聖学院と合同の「SDGsプロジェクト」を立ち上げ、防災エコ、環境エコの活動を行う。ボランティア活動や教科の授業でもSDGsの取り組みを実践。
防災エコ、環境エコに取り組む 聖学院と合同の「SDGsプロジェクト」
女子聖学院中学校・高等学校、聖学院中学校・高等学校、聖学院小学校を有する学校法人聖学院は、現在、3校のユネスコスクール加盟を申請し、1.防災・福祉、2.資源・環境、3.平和・国際を重点に置いた教育活動に取り組んでいる。また、この3つのカテゴリーに共通するSDGsにおいても、他者への貢献を理念とするキリスト教学校として以前から授業や行事に取り入れ、実践してきた。
2021年度には、聖学院と合同の「SDGsプロジェクト」を立ち上げ、ファーストステージの「防災エコプロジェクト」には、約100人の中高生が参加。このプロジェクトは「世界的な気候変動、災害に対して、自分たちのすべきことを実行する」「防災エコを軸に、自分たちのアクションを考え、実行する」「高齢者など、弱い立場の人を考えた“誰一人取り残さない防災”を実行する」ことをビジョンとし、メンバーたちは「災害脱出」「救助看護」「防災食・エコクッキング」「避難所生活・防災エコグッズ」などのチームに分かれ、課題解決に取り組んだ。12月には、防災時の調理や節水、ハザードマップを利用した脱出シミュレーションゲームなどを体験する「防災エコキャンプ」を中高生対象に実施。3月には聖学院小学校でも「防災エコキャンプ」を開催し、一部地域にも活動を広げたという。
2022年度は、セカンドステージとしてNPO法人「アースカンパニー」と連携し、「環境エコプロジェクト」に取り組む。また、SDGsの問題や解決策などを発表する「聖学院SDGsコンテスト」も実施している。
同校単体でのSDGsの取り組みでは、毎年「戦争と平和を考える」をテーマに全校生徒が感想文を作成したり、ボランティア活動としておむつや介助タオルを作り、老人ホームなどの施設に送っている。また「進路プログラム」の一環で、現代の社会課題をSDGsの視点で調べ、自分が作っていきたい社会をプレゼンテーションする学習を実施。また、理科の授業では生物多様性、社会科は食料問題、保健は障がいや防災というように全教科の教員がSDGsに関する学びを展開し、高1,高2のコミュニケーション英語では、SDGsに絡んだ題材のもとで、年に4回プレゼンテーションを実施。さらに近年は、夏期休暇の講座で、ザンビアの高校生とオンラインでつなぎ、貧困や衛生問題について話し合う取り組みも行っている。
生徒インタビュー
【聖学院、女子聖学院の「SDGsプロジェクト」112メンバー】
聖学院 高校2年 T.Nさん
聖学院 中学3年 Naさん
女子聖学院 高校2年 Niさん
女子聖学院 中学3年 Yaさん
「SDGsプロジェクト(1st 防災エコプロジェクト)」に参加した理由は?
中3の時、「パラスポーツプロジェクト」(2017年~2020年)という「SDGsプロジェクト」の前身にあたるプロジェクトに、先生や友だちに声をかけられて参加したのが最初のきっかけです。課題に取り組むことで、他者に貢献するという活動に興味を持ち、やってみたいと思いました。「パラスポーツプロジェクト」では、高齢者施設や特別支援学校などでボッチャを一緒にプレーしたりしました
Naさん
ずっとSDGsに興味がありました。それはなぜかと言うと、ぼくはお寿司が好きで、魚のことをいろいろ調べていくと、マイクロプラスチックの問題を知り、それが人間にも影響が及ぼしていること、さらにこのペースでゴミが増えていくと2050年の海は魚よりもゴミのほうが多くなることがわかりました。そんなに環境破壊が進んでいることにショックを受け、何とかしないといけないと思ったのが一番の理由です。
Yaさん
小学生の時に、SDGsを掘り下げた授業があって、自分が何気なくやっていた行為、たとえばペットボトルをリサイクルせずに捨てることが環境によくないと知り、そこから環境問題を身近に考えるようになりました。「SDGsプロジェクト」には、環境やSDGsに興味のある人が集まっています。意見を交換し合うことで意識が高まり、知識も増えると思い参加を決めました。
「防災エコプロジェクト」では、どのような活動をしましたか?
