Special Report
個々に対応した細やかな進学指導に定評のある立正大学付属立正中学校・高等学校。実際、どのような指導が行われているのか、今年4月に「特別進学」、「進学」クラスから大学に進学した3名の卒業生と、それぞれのクラス担任の先生に、当時の様子を語ってもらった。
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6年間を通じた学習サポートとキャリア教育
立正大学付属中学校・高等学校は、中学2年次から「進学クラス」と「特別進学クラス」の2種類のクラスを編成。高校2年次以降は、進学・特別進学ともに文系と理系にクラスを分け、生徒の希望進路に応じた学習や進学の指導を行っている。
また、授業以外にも随時補習を実施し、中学は夏期に、高校では夏、冬、春の長期休暇を利用して特別講座を開講し、学習をサポートしている。なかでも高3は、大学受験用の講座を多数用意し、共通テストや推薦入試対策、志望大学のレベルに沿った英語や現代文、古文、社会、理系では数学や理科の演習を設けるなど多彩な講座を展開。少人数の講座も多く、きめ細かに指導をしている。また、コロナ禍以前は、大学受験に向けて3泊4日の合宿があり、一昨年度は合宿の代わりに朝から夕方まで学校で受験勉強に取り組んだという。
さらに同校は、目的を持った進路選択を促すために、6年間のキャリアデザインプログラムを実践している。中学は「社会を知る」というテーマのもと、1年生では社会で活躍している卒業生の話を聞く「職業講話」、2年生ではサプライチェーンについて学んだり、地域活性化を題材にプレゼンなどを行う「職業理解」、3年生では3日間のインターンシップに参加する「職場体験」を実施。高校では「大学・学部・学問」を知るためのさまざまなガイダンスや、外部イベントに参加する機会を豊富に設けている。
こうしたキャリア教育も取り入れながら「行ける大学」よりも「行きたい大学へ」をモットーとした進学指導を実施。特に面談を重視し、生徒一人ひとりがふさわしい進路に進めるよう教員が一緒に考え、目標達成に向けて手厚くサポートをしている。
「特別進学クラス」の担任と卒業生にインタビュー
この春「特進理系クラス」の渡辺俊矢さんと若狹菜々子さんは、それぞれ東京工業大学、日本赤十字看護大学へ進学した。その時の担任だった尾﨑雄一先生とともに、受験までの道のりについて話を聞いた。
渡辺俊矢さん:東京工業大学1年生。高3は「特進理系クラス」に在籍、クラブは鉄道研究部
若狹菜々子さん:日本赤十字看護大学1年生。高3は「特進理系クラス」に在籍。クラブはバスケットボール部
志望校選びは生徒のこだわりを尊重。職業体験が進路につながるケースも
――(先生へ)「特進クラス」の進学指導で、心がけていたことを教えてください。
尾﨑先生:特進クラスの大半は、一般受験にのぞみます。生徒は大きく2種類のタイプに分かれ、1つは行きたい大学や学部など方向性が決まっている人、もう1つは、勉強はしているものの方向性が決まらない人です。渡辺くんや若狹さんは前者のタイプですね。そういう生徒とは情報を共有しながら志望校を絞り、最終的な決定は本人のこだわりや感覚を優先するようにしています。もちろん「こういう判断基準もあるよ」とアドバイスをすることもありますが、大学に通うのは生徒自身なので、本人が納得する進路を選んでほしいと思っています。
一方、方向性が定まらないタイプですが、結構、将来の仕事を考えすぎて迷ってしまうケースも多くあります。そういう生徒にはまず「自分は何に興味があるのか」「大学でどんなことを学びたいか」趣味のレベルでもよいので好きなことを意識し、糸口を見出せるように声をかけています。方向性が決まればこちらも綿密なサポートができますし、生徒自身も勉強のモチベーションが上がりますね。
――(卒業生へ)現在の進学先をいつ頃、どのような理由で選んだのでしょうか?
渡辺さん:昔から理科は好きだったのですが、実は、高1の時は教育学部に行きたいと考えていました。そうしたら担任の先生が「理工学部でも教員免許が取れるよ」と面談の時に教えてくれ、理工学部にシフトチェンジしました。最初から漠然と国公立大学に進学したいと思っていて、高2では今と違う大学を考えていたのですが、高3の6月頃、もう少し上を目指そうと東工大を志望校に決めました。
若狹さん:私は小6の頃から、テレビドラマの影響もあって医療系の仕事に興味を持っていました。明確に看護の道に進もうと決めたのは、中3の職場体験からです。クリニックの訪問看護に同行し、私は患者さんと話をするだけでしたが、それでも喜んでもらえたのがうれしかったんです。その後、看護学部のある大学を探し、オープンキャンパスもいくつか参加しました。その中で立正の雰囲気に似ていて、私に合いそうな日本赤十字看護大学を選びました。
学校の勉強を全力で取り組むことが、大学受験を突破する力へ
――(卒業生へ)受験までどのように過ごしていましたか?
渡辺さん:塾に通うこともなく、ずっと学校の課題と補講、あとは通信教育の教材で勉強を続け、それが受験勉強につながっていきました。特に成績が落ち込んだ時期もなく、維持してこられたのは、1回1回の定期テストに向けて、どの教科も満遍なく勉強してきたからかなと思います。
若狹さん:今の大学は公募推薦で合格しましたが、一般受験も考えつつ、両方の対策をしていました。推薦は評定が必要なので、渡辺くんと同じく、授業と定期テストをきちんと取り組んでいました。実は、日本赤十字看護大学を受ける前にもうワンランク上の大学を推薦で受験を目指しましたが、断念しました。尾﨑先生にはギリギリの日程で準備をしてもらい、ご迷惑をかけてしまったのですが、チャレンジしたことは良かったと思っています。
――(先生へ)渡辺さん、若狹さんはどんな生徒でしたか?
