藤原遥人の海外大放浪紀 第2回:準備内容とお金の問題

海外大進学という選択肢を当たり前にしたく、今連載をさせていただく藤原遥人です。今記事は第1回の記事のダイレクトな続きとなっているので、まだ読んでいない方は、こちらからご覧ください。

僕は高校時代海外大進学を目指していました。結局東大に進学したのですが、目指していた米英大を自分で見てみたく、夏休みや休学期間を使って見学に行きました。大学1年の夏休みにアメリカ5都市を巡り、冬には東大のプログラムでハーバード大学に1週間滞在し、そのままヨーロッパ周遊一人旅に出てイギリスの大学も巡りました。各大学に高校時代の友達も多いので、寮に泊めさせてもらったり授業に忍び込んでみたり、現地の学生と食堂でご飯を食べたりパーティーに参加したりと、そこでの生活もある程度経験することができました。

この連載では、海外大についての情報をほとんど知らない読者に向けて、客観的な情報も勿論入れつつ、非帰国子女で純ジャパの僕から見た米英大の雰囲気について、僕の独断と偏見で語っていこうと思います。実際にその大学に通っているわけではないので感覚のずれはあるかもしれませんが、沢山の大学を浅く広く触れた分、比較して特徴や印象を書けるのは僕の経験こそのものだと思います。
この連載を機に、是非海外大情報をgoogleやyoutubeや本でリサーチして、選択肢の一つにしていただきたいです。特に、米英トップ大学に焦点を当てて話していきます。

連載第2回の今回は、前回に引き続きまずは基本的な海外大情報についてまとめたいと思います。

準備の期間と内容

高校時代にやることは、学校の成績と英語力向上、課外活動にエッセイです。学校の成績は高1から高3まで全科目オール5が望ましいですが、高1の成績が低くても高2高3と成績が伸びていることを示せれば大丈夫です。レベルの高い高校にいるせいで成績が取りにくいから、通信制の高校やレベルの落とした高校に転校するというのもありですし、たまに聞きます。

英語はTOEFLやIELTSといった英語を母国語としない外国人向けのテストを受けます。何度も受けられて一番良い点数が取れた時のスコアを提出すれば良いのですが、一回受験するのに3万円近くするので、高校3年間をかけて3回以内に9割近く取れると良いと思います。大体高2で1回、高3で2回受けて少しずつ点数が上がっていく子が多いです。4技能全てを使うテストなので、帰国子女ではない人は普段から英語のドラマやYouTubeをみたりオンライン英会話をしたり、ネットで外国人の友達を作って電話をしたり、普段から頭を英語に浸す習慣が必要だと思います。

課外活動は何かしらやった方が良いですが、無理に興味のない課外活動をやる必要は全くありません。よくボランティアを探したりビジネスコンテストや模擬国連に出場する人が多いのですが、自分のやりたいことを見つめてそれに適っているならやるべきだし、適っていないならゆっくりやりたいことを探しながら自分なりの課外活動をするのが良いです。そもそも課外活動とは学校外でする活動なので、部活でも委員会でも生徒会でも文化祭や運動会でも課外活動に含まれますし、極論家の手伝いや兄弟の世話も課外活動になりうるのです。確かに数学オリンピックで金賞を取ったりロボコンで世界大会に出たりなど、トップ大合格者の中にはえげつない実績を残した生徒もいますが、みんながみんなそうではないので、周りを見て焦る必要はありません。今置かれた環境で自分ができることは何かを探し、試行錯誤して自分のやりたいことと向き合うことが大切であり、実績よりも自分の頭で考えて生きてきたかが大切です。課外活動の歴を書く欄がありますが、それよりもエッセイの中身の方がよっぽど大事で、18歳が自分の言葉で嘘なく自分自身の人間性を伝えるエッセイを書くためには、課外活動をする中で学校内だけでは辿り着けない考え方や自分の軸を見つけることが重要です。人と比べるための課外活動ではなく、自分を見つめるための課外活動なのです。特に人間性が見られるアメリカではこのような姿勢が大切で、一方で学問が重視されるイギリスでは学生時代から研究をしていたり論文を発表していたり数学オリンピックで賞を取っていると有利に働きます。

エッセイの対策は高3の春夏くらいから始まります。そもそもエッセイの質問文は大学側から夏秋ごろに発表され、その質問に対して自分の答えを書いて1月ごろにオンラインで提出します。英語のライティングは学校でほとんど習わないので、そもそも文章の書き方や表現方法が分からず、苦戦するので最初は書き方を学んだり過去の質問文に対して自分の答えを書いて練習していきます。ここでエッセイを添削してくれる人がいないと伸びていかないので、海外大専門塾に通ったり学校の先生に見てもらう人や、海外大に合格した先輩に添削してもらうことが多いです。進学校の生徒や帰国子女の多い学校の生徒だったら外大に受かった卒業生の先輩とfacebookで繋がって連絡が取れることがありますし、そういった先輩と繋がれなくても、X(旧twitter)で海外大の発信をしている人にDMして協力してもらうこともありだと思います。海外大に進学した日本人は、自分も情報やリソースが少ない中で苦労した経験があるので、同じ立場にいる後輩にはすごく真摯に助けてくれるんです。

