藤原遥人の東大合格体験記 第2回 開成→東大ってそんな簡単じゃないんです!

皆さん。開成と言えば東大、東大と言えば開成ですよね。開成の東大合格者数は40年連続日本一で、学年400人中半分弱の150人前後が毎年東大に合格します。開成に行ったからにはそのまま東大に行くのが当たり前。もはや東大の附属校なんじゃないかというイメージを持っている方が多いと思います。しかし、開成生が東大を目指すことは当然であり、天才なのでちゃちゃっと勉強すれば東大に余裕で合格を持ち帰ってくるという皆さんのイメージのせいで、当事者の開成生は常にプレッシャーを抱えています。そこで今回は、開成→東大はそんな簡単な話ではないぞと伝えるために、実際に開成→東大を経験した僕がその実態を解説しようと思います。

目次
・どこ大志望?とは聞いてくれない
・普通の高校の倍勉強させるカリキュラム
・東大を目指すリスク
・まとめ

どこ大志望?とは聞いてくれない

受験生同士の定番トークネタとしてお互いの志望大学を聞き合ってちょっと盛って話したりマウントを取ったり取られたりする文化はどこの高校でもよくあることだと思いますが、開成のそれは一味違います。そもそも開成では学年400人中、ざっくり300人が東大志望、100人が医学部志望です。隣の席の奴が自分と同じ東大を受けることは聞くまでもなく分かっているので、「お前どこ大志望なの?」と聞くのは愚問です。代わりに「お前科類どこ?」と聞きます。僕も最初にクラスメートから聞かれた時は、東大以外の選択肢を与えてくれないことに衝撃を受けましたが、すんなりと受け入れて次の日には自分も同じことを友達に聞いていました。

東大の学部
東大には文科一類(法学部)、文科二類(経済学部)、文科三類(文学部・教育学部)、理科一類(理工学部)、理科二類(薬学部・農学部)、理科三類(医学部)の6つの科類があり、文系は前者3つの内から、理系は後者3つの内から進学先を選択します。文系の3つの科類、理系の3つの科類それぞれは全く同じ試験を受けますが、若干合格最低点や採点方法が違います。

もしここで東大や医学部以外の大学を言えば、びっくりされた後に「どうして?」と聞かれます。そうです。早慶に行くのには理由が必要なのです。開成生は自分たちの勉強のポテンシャルを知っていて、欲望に流されずに真面目に勉強すれば自分達が東大にいけることは分かっています。そんなポテンシャルを持ちながら早慶を志望し、ましてや東大や医学部を受けもしないということはそもそも選択肢にも入っておらず、あったとしてもよっぽど勉強したくないサボりでしかありません。早慶に行くことに言い訳がいる世界線なのです。実際、受験が終わって早慶に進学することになった開成生は、周りの開成生から「確かに、お前あんまり勉強してなかったもんな」といじられます。

とにかく、東大に受かるのなんて当たり前、クラスの中で東大や医学部に落ちる方がマイノリティーという環境で生きている開成生にとって東大に合格しなければならないというプレッシャーは半端ないです。頑張って東大に受かったとしても、みんな受かっているので現状維持でしかないんです。怖いです。

普通の高校の倍勉強させられるカリキュラム

開成の校長はよく始業式や終業式で「文系理系関係なく、選択科目に関係なく、幅広く学問を勉強しましょう。」と話します。文系の人も理系の勉強し、理系の人も文系の勉強し、物理と化学しか選択してない人も生物と地学も勉強して、色んな学問に触れましょうという意味です。実際にカリキュラムもこれの通りに作られています。例えば、数学は高1の1年間で、一般的な高校が2年かけて学習する数学1A2Bを終わらせた後、高2の夏休みまでは文系理系に関わらず、理系数学の数学3を全員勉強します。社会も凄いです。社会は世界史、日本史、地理、倫理、政治経済など幾つかの科目に分かれていて、一般的な学校では2科目勉強させる中、開成では高1の時に4科目勉強しないといけません。理科においては物理、化学、生物、地学の4科目中3科目もやらなくてはいけないのです。

よって期末試験は、国語は現代文、古文、漢文の3つ。数学は文系数学と理系数学で2つ。英語は先生が3人いるので3つ。社会は4つ。理科は3つ。ここに情報も加わって16教科もあり、5日かけて行います。僕は試験前いつもひいひい言ってました。

