身近な問題からSDGsに関する学びを深め、高校生になると地域、世界へと視野を広げていく。高校2年次には、課題解決型研修旅行でカンボジアを訪問。
地域貢献や社会貢献につながる学びや体験
東京立正中学校・高等学校では、生徒が自ら地域貢献や社会貢献活動につながる将来設計を描けるように、SDGsの学びや体験をカリキュラムに取り入れている。中学から入学した生徒は「イノベーションコース」での中高一貫教育となっており、高2で実施される「カンボジア研修」に向けて、身近な問題からSDGsに関する学びを深めていく。近年は、杉並区役所とのつながりにより実践的な活動も活発化。同校が「桜を楽しむ会」「スマホデジタルサポーター」「子ども食堂in東京立正」「福島県甘酒プロジェクト」など、高齢者の外出機会増加や高齢者と生徒との交流ができるイベントなどを実施していることを杉並区から評価され、「令和7年度健康づくり表彰」も受賞している。
「2024年度は中学3学年の縦割りでグループを作り、『杉並区へ取り組みの提案をしよう!』というテーマでSDGsの課題に取り組みました。2月には本校に杉並区役所・環境課の方をお招きして、全グループが自分たちの提案を発表しています。さらに次のステップとして、校外での活動につなげたいと考えていたところ、11月に開催された『すぎなみフェスタ』に参加させていただくことができました」(SDGs委員会代表/原子桂輔先生)
SDGsの視点で地域の住民と交流
「すぎなみフェスタ」は、世代を超えた地域住民の交流により生まれる賑わいを杉並の元気につなげていくことを目的にしたイベント。同校もブースを1つ担当し、生徒たちは地球温暖化に関する紙芝居と環境問題に関するクイズ・スタンプラリーで来場者と交流した。
「紙芝居はイラストもストーリーも、想像していたよりクオリティが高いものができました。小学生が多いと想定して、紙芝居には地球くんというキャラクターを登場させたり、クイズは平仮名の割合も考えたりしていました。前半はクイズの難易度を下げてやる気をそがないようにするなど、どうしたら小学生にも伝わるか多方面に気を配りながら作られています。当日の反応を見ると、子どもだけでなく大人も含めて、皆さん頷きながら聞いてくださり、生徒たちが知らせたいことは伝わっていたようです。次の展開としては、アクションを起こすにしても、周りにセッティングしてもらって動くのではなく、自分たちで企画して動いてほしいと考えています。小さなことであっても、今の中学生にどんなことができるか自分たちで考えることが大切なので、生徒たちの発想力に期待したいです。縦割りグループでの活動も、上級生の動きを見てきた経験から今年は昨年以上に中3のリーダーシップが発揮されて、進みが早かったと感じています。続けることによる経験の蓄積が成長に表われているので、縦割りでの活動も続けていきたいです」(SDGs委員会代表/原子桂輔先生)
生徒インタビュー
Sさん 中3(選んだテーマ:循環型社会)
Wさん 中3(選んだテーマ:循環型社会)
2月の発表では杉並区にどのような提案をしましたか?
Sさん
ゴミ問題への取り組みもしているのに、景品などで配られるクリアファイルやボールペンなどがプラスチックであることが気になっていました。配ったものはいずれ、プラゴミとして問題になってしまうからです。そこで僕たちのグループは、すぐに取り組めることとしてボールペンを鉛筆に、クリアファイルを紙のファイルに変えたらどうかと提案しました。区役所の方にも「いいアイデアだね」と言っていただけたので、とても嬉しかったです。
Wさん
私たちのグループは、校内でフリーマーケットを開く提案をしました。まだ使えるものはゴミとして出さずに、必要な人に使ってもらえる機会を作りたいと思ったからです。例えば東京立正の制服は、卒業したらもう着る機会がありません。それを新入生に使ってもらえるような流れを作ることができれば、ゴミを減らすことにもつながると思います。
「すぎなみフェスタ」に向けてどんな準備をしましたか?