最後に学校の先生からもらう推薦状ですが、これは高3の夏休み前くらいから先生に相談し始めて夏秋あたりに書いてもらいます。基本的に3人の先生に書いてもらうことが多く、自分で書いてもらいたい先生を決めてお願いします。担任の先生、ALTの先生、過去の担任の先生、ということが多い気がします。文系の先生と理系の先生両方から貰うと幅広く色んな学問を勉強していると評価されることがあるらしいですが、そこがどれだけ見られているかはわかりません。

お金の問題

アメリカとイギリスは授業料が引くほど高いことで有名です。授業料だけで年間700万円近く、そこに寮や食費、日々の生活費を合わせると1000万円にのぼります。ほとんどの家庭はこれを3.4年払うことができないので、それを肩代わりしてくれる返済不要のフルカバー奨学金を提供している財団が日本にはあります。柳井財団と笹川財団がそれです。受験は高3の9月ごろに行われ、毎年100人程度受験して2.30人が合格すると言われています。開成筑駒灘などの超進学校や、学芸大附属国際や渋幕、渋々など帰国子女の多い学校やインターナショナルスクールからの合格者が多い傾向にありますが、まれに地方の無名の高校から合格する子もいます。これら2つの財団からの奨学金は、指定する米英大学(いずれもトップ大学)に合格した場合に受け取れるので、仮に財団に合格しても大学に合格するまで奨学金を受け取れるか分かりません。逆に財団に不合格だと、折角大学に合格してもお金の問題で通えないこともあります。日本では大学合格と財団合格はセットなんです。ただ、他の国から米英大学に進学した外国人の知り合いに聞いてみたところ、返済不要のフルカバー奨学金なんてものはほとんどなく、毎年2財団合わせて50人近く無料で米英大学に行ける学生が生まれる日本は世界的にとても恵まれていると感じます。

他にも奨学金制度はいくつかあります。例えばリベラルアーツカレッジを対象としたグルー・バンクロフト財団、東進ハイスクールの模試で全国100位以内に入った生徒の中で面接に合格すると貰えるフルカバー奨学金、高2からイギリスの高校に転校してそのままイギリスの大学に進学すれば高校2年間と大学3年間合わせて5年間のフルカバー奨学金が貰える田崎財団などがあり、いずれも返済不要です。毎年数百万円程度の奨学金であればもっと沢山あります。

加えて条件を満たせば大学側からもらえる奨学金もあります。成績優秀者やスポーツに優れていたり家庭の収入が少なかったり、条件はさまざまあります。ただフルカバーで奨学金をもらえることはほぼ無いに等しく、一部を奨学金で賄う程度の認識です。ハーバード大学やイェール大学など、学校によってはフルカバーでもらえる可能性が他の大学に比べてかなり高いところもあります。

今や「金持ち」しか海外大に行けないという時代はもう終わり、誰でも挑戦できる時代になりました。

まとめ

ここまで海外大受験に関する基本情報をまとめました。僕が海外大受験を考えていた高校当時に自分で調べた情報や、進学した先輩や友達から聞いた話を元に書きました。

同級生のほとんどが国内の大学に進もうとしている中で一人だけ準備も勉強も全く違う海外大受験に打ち込むのは、誰もができることではありません。未知の世界に飛び込む度胸も、逃げたくても諦めずにやり続ける忍耐力も、分からないことだらけの中で自分の力で情報を集める力も必要です。そんな大変な海外大受験ですが、外の世界を見てみたい、自分がどれだけできるか試したい、窮屈な日本から抜け出したいと、有り余るエネルギーがある高校生にはぜひ頑張って欲しいです。日本の大学受験と違ってこの参考書をやってこのペースで勉強すれば受かるというノウハウはまだ溜まっていません。そもそも自分をどれだけ魅力的な人材に見せられるかという、就活に近いプロデュース力が求められるので戦うフィールドが全く違います。そのフィールドでやっていくためには、必要な情報を自分から積極的に集めて学校外でも活動する行動力が必要だと僕は思います。今の自分のレベルが希望の大学に到底達していなくても、自分にはできないと壁を作らずにやるべきことをやって坦々と努力できる子が受かるし、どの業界にも通底することだと思います。

次回以降は、実際に僕が現地に行って感じた各米英大の特徴を書く予定です。非帰国子女で純ジャパの僕から見たトップレベルの世界、ここが今連載の目玉です。お楽しみに!

著者紹介

藤原 遥人(ふじわら はると)

開成高校在学時代、学校で教えないことを高校生が中学生に教え、勉強の面白さを伝える塾、寺子屋ISHIZUEを創業。現在東京大学文科一類を休学中。東大では、ハーバード大学とアジアのトップ大学の国際交流を図る学生団体HCAPに所属。休学中はアメリカ横断やヨーロッパ一周一人旅など海外への視野も広げている。

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