の習熟度を問うペーパーテストの点数や教授との面接での受け答えが重視されます。

例えばアメリカのトップ大、ハーバード大学に進学したい日本の高校生は、高校3年間の成績で全科目オール5を取り続け、TOEFL又はIELTS等の英語テストで9割以上の点数を取ることでまず受験生としてのスタート地点に立ちます。SATと呼ばれる日本の共通テストのような現代文と数学のテストは以前は必須でしたが、最近は受けても受けなくてもいいという大学がほとんどです。そしてハーバード側から出される質問に対しての自分なりの答えを書くエッセイをいくつかと、高校の先生3人から貰う推薦状と、課外活動での実績があればそれを提出して、またハーバード大学の卒業生と面接をしてさらに人柄を深ぼった上で、学生の能力や人柄を総合的に判断した結果合否が決まります。入試の時点で自分がやりたい専攻は決めないので、学部によって入試が違うことはありません。

言ってしまえば、偏差値の低い高校でも学校の成績さえ取れていて英語の勉強もしていればスタートラインに立て、むしろ都内超進学校の生徒よりも楽に成績がとれるので、門戸は意外と広いのです。また当日試験で合格最低点より1点でも下だと落とされる日本の入試に比べて、数値で表せない「人柄」で学生を選ぶので、東大に受かるほど賢くなくてもハーバード大学には合格できますし、入試の採点官に気に入られれば受かるという点で運要素もかなり強いです。この入試方式の結果、自分の個性や価値観を持って自分の言葉で文章を書ける学生が受かり、大学の授業でのディスカッションや放課後のクラブ活動を通して学生同士の交流で様々な価値観に触れられて、人間的に成長できることを大学側は狙っているのだと思います。一方で学力的には高い生徒も低い生徒もいるので、幼少期からパソコンに触れていてプログラミングが世界レベルでできる学生もいれば、日本の高校で習う微分積分も分からないまま入学する学生もいます。ただ、そこも含めて入試採点官は生徒のポテンシャルを判断するので、合格している生徒は4年間の教育の結果自分で努力して学力を上げることができると判断されています。

次にイギリスのトップ大、オクスフォード大学やケンブリッジ大学に進学したい日本の高校生も、同様に高校3年間の成績で全科目オール5を取り続け、TOEFL又はIELTS等の英語テストで9割以上の点数を取ることでまず受験生としてのスタート地点に立ちます。そしてここからがアメリカとは違います。入試の時点で自分のやりたい専攻を決めて、それに関連したペーパーテストを受けて高得点を取ります。例えば経済学部志望なら経済と数学のテスト、物理学部志望なら物理と数学と化学のテスト、と言った要領です。レベル感は日本の共通テストのようなもので、内容はその分野の大学レベルに片足突っ込むくらいです。加えて自分が学びたい分野の教授との学問的な面接を受け、その評価をもって合否が決まります。例えば経済学部志望なら、現代世界で起きている世界情勢をこの経済理論に則って考えることができるかとか、人のために経済学を学びたいという学生がいたら、世界恐慌は経済学者のせいで起きてしまったがそれでも経済が人のためになると言うのかとか、その学問の本質を理解しているかを問う質問が出されます。この入試の結果、世界最高レベルでその学問について学び、研究をする機会を整えて、学問全体を発展させていくことを大学側は狙っているのだと思います。

学びたいことが既に決まっていて、世界最高峰の授業についていく気概と学力のある意識の高い学生が受かる印象があります。日本の大学入試は3つや5つの科目を広く浅く理解して、点数を取れる能力のある学生が受かる一方で、イギリスの大学入試は一点特化型で狭く深く理解して、構造的理解と本質的な議論ができるレベルまで勉強をした学生が受かるように思います。特にオクスフォード大学やケンブリッジ大学はなかなか賢い学生でないと受からないと思います。

必要な英語力

合格するための英語力と、大学に入ってからやっていくための英語力の2段階があると思っています。前者はTOEFLやIELTSで9割を取るための勉強をしていればそこまで問題にはなりません。アメリカの共通テストであるSATの現代文で高得点を取れるレベルの単語力や文書力があれば全く問題ありません。もちろん多大な努力が必要ですが、国内の大学に受かるための受験勉強の代わりにすると思えば大丈夫です。

大学に入ってからやっていくための英語力はもう一歩大変です。そもそも日本から海外トップ大に進学した人の9割は帰国子女かインターナショナルスクール出身かハーフかのいずれかです。僕らのような非帰国子女で純ジャパの人間は、ネイティブレベルに英語ができる必要はありませんが、できれば帰国子女レベル、最低でも日本の高校ではトップレベルに英語ができるレベルは持っていたいです。ただ、普段から英語で本やニュースを読んで、英語のドラマやYouTubeを見ていれば2.3年間でそのレベルに持っていくのは決して不可能ではありません。そのレベルの英語力に達すると授業について行ったり宿題をする上ではほとんど問題なくなります。ところがスラングだらけでスピードも速いアメリカ人イギリス人同士の会話の中に入って行くのは至難の業です。聞くのはついていけてもその中で会話に入って行ったり面白いことを言おうとすると難易度は相当高くなります。ずっと日本で住んで海外大に進んだ友達たちも、ここが一番しんどいと言っていました。海外大に合格するだけの英語力をつけても、今度はその大学で友達を作るための英語力をつけなくてはいけないという、純日本人にとって厳しい環境が待っています。僕も色んな大学に行って現地の学生と話していても、真面目な会話や浅い日常会話は問題なくできても、一歩仲を深めるための友達同士の会話は全く通用しなくて悔しい思いをしました。言いたいことはあるのに言えなくてイマイチ仲良くなれない辛さは、日本では味わったことのない歯痒さでした。

次回は、必要な準備とお金の問題について書く予定です。お楽しみに!

著者紹介

藤原 遥人(ふじわら はると)

開成高校在学時代、学校で教えないことを高校生が中学生に教え、勉強の面白さを伝える塾、寺子屋ISHIZUEを創業。現在東京大学文科一類を休学中。東大では、ハーバード大学とアジアのトップ大学の国際交流を図る学生団体HCAPに所属。休学中はアメリカ横断やヨーロッパ一周一人旅など海外への視野も広げている。

スペシャルレポート(注目校を徹底研究レポート!)

スペシャルレポート
スペシャルレポート
スペシャルレポート
中学受験スタディ(首都圏) 中学受験スタディ(関西)
高校受験スタディ(首都圏) 高校受験スタディ(関西)
スタディ公式SNSで最新情報をチェックしよう!