西武台新座中学校スペシャルレポート6/新プロジェクト始動!中1~中3の縦割りグループで取り組む研究活動

2024年度から新たな探究プロジェクトがスタート

2024年4月から「総合的な学習の時間」で取り組んでいる研究活動について、入試広報部の大場彩子先生に話を聞いた。

 

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▶︎入試広報部 大場彩子先生

 

2024年度から「総合的な学習の時間」を使った新たなプロジェクトがスタートした。これまでは学年ごとにテーマを決めて活動してきたが、今年度からは縦割りでグループを作って活動しているという。

「本校では、開校当初から総合的な学習の時間を使って探究活動を行っています。これまでは、1年生は『学校を知る』、2年生は『自分を知る』、3年生はオーストラリア修学旅行と絡めて『世界を知る』というテーマで活動していました。学年ごとの大テーマから、それぞれが小テーマを決めて進めていましたが、大テーマが決まっているとどうしても敷かれたレールの上を進んでいくような活動になってしまいます。そこで今年度からは、もっと生徒一人ひとりが自分ごととして取り組めるようなプロジェクトをスタートさせました」(大場先生)

新たなプロジェクトは、1年生から3年生の縦割りグループ(5~6人)を作り、SDGsの目標から取り組みたいテーマを決めて活動していく。

「調べて発表するだけで終わらず、課題を見つけてそれを改善できる方法を考えて、自分たちで何か爪痕を残すことを目標にしています。4月~1月は研究活動を行い、2月のスタディフェスタで保護者の前で発表する予定です。夏休みには、研究活動と関連して上野で校外学習も行っています。国立科学博物館、東京国立博物館、上野動物園の3施設から2つを選んで、何か研究に活用できることはないか、自分たちで探しながら見学しました。校外学習の前には、スーパーマーケットでエコ部門を担当している方に講演をしていただいたり、4月には2年生がチョコレート工場や醤油工場の見学をして、製造する過程で出るカカオ豆の種皮や醤油の絞りかすを捨てずに有効活用していることを学ぶなど、様々な角度から研究活動のヒントになるような機会を作っています」(大場先生)

縦割りのグループによる研究活動は、テーマ設定から研究方法まですべて生徒たちが考えているので、本当の意味で現代社会の課題について考えることができ、学年を越えて協働性を学ぶ機会にもなっているという。

「テーマも本当に様々で、SDGsの5番『ジェンダー平等を実現しよう』という目標から、男女問わず着られる制服をデザインしているグループもあります。制服のメーカーにアポを取って、明日デザイナーに見てもらうそうです。生徒たち自身で1からテーマを決めたので、結果はどうなるかわかりません。失敗するかもしれませんが、できないとわかったことがゴールでもいいと考えています。基本的には1年で終わらせるのではなく、次年度も継続していく予定です。3年生が卒業して1年生が入学したら、新しい1年生を加えて活動を引き継いで行きます。テーマを改善する必要があるかもしれませんし、テーマは同じでも、方向性を変える必要があるかもしれません。1年間の成果を受けて、よい形で受け継いでいけたらいいなと思っています」(大場先生)

 

下水処理場の課題から見つけた研究テーマ

下水処理場の問題について調べる中で「*脱水ケーキ」に着目したグループで活動している生徒2人に話を聞いた。

*脱水ケーキ:水分を含む産業廃棄物や汚泥を脱水処理したもの。主に排水処理において作られる。

 

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▶︎写真左より:Kさん、Sさん

 

Sさん 中3
Kさん 中1

 

SさんとKさんのグループは、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」から課題を見つけて「脱水ケーキ」に着目した研究を進めている。

「安全な水というテーマから下水処理場について調べていたら、いくつかの課題があることがわかりました。例えば、耐用年数が超過している処理場では、設備の故障が起こりやすい状況にあります。汚泥から水分を除去する過程で作られる脱水ケーキと呼ばれる副産物は、埋め立て処分するケースが多いですが、年々埋め立て処分する土地を確保するのが難しくなってきています。設備の故障については自分たちで何か改善するのは難しいので、脱水ケーキに着目して、有効活用できる方法がないか考えました。もし脱水ケーキが何かに利用できることがわかれば、実際に下水処理場で取り入れてもらえるかもしれません。それを目指して、研究を進めています」(Sさん)

 

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▶︎Kさん作成の資料より

 

下水処理のシステムについて調べて、処理された下水汚泥には養分が含まれていると知ったSさんたちは、肥料として使えないかという研究を始めた。実際に下水処理場から汚泥を取ってくることはできないので、まずは疑似汚泥で実験をするという。

