藤原遥人の東大合格体験記 第11回 東大に復学して受けてみた授業

2024年10月から復学して、約一年ぶりに東大に戻ってきました。ほぼ0からの学生生活のスタートにワクワクして、折角だから色々な授業を見てみようと、最初の2週間は50個以上の授業を聴講して、選択科目で何を履修するか考えました。元々授業を受けるのはあまり好きではない性格なのですが、折角東大に入ったなら、東大にどんな授業があるのか気になり、恐らく聴講した授業の数で言ったら上位1%に入っていると思います。僕の興味関心分野中心ではありますが、聴講した授業を紹介していきます。

前期教養学部の授業

↑履修を組む時に使ったノート

以下、聴講した授業
※必修の授業は除く。選択科目のみ。

月曜
・全学自由研究ゼミナール (0から始めるWebプログラミング)
・全学自由研究ゼミナール (韓国ポップカルチャー論)
・進化学
・ジェンダー論

・歴史社会論音楽論
火曜
・民族文化論
・世界史論
・美術論
・法・政治 (in English)
・全学自由研究ゼミナール (作曲=指揮)
・全学自由研究ゼミナール (「経済安全保障」の基本文献を読む)
水曜
・性の政治II
・全学自由研究ゼミナール (世界のモスク建築)
・思想・芸術III (in English)
・映画論
・経済政策
木曜
・科学史
・全学自由研究ゼミナール (ボーカロイド音楽論)
・社会システム工学基礎Ⅱ
金曜
・演劇論
・相対論
・英語上級
・政治経済学
・全学自由研究ゼミナール (塀の向こうには誰がいるのか:犯罪と刑事司法の多角的理解)
・全学自由研究ゼミナール (日本の経済戦略と政策が果たす役割)
・全学体験ゼミナール (囲碁で養う考える力)
・学術フロンティア講義 (惑星科学のフロンティア)
・東アジア哲学
・文理融合ゼミナール(メディアと芸術)
・全学自由研究ゼミナール (法律実務家からみた「法律を学ぶことのススメ」)
・教育臨床心理
・平和構築論
特別講義
・全学自由研究ゼミナール (刑務所×(架ける):障害を持つ出所者の社会復帰を考える)
・全学体験ゼミナール (映像デザイン実習)
・全学体験ゼミナール (続伊豆に学ぶ イノシシソーセージ作り)
・国際研修 (平和のために東大生ができること:中央アジア研修)
・全学体験ゼミナール (続伊豆に学ぶ 伝統工芸を守る意義とは)
・文理融合ゼミナール (身体と芸術)すずかんゼミ

そもそも東大は入学時に文系と理系の2種類のテストがあって、 合格したら全員まとめて前期教養学部に入り、3年生になった時に、本郷キャンパスにあるそれぞれの学部に散ります。こういった、大学の前期で広く浅く色々なことを学んで教養を深め、後期までに突き詰めたいものを見つけて狭く深く勉強するという形態をリベラルアーツ教育と言い、アメリカではほとんどの大学がこうなのですが、日本では東大とICUだけです。他の大学やイギリスの大学は入学時に学部が決まって、大学期間ずっとその勉強をするのですが。

僕は文科一類という、文系の中でも法律や政治について勉強する科類に入ったのですが、1.2年は教養学部なので法律や政治以外にも色んなことを学びます。東大の意向としては、色々な学問に触れることで興味を広げてやりたいことを見つけたり、すでにやりたいことが決まっていても他の分野と繋げて学際的に学んで欲しいのだと思います。

そんな中僕は、映画や演劇や音楽などの芸術系や、経済政策系にも興味があったので、法律や政治の必修の授業の他に、選択科目で色々な授業を試し取りしてみました。(学期が始まって最初の2週間は、自分と合う授業が見つけられるように、履修を確定せずに色々な授業を見て回って良いことになっています。)

こんな授業もあるんだ!と驚いたのは、韓国ポップカルチャー論という月曜の授業やボーカロイド論という木曜の授業です。

Kpop論は授業中twiceやblack pinkのMVを見て、JpopのMVと比較したり、音楽性から韓国の民族性や考え方を論じる授業で、ボーカロイド論はボカロ界隈で有名な教授が、初音ミクの曲の持つ音楽性がギリシア哲学と通ずるところがあるとか、米津玄師のボカロ曲から日本人の死生観を解釈するとか、兎に角ボカロと学問を行き来する授業でした。ボーカロイド論は何回か授業に行って、毎回4時間の授業なのに皆17時から21時までちゃんと授業を聞いていました。Kpop論は韓国風のいまどき女子とかファッションに気を遣っている男子が結構いて、ボカロ論は中高ずっと音ゲーをやったりボカロを聞いてたオタク気質の学生が多かったです。授業の内容によって取る生徒の生活圏が違うのが面白かったです。ちなみにボーカロイド論の授業は書籍化されて発売されています。

