学力だけではダメ?受験における調査書(内申書)点の大切さ~公立高校の場合~

「高校受験の基礎知識」シリーズでは、「学校説明会には参加したほうがいいの?」「併願優遇って何?」など、中学生や保護者の皆さんが気になる項目について解説していきます。


志望校に合格するためには、その学校が求める基準をクリアしなければなりません。しかしその基準は、「学力検査」(入試)の得点だけではありません。

そこでVol.1では、「学力だけではダメ? 高校受験における調査書(内申書)点の大切さ」をテーマに、公立高校一般入試について解説します。

1. 高校入試の合否は、学力検査と調査書(内申書)で決まる(面接がある場合も)

高校入試は、学力検査(入試の得点)と調査書(中学校での学習評価)を合わせた得点で選抜されます。調査書とは、中学校での学習習熟度や生活態度についての情報をまとめたもの。

つまり「調査書点(通知表の成績)」や「出欠の記録」、「特別活動・部活動の記録」なども、合否を左右する大切な要素となるのです。調査書点は、通知表の成績を都道府県ごとに決められた計算方法で換算。成績以外では、生徒会や部活動、行事での活躍がプラス評価となり、出欠状況は皆勤・精勤がプラス評価、遅刻・欠席はマイナス評価となります。学力検査と調査書に加えて面接などを行う学校もあり、当日の試験でよい点を取れば合格できるとは限らないのです。

2. 都道府県ごとに大きく異なる入試のしくみ(選抜方法)

学力検査と調査書のどちらに重点をおくか、主要5教科と副教科の比重や調査書点の計算方法、対象となる時期、学区の有無などは、都道府県によって異なります。

東京都の場合

(原則)

学区 なし(都内のどこからでも志願できる)
調査書点の対象 3年次の成績
調査書点の計算方法 多くの学校の場合 主要5教科の合計+副教科の合計×2
その他 3科×1+6科×2などの場合あり
学力検査と調査書点の比重 学力検査7:調査書点3(6:4の学校もあり)
学力検査5教科の合計得点を700点に、調査書点を300点に換算した総合得点で選抜

副教科が2倍に計算されるので、美術・保健体育・音楽・技術家庭科も大切です。学校によっては面接を行う場合もあります。

ここに注目!

学校によっては独自の学力検査問題を作成

通常使われる都立高校共通問題ではなく、自校またはグループで学力検査問題を作成する学校があります。これらの学校では、英語・国語・数学については自校またはグループで作成した問題、理科・社会は都立高校共通問題で学力検査を実施。これらの学校を受験する場合は、共通問題の対策だけでなく、各校の傾向を知った上での対策が必要です。自校またはグループ作成問題は、各校のサイトで公開されています。

◆自校作成 各校が独自に作成

進学指導重点校
▶︎日比谷高校、戸山高校、青山高校、西高校、八王子東高校、立川高校、国立高校
進学重視型単位制高校
▶︎新宿高校、墨田川高校、国分寺高校

◆グループ作成 下記の5校で共同作成

中高一貫教育校 ▶︎白鷗高校、両国高校、富士高校、大泉高校、武蔵高校
※上記のほか、国際高校は英語のみ自校作成問題

神奈川県の場合

(原則)
学区 なし(県内のどこからでも志願できる)
※一部の市立高校は制限あり
調査書点の対象 2年次の成績、3年次の成績
調査書点の計算方法 2年次の9教科合計 + 3年次の9教科合計×2
学力検査と調査書点の比重 学力検査:調査書点:面接が10になるように各校で決定
※特色検査(実技または自己表現検査)を行う場合は最大5として別に取り扱う
調査書点では、2倍で計算される3年次の成績が重要となります。学力検査を重視する学校と調査書点を重視する学校があるので、志望校がどちらを重視するのか、早めに確認しておきましょう。神奈川県の公式サイトで、「公立高等学校入学者選抜選考基準」が公開されています。
ここに注目!
全校で面接を実施
学力検査:調査書点:面接の比率は学校ごとに決められていますが、例えば4:4:2の場合では面接が学力検査の半分に当たるなど、軽視できない比率です。出願時に「入学を希望する理由」、「中学校での様々な活動に対する意欲」、「自分のよいところ」などを書いた面接シートを提出し、このシートを参考にして面接が進められます。面接の評価は「共通の観点」のほかに「学校ごとの観点」もあり、「部活動への意欲」を重視する学校もあれば、重視しない学校もあります。志望校がどの観点を対象とするか、神奈川県の公式サイトなどで確認しておきましょう。

千葉県の場合

(原則)
学区 あり(全日制普通科は9学区、市立は別途制限あり)
※自分が住んでいる学区と、隣接する学区にある高校に志願できる
調査書点 1年次、2年次、3年次の成績
調査書点の計算方法 9教科の認定の全学年合計値 + 県が定めた評定合計(=95)ー 中学校評定合計平均値
学力検査と調査書点の比重 各学校で比率を決定
※各学校のサイト「入試情報」で「選抜・評価方法」を公開

中学校間の格差を調整するための数式(算式1)を取り入れているので、同じ調査書点でも中学校が違うと点数が変わってくることもあります。計算方法(算式1)は、千葉県の公式サイトで公開されいてる「入学者選抜要項」など確認できます。

埼玉県の場合

(原則)

学区 なし(県内のどこからでも志願できる)
調査書点の対象 1年次、2年次、3年次の成績
調査書点の計算方法 各学年の9教科合計(各学年の比率は学校ごとに異なる)
※多くの場合、1~2年次より3年次の比率が高くなる
学力検査と調査書点の比重 6:4~4:6の範囲で各学校が決定
※実技検査や面接を実施してその点数を加える場合もある

学力検査は1度ですが、選抜は2段階で行われます。第1次選抜で、募集定員の60%~80%の合格者を決定。それに漏れた受験生に対して第2次選抜が行われ、1次選抜とは調査書点の比率などが変わります。志望する学校が学力試験と調査書点のどちらを重視しているか、埼玉県の公式サイトなどで早めに確認しておきましょう。学校ごとに「選抜基準」が公開されています。

ここに注目!

学力検査と調査書の「加算方式」で選抜

学力検査の得点と調査書の得点(学習の記録、特別活動等の記録、その他の項目の記録)を合計し、合計点の高い受験者から合格とする「加算方式」を採用しています。「加算方式」では、調査書点が低くても入試当日の得点次第で合格する可能性が生じます。生徒会活動や部活動、英検や漢検などの資格も得点化されますので、どのような活動が加算されるか各学校の「選抜基準」で確認しておきましょう。

3. 日々、充実した中学校生活を送ることが一番

都道府県や学校によって選抜方法は異なりますが、調査書点が重要であることは共通しています。3学期の成績は年間の成績となるため3学期だけ頑張っても上げることは難しく、1学期からの積み重ねが大切です。また、部活動や生徒会活動を頑張ることがプラス評価につながり、遅刻や欠席が多いとマイナス評価となる場合もあります。日々の授業を大切にし、部活動や行事などにも積極的に参加して充実した中学校生活を送ることが、結果的に志望校合格へとつながるのです。

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