「脱水ケーキの養分について調べて、微生物がいることがわかっています。インターネットで見つけた柳瀬川の生物調査報告書から、上流の泥には似たような微生物がいることがわかったので、脱水ケーキに近いのではないかと考えました。それで、柳瀬川に行って泥を取ってきて、今乾燥させています。これを疑似汚泥として土に混ぜて、市販されている肥料を使うものやただの土だけのものと比較する実験として、野菜や花を育ててみようと思っています。1つは、微生物がいる疑似汚泥と微生物がいない市販の肥料を比べて、微生物が植物の成長に与える影響を調べる実験です。もう1つは、細菌がない疑似汚泥と細菌が含まれている土を比べて、細菌の有無による違いについて調べます。野菜と花にしたのは、1種類だけだとその植物との相性が悪かっただけという可能性もあるので、何種類かで試した方がいいと先生からアドバイスがあったからです」(Kさん)

夏休みの校外学習で行った上野では、研究活動の参考になる情報を得るために上野動物園と国立科学博物館を訪れた。

「僕たちのグループは肥料がテーマだったので、2つの施設で土に関する情報を集めました。上野動物園では、動物に与えている野菜を作るための肥料や栽培の環境づくりについて聞きました。動物園に掲示してある説明書きを読んで、細菌が土に影響を与えることがわかったので、実験で比較する項目として細菌を入れることになったのです。科学博物館でも、土に関する情報を得て、研究活動に活かすことができました」(Sさん)

 

縦割りのグループ活動でそれぞれの学年が成長

縦割りグループで活動する中での役割分担や、成長したと感じることなどについてSさんとKさんに話を聞いた。

 

SさんとKさんのグループは、1年生2人、2年生2人、3年生2人の6人で活動。活動を通して、1・2年生ができることも増えてきているとSさんは語る。

 

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「1年生から3年生の縦割りグループなので、最初はメンバーの性格を知るために自己紹介から始めました。テーマ背景の発表や校外学習後の発表、中間発表、そしてスタフェス本番など、発表用の資料を作る機会も何度かあります。最初の方は3年生中心で進めようかと思っていましたが、僕たちのグループは1・2年生が自主的に動いてくれているので、アドバイスをしながら1・2年生中心に資料を作ってもらっています。僕たちが1・2年生のときは学年ごとの活動だったので、教えてくれる人がいませんでした。今の1年生も最初はスライドを作ったことがなかったですが、3年生に教えてもらいながら少しずつ作れるようになり、今では3年生を越えるぐらい上手に作れるようになっています。3年生は3月で卒業してしまうので、1・2年生が研究を引き継いでいけるように自分が知っていることはどんどん教えていきたいです」(Sさん)

1年生のKさんもインターネットを使った資料集めなど、自分から積極的に研究に取り組んでいる。

 

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「最初は、『汚泥肥料なんてできるのかな?』という感じでしたが、僕たち1年生は3年間取り組めるので、もし今年度は失敗したとしても成功に持っていける可能性はあると思います。SDGsの目標は2030年までにクリアすることを目指して掲げられているので、あと6年しかありません。下水処理場から出た脱水ケーキを埋め立てる場所があと15年ぐらいしたら足りなくなるという地域もあります。自分たちが少しでも貢献できるような成果を目指して、みんなで取り組んでいきたいです。自分でやりたいテーマを選んだのだから、本気で取り組まないといけないと思っています」(Kさん)

SDGsの目標から広がったテーマは様々で、それぞれのグループが独自の視点で研究に取り組んでいる。

「和食について研究しているグループは、生活習慣病を予防するために和食の健康的な食事を紹介するアニメを作っています。生活習慣病をテーマにした研究を行っているグループがいくつかありますが、アニメの他には生活習慣病を予防するゲームを作っているグループもあったりして、それぞれ違いがあって面白いです。食べ終わったお団子の竹串を再利用するための研究をしているグループは、竹串でバスマットを作るそうです。チクチクしないようにコーティングするそうですが、本当に足が痛くならないか気になります」(Kさん)

2週間後には全校生徒で中間発表を行い、2月のスタディフェスタに向けてさらに研究を進めていく。

「中間発表に向けて、実験についてもう一度じっくりと検討したいと思っています。今は実験対象を市販の肥料とただの土という2つで考えていますが、もっと増やしたいです。例えば、市販の肥料にもいろいろ種類があり、土にも種類があるので、よりよい実験ができるように条件などを見直すことも大切だと思っています。みんなで話し合い、意見を出し合って決めていきたいです」(Sさん)

 


取材を終えて

縦割りグループで研究活動を行うことで、1・2年生は3年生から教えてもらうことができ、3年生は先輩としての責任感が芽生えるきっかけとなるなど、様々なメリットがある。SさんとKさんのやりとりを見て、とてもよい関係が築けていることが伝わってきた。各グループのテーマも非常に興味深く、2月のスタフェスでの発表にも注目したい。

 

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