どの科目も満遍なく勉強しようという考え方自体はその通りだと思うし共感なのですが、受験勉強も忙しいのにそれと並立して受験で使わない科目も勉強するのは至難の技です。流石に高3の受験期は自分の受験科目以外の必修はないですが、高1、高2の約2年間は文系理系関わらず両方勉強するので、一般的な高校の倍勉強させられます。そういう意味で学校の勉強と受験勉強は別物なので、半分の時間で東大のための勉強をやらないといけないのです。

東大を目指すリスク

東大の受験システムは他の大学と大きく違います。まず共通テスト試験で5教科7科目受験します。ここで、文系でも理科基礎2科目を、理系でも社会1科目を受験するのがポイントです。そして2次試験で東大が作成した記述式の試験を解くのですが、僕が受けた文系の試験は国語、数学、英語、世界史、地理の5科目です。これが一般的な文系の私立だと国語、英語、社会(世界史or日本史)で、理系の私立だと数学、英語、理科(物理or化学)の3科目ですし、京大などの国立でも国語、数学、英語、世界史(or日本史)の4科目です。東大の科目数は日本で一番多く、文系なのに数学があって社会を2科目勉強しなければいけないのが特徴です。とにかく勉強量が多いんです。

また東大は記述式で本質をついてくる問題なのに対して、早慶はマーク式で知識を重視する問題なので同じ科目でも系統が全然違います。そのため東大には受かっても慶応はどの学部も落ちた、という人はザラにいます。つまり、東大は学部によって受験日が分かれている私立と違って一発勝負であり科目数も多いのに、頑張って勉強しても、落ちたら滑り止めの学校にすら受かる保証がないのです。

しかも東大の2次試験は記述式なので、ちょっとの表現の違いで1点減点がよくあります。これが5科目で2回ずつやっただけでも10点減点。10点も低ければ不合格は全然ありえます。しかしこの10点の差は紙一重なんです。表現に最後まで気を遣えた人と少し雑になってしまった人との間に、数字で見たら10点の大差はあっても学力にそれほどの差はありません。紙一重で合否が変わるのに、そして不合格だとしても他の大学に受かる保証もないのに、東大を目指すということはかなりリスクが高いのです。私立受験の倍以上の時間と労力がかかりますし、何より浪人する可能性が高まります。

加えて僕の場合は、高校生の時からこのサイトで連載をさせていただいており、僭越ながら「賢い人はこう勉強する」とか「こうしたら子供は勉強をしだす」とか、勉強のアドバイスをする記事を沢山書いてきました。よく読者の方から感想を寄せていただき、温かいお言葉ばかりなのですが、同時に自分の中では勝手にプレッシャーも感じていました。これだけ偉そうに言っておきながら東大落ちたら恥ずかしい。これからまた偉そうなことを言えなくなってしまう。と自分に喝を入れながら勉強していました。無事合格した時は、嬉しさよりまず安心しました。

まとめ

東大に行くのが当然であり、落ちるのが恥ずかしいという環境の開成の雰囲気と、受験勉強と関係ない勉強までしなければならない開成のカリキュラム、そしてリスクの高い東大の受験システムによって、開成→東大のルートはそんなに簡単なものではないのです。学年の半分弱が東大に合格しているのは、開成生だからちゃちゃっと勉強して簡単にみんな合格しているのではなく、それだけの人数がこの難しい道をくぐり抜けてきているだけなのです。だから東大に入ってから「高校どこ?」と聞かれて「開成だよ」だと答えた時に、「あぁー開成ね、よくいるわ」の顔をするのはやめてください。簡単じゃないんです。頑張りました。
この連載では、受験期の過ごし方や当時のエピソード、勉強のアドバイスを中心に書いていきます。東大に入って気付いたことや周りの東大生の生態なども話す機会があればしようかなと。楽しみに待ってていただければ嬉しいです!

著者紹介

藤原 遥人(ふじわら はると)

学校で教えないことを高校生が中学生に教え、勉強の面白さを伝える塾、寺子屋ISHIZUEの創業者。開成高校卒業。現在東京大学文科一類に在学中。大学ではダンスサークルとジャズオーケストラのピアノ担当で活動中。

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