金曜日の囲碁をするだけの授業もありました。毎週集まって1時間半囲碁をするだけ。色んな人と対局して、特に何も教えず、やる中で囲碁的な考え方を培うのを目指しているのだそう。課題がなく出席するだけですし、単純に面白いからと、授業に応募する学生が多くて倍率が高く、僕は取れませんでした。囲碁をやったことがない人がほとんどだそうです。

特別講義は実践的で面白そうなものがいっぱいありました。「刑務所×(架ける):障害を持つ出所者の社会復帰を考える」という授業では春休みに実際の刑務所に見学に行ったり、「映像デザイン実習」という授業では個人1つとグループで1つ、短編映画を1から作ったり、「伊豆に学ぶ イノシシソーセージ作り」では2泊3日で伊豆に行ってイノシシを捌き、ソーセージに詰めて食べる体験をしたりします。お金はかかりますが、「平和のために東大生ができること:中央アジア研修」では中央アジアに行って一週間研修を受けることもあります。こういう体験系の授業は、多様性ある授業を展開するために、東大が色々な業界と繋がりのある教授を雇っているから体現できていることだと思います。少人数制で人気も高いので、ほとんどは最初に「なぜ参加したいのか、参加したら何をしたいのか」を書くエッセイを送って合格しないといけません。僕は映像デザイン実習を取ることにしました。

東大らしく、賢くも面白い授業も沢山あります。オムニバス形式(毎回違う先生が話しに来る形式)の授業で、金曜の「日本の経済戦略と政策が果たす役割」では、毎回経済産業省やら財務省やら外務省やらで働く東大OBOGの官僚が授業に来て、それぞれの省庁で今どんな仕事をしていてどんな課題があるのかを話しに来てくれます。金曜の「惑星科学のフロンティア」でも、人工衛星やら法制度やらの宇宙系の各分野から有識者が来て、知識や議論のテーマを与えてくれます。毎回違う先生なので当たり外れや合う合わないは生徒によってありますが、話を聞いていればあの本を書いた人なんだ!とか、あの政策に携わった人なんだ!とか、話題を作っている側の人の話を聞けるのは貴重だと思いました。

映画論という授業では黒澤明などの昔の日本映画を見て、ロシア人の教授が何が凄いのかを喋ったり、演劇論という授業ではシェイクスピアの戯曲を読んで言語使いの美しさを喋ったりしていました。こういう文化芸術的な授業もあるので面白いのですが、僕としては昔のものすぎてあまり自分に合わなかったです。昔の映画をみる良いきっかけにはなると思ったので履修しましたが。

結局履修した授業

学期の頭に時間割表の冊子を全部読んで面白そうな授業を丸してパソコンで登録して色んな授業を聴講してみるという生活を2週間送りました。最初の1週間はzoomだったので、同時に開講されている授業をスマホとパソコンの2台使いで聴講して、それでも足りないから前後半で分けて1限の間に4つの授業を受けることもしました。

結局選択科目として履修することに決めたのは、太線で書いた授業です。興味のある授業が同じ時間に被っているせいで受けられず、悔しかったのがいくつもありました。あとは授業以外でやりたいことが沢山あるので、あまり負担にならず、興味もあるという良い塩梅のものを選ぶようにしました。

今回の履修を組むにあたって、おすすめの授業はないか色々な先輩に聞いてみました。特に科学史や相対論、教育臨床心理や惑星フロンティアなどの理系の授業は全く取ることを考えていなかったので、聴講してどんな授業が東大にあるのか知れただけでも良い機会になったと思います。

授業が始まって

この記事を書いている現在は、授業が始まってから3ヶ月ほどが経った時です。正直なところを言うと、授業が始まっての感想は、やはり授業は自分の性に合わなかったです(笑)。小中高ずっと、授業を受けて学力が上がったと実感することはなくて、自学自習で学力を伸ばしてきたので、自分で本を読めば30分で分かる内容を先生が話すことで90分になることが耐えられず、集中が切れてしまうので、授業はあまり楽しみではなくなりました。(ほとんどの学生はそうだと思いますが。)ただ、勉強としてはどの分野も興味はあるので、自分でその分野の本を読んだりYouTubeで検索したりして知識は得ています。それと、やはり自分の興味のある映画制作や演劇やMV制作を毎月やっているので、その準備や勉強のための映画鑑賞で大学の勉強の時間が取りづらいのも惜しいところです。

幸い先輩と話して情報を得る中で、後期課程で興味のある学部が幾つかあるので、今よりは自分の勉強したいことを狭く深く学べるようになる本郷キャンパスでの学びは楽しみなので、早く前期課程を終わらせて、駒場キャンパスから脱出したいです。

著者紹介

藤原 遥人(ふじわら はると)

学校で教えないことを高校生が中学生に教え、勉強の面白さを伝える塾、寺子屋ISHIZUEの創業者。開成高校卒業。現在東京大学文科一類に在学中。大学ではダンスサークルとジャズオーケストラのピアノ担当で活動中。

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