卒業生数も頭に入れて
東大や京大、早慶上智、関関同立はもとより、GMARCHと呼ばれる学習院、明治、立教、中央、法政の各大学などに合格者をどれくらい輩出したか。大学合格者数は、中高一貫校や高等学校を見極める上での大きな要素として、以前から注目の的でした。しかし、その数は単純に比較できるものなのでしょうか。
例えば、ある年に、A高校は難関大とされているX大学に100人の合格者を、B高校は同じく50人の合格者を出したとしましょう。100人>50人ですから、A高校の方が優秀だと即断してしまいがちです。しかし、その年の卒業生数が、A高校300人に対してB高校100人だったとしたらどうでしょう。卒業生数に占めるX大学合格者数の割合は、B高校の方が高くなります。
1人が3人?
また、特に同じ大学でいくつもの学部を受験しやすい私立大学の場合は、別の問題も出てきます。それは、1人の生徒が同じ大学の3学部を受験して合格した場合、合格者数は3になるということ。つまり、合格者数は延べ人数なのです。中には、数を稼ぎ、学校の評判をあげようと、優秀な生徒に多くの大学、多くの学部の受験を勧めたり、生徒の志望にそぐわない進路指導(他に行きたい大学があるのに無理やり東大を狙わせるなど)をする学校もあるようです。
数はわかりやすく、つい単純に比較したくなります。しかし、その辺りの条件も踏まえた上で見ていくようにしたいものです。
合格者数と進学者数
近年、合格者数ではなく、進学者数を公表する学校も少しずつ増えてきています。合格者数とは違い、進学者数は、実際にその大学に進学した人数のことですから、前述の「1人で3人」稼ぐということはあり得ません。わかりやすさという意味では、こちらの方に軍配が上がりますね。
大学入試が多様化する中で
一方で、大学入試自体が多様化しつつあるということもしっかり踏まえておきたいところです。高校2年生になったら志望校を定め、受験勉強に本腰を入れて……。一般入試を前提とした、受験生の保護者の中には、大学受験にそのようなイメージを持っている方も少なくないかもしれません。
ここ数年で状況は激変。そのようなイメージは、過去のものとなりつつあります。年内に合否が決まる総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜(指定校推薦を含む)によって大学進学を決める受験生が急増しているのです。中には、総合型選抜や学校推薦型選抜を利用することを前提とした教育を行ったり、コースを設けたりしている学校も出てきました。そのような環境では「受験のため」の勉強に縛られず、高校生のうちから興味が持てる分野をより深く学ぶことができ、大学進学後の学びにスムーズにつなげていくことができるのです。
さらに、グローバル化が前提となっている昨今、海外大学への進学を目指す受験生も増えていて、そこに注力する学校も同様に増えています。
このように見てくると「大学合格者数」は、たくさんある中の一つの指標であるに過ぎないことがわかってきます。志望校選びには、広い視野を持って臨みたいものですね。