尾﨑先生:渡辺くんは、努力を続ける人ですね。授業中は人の目を見て、集中して聞いている姿が印象に残っています。高3の面談の時、彼の学力からして「東工大もいいんじゃないか」と提案しようと思ったら、本人から先に言われたので、びっくりした記憶があります。
若狹さんも、やるべきことをきちんとやるストイックなタイプです。看護系という進路も迷いがなく、そこに向かって日々、真面目に勉強をしていました。2人とも、学校の勉強に対して全力で取り組み、それが学力の土台となっていきました。言い換えれば、学校の勉強を全力でやらなければ、受験を突破する力も身につかないのだと思います。
――(卒業生へ)中高生活で一番の思い出は何でしょうか? また、学校の進学指導について、率直な思いを教えてください。
渡辺さん:中学の関西修学旅行です。京都では班ごとの自由行動があり、僕たちの班は他の班よりも、神社仏閣を多く回りました。みんなが行きたいところを出し合っていたら、寺や神社が多くなり、好きなことが似たメンバーだったのでしょう。
進学指導に関して、尾﨑先生は僕の意見を尊重し、否定することが一切ありませんでした。いつも応援をしてくれていることを感じ、心強かったです。
若狹さん:学校の思い出はいろいろありますが、高校の九州修学旅行が楽しかったです。本来は高2で行くのですが、コロナで中止になり、それでも高3で行くことができたので、より思い出深いです。尾﨑先生は、先ほど話したレベルの高い大学にチャレンジしたときも、「自分のやりたいようにしたほうがいい」と後押しをしてくれました。また、すべての生徒の合格発表の日時を覚えていて、一人ひとりを気にかけてくれる先生でした。
「進学クラス」の担任と卒業生にインタビュー
「進学文系クラス」に在籍していた小嶋ひかりさんは、立正大学心理学部に内部推薦で進学。その時のクラス担任である梅田克彦先生と小嶋さんに、進学指導や受験時のエピソードなどを伺った。
小嶋ひかりさん:立正大学心理学部1年生。高3は「進学文系クラス」に在籍。クラブは弓道部
推薦、一般受験の生徒が団結して合格を目指せるクラス作り
――(先生へ)「進学クラス」の進学指導の特色と心がけていたことなどを教えてください。
梅田先生:「進学クラス」の大学受験は、学校推薦型選抜や総合型選抜を希望する生徒が多いのが特色です。それには普段の授業や定期試験がとても重要になるので、生徒たちには「必要な評定が取れなければ、進路の選択肢が狭まる」ことを伝えていました。また、一般受験をする生徒も一定数いるので、その子たちがクラスで孤立しないように気を配っていました。受験の形態はそれぞれ違えども、次のステージを目指して合格を取りに行くのは同じであること、クラスの団結が大事であることを常々話していました。
――(卒業生へ)現在の進学先を決めた時期や、理由を教えてください。
小嶋さん:高2の時、心理士になるという夢を持ち、心理学部への進学を決めました。ちょうどその頃、母が病気で入院し、コロナで面会ができない中、メールでも気持ちが和らげられたらいいなと思ったのがきっかけです。それから心理学部のある大学を調べ、オープンキャンパスにも行き、候補の大学を絞っていきました。でも、どうしても志望校を選びきれず、梅田先生に電話をして相談したこともありました。最後は立正大学に推薦を出しましたが、付属だからという理由ではなく、自分の学びたい心理学のプログラムがあることで決めました。
一人ひとりの性格やペースに合わせた進路指導
――(先生へ)進路選択について、どんなアドバイスを送っていますか。
梅田先生:小嶋さんの場合、9月頭に指定校推薦の希望届を出願する必要があったので「しっかり悩めるのは今しかないから、ぎりぎりまで考えていいよ」とアドバイスしました。小嶋さんのように、早い段階から行きたい大学や学部が決まっていればよいのですが、そうでない生徒には、できるだけ視野を広げるようにオープンキャンパスに行くことを勧めています。しかし、その大学の印象を判断するのはあくまでも生徒なので「この学部のこういう分野を学びたい」と申し出てくるまで待つ姿勢でいます。また時々、卒業後の進路を他人事のように考えている生徒もいます。そういう子には「君は3月に卒業するんだよ。立正の生活が楽しくてもここには通えないんだよ」と危機感を持たせたり(笑)。一人ひとり性格やペースが違うので、その子に合わせて声がけをしていました。
――(卒業生へ)学校生活で思い出に残っていることは? また、学校の進学指導の感想を教えてください。
小嶋さん:コロナでいろいろな行事が中止となり、高3の体育祭が一番記憶にあります。特に、背渡りという馬になっている人たちの背中の上を走る競技が楽しかったです。私は走者だったのですが、梅田先生も一緒に練習をして、作戦も練って1位になりました。
進路については、先生がとても親身になって相談にのってくれたので、とても心強かったです。また、先生は日頃から「最近はどうだ?」と、気軽に生徒に話しかけてくれて親しみやすかったから、進路の相談もしやすかったのだと思います。
――(卒業生へ)大学進学後の目標を教えてください。
小嶋さん:大学院も目指し、心理士として病院で働きたいと思っています。一人ひとりと向き合い、信頼してもらえるようなカウンセラーになりたいです。
取材を終えて
日頃から先生と生徒の距離が近く、進学指導に関しても、一人ひとりに対して、親身になって接していることがインタビューから伝わってきた。また、受験の対策も予備校など外部に任せず、学校の面倒見の良さを感じた。
所在地
〒143-8557
東京都大田区西馬込1-5-1
TEL 03-6303-7683
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