Wさん
私たちは紙芝居を担当し、「地球が困ってる」というタイトルで物語を作り、地球くんというキャラクターを考えたり、イラストも描きました。物語は、公園でたけし君とはなちゃんが「最近地球が暑くなっている」と話しているところから始まります。その後、地球くんが「助けて!」と訴えかけてきて、温暖化の原因や対策などについて学べる内容です。
Sさん
僕たちはクイズ・スタンプラリーを担当しました。例えば、「冷蔵庫の冷凍室には、どのくらいの量を入れると省エネにつながるでしょう? 1.ゆったり 2.スカスカ 3.ぎゅうぎゅう」というようなクイズです。正解するとスタンプを押して、スタンプが集まると景品がもらえます。杉並区役所の方が用意した景品が紙のファイルだったので、自分たちの思いが通じたような気持ちになり感動しました。
「すぎなみフェスタ」に参加した感想を教えてください。
Wさん
紙芝居には、主に小さい子たちが参加してくれたので、伝えるってこんなに難しいんだと実感しました。まず、「地球温暖化」というワードを伝えるのもすごく難しかったです。当日、紙芝居を見た人の意見を聞くことで、提案するときに大事なことをいろいろ気づかされました。人と話すのはあまり得意ではなかったのですが、今回やってみて話すのは楽しいなと思えて、小さなことですが学びがたくさんあってよかったです。いろいろな人の意見を聞くことが大事なのだと、改めて感じました。
sさん
自分たちにとってはSDGsが身近なので、答えがすぐわかるものが多いのですが、小さい子や年配の方は「初めて聞いた」とか「答えがわからない」と言っていたことが印象に残っています。興味を持ってほしいという気持ちがものすごく湧いてきて、どうしたら興味を持ってもらえるか考えたりするのも楽しかったです。ある年配の方は、レジ袋が有料になったからマイバックを使っていたけれど、僕たちの話を聞いて環境にもいいと知ることができたと言っていました。1人の努力でもできることがあるのだと、課題を身近に感じていただけて嬉しかったです。幅広い年齢層から指摘や視点をもらうことで、これまで考えたことのない新しい気づきにもつながりました。
SDGsについてどのような思いがありますか?
Sさん
SDGsの目標を2030年までに達成するのは難しいと思いますが、目標を立てることは大切だと思います。日本は食品ロスも多いですし、それらを有効活用できないかなど、頭の柔らかい自分たちが考えて、親や知り合いに話したりするようにしていきたいです。
Wさん
食べ物の好き嫌いが多いので、SDGsについて学ぶ前は食べ残して廃棄することもありました。今は料理も少しするようになり、ニンジンの皮を捨てずにキャロットケーキに入れたり、ブロッコリーの茎も捨てずに使うなど、無駄を減らすようにしています。着られなくなった洋服も親戚にあげたり、逆にもらったりして、子どもでもできる簡単なことから始めて、無駄を減らすことができるようになりました。SDGsを学んでから変わったので、自分にとって大きなことです。
これからどのようにSDGsに取り組んでいきたいですか?
Sさん
僕はジャンク品を好んで買っています。例えば、スマホの画面が割れたらみんなは買い換えますが、少し割れたぐらいならまだ使えるものも多いです。買い換えのときも、画面が割れていても使えるものを買えばSDGsにもつながるし、新品より安く買えます。必要なものがあればまずリサイクルセンターに行ったり、友達からもらったりして、少しでも環境によい生活をしようと思うようになりました。物を長く使うことなどを、他の人たちにも広めていきたいです。
Wさん
学校で意見を出し合ったり、「すぎなみフェスタ」で幅広い年齢の方から意見もらったりする中で、自分では気づいてなかったことがたくさんありました。それらを自分の中に取り入れて、環境問題が悪化しないように新たにできることを見つけて取り組んでいきたいなと思っています。
同校の昨年の取り組み
身近な問題からSDGsに関する学びを