Naさん
ぼくたちのチームは「救助看護」に取り組みました。災害が起きると、怪我をする人が出てきます。そういう時に救命士などのプロがいなくても救助をする方法を考え、実際に小学生に体験してもらうというワークショップを作りました。
Niさん
私も「救助看護」を担当しました。道端に倒れている人がいたら、自分からどうやって声をかけるか、というところからスタートしました。実際、そのような状況に置かれた時、小学生たちに積極的に行動してもらいたいという気持ちで考えました。
Yaさん
私たちのチームのテーマは、水のろ過でした。災害時に支給される水だけでは足りない時もあり、雨水や川の水をろ過して、食器洗いや洗濯などに活用しよう、というのが目的です。小学校のワークショップでは、ろ過をしてきれいな水ができるまでの間、キッチンペーパーでマスクを作る体験もしました。
T.Nさん
ぼくのいた「災害脱出」チームは、災害が起きた時にどの避難ルートを使って逃げ出せばよいのか、というシミュレーションゲームを作りました。小学校のワークショップでは、「情報収集」チームと協力し、ハザードマップという情報が与えられた時の活用方法を楽しみながら学べるゲームを作りました。
「防災エコプロジェクト」に取り組んだ感想、また、自分が成長したことを教えてください。
Yaさん
小学生のワークショップでは、中高生が考えつかないような意見も出て、こちらも新しい気づきを得ました。また、小学生が「今度は自分で水のろ過をやってみよう」と言ってくれ、プロジェクトをやってよかったと思いました。
Naさん
小学生がぼくたちの話を興味津々に聞いて、質問もしてくれたり、活動の手ごたえを感じました。自分たちも救護看護の説明をするにあたって準備をするので、理解が深まり、お互いに防災を学ぶよい機会になったと思います。
T.Nさん
「防災エコプロジェクト」がきっかけとなって、2月に近隣の志茂四丁目会館で高齢者の方を対象にオンライン防災訓練をしました。実は、志茂四丁目は都内に5711ある地区の中で、危険度が6番目に高く、北区では最も危険なところです。会館からの避難場所は2か所あり、冬休みに避難ルートを動画で撮影し、避難の方法や気を付けたいポイントなどを説明しました。高齢者の方と話をするなかで新たな問題点も見え、勉強になりました。
Niさん
「防災エコプロジェクト」に参加したことで、初めて自分から英語のスピーチコンテストに出ようと手を挙げました。それまで私は人前で話すのが苦手だったのですが、プロジェクトの活動を通じて克服することができ、コンテストでも自分が成長したことをスピーチして、最優秀賞をとることができました。それだけプロジェクトの内容が濃かったのだと思います。
今年度の「環境エコプロジェクト」に対する意気込みを聞かせてください。
T.Nさん
これまではチームリーダーだったので、自分が企画してからみんなの意見を取り入れることが多かったけれど、今年は全体のリーダーとして全員の意見を聞き、全員が納得するにはどうしたらよいかを考えなくてはなりません。ファシリテーターを目指し、全員が心地よくプロジェクトを進めるようにしていきたいです。
Naさん
昨年は防災がテーマでしたが、災害が起きなければ、自分たちの活動の成果を見ることはできません。今回のテーマの環境は、身近な問題です。たとえば聖学院には自動販売機があって、みんなめちゃくちゃペットボトルを買っています。このプロジェクトを通じて削減ができたら、目に見える成果となります。学校全体を巻き込む活動をしていきたいです。
Niさん
昨年は高1だったので、先輩がプロジェクトを仕切り、私はワークショップの進行役などを務めました。今年はリーダーとして、みんなをしっかりまとめていきたいです。
Yaさん
今回はもともと興味があった環境がテーマなので、自分の身の回りでどんな問題が起きているのか、しっかり学びたいと思っています。昨年は、人の意見を聞くことの方が多かったけれど、今年はもっと自分の考えを伝え、周りの人と共有していきたいです。
女子聖学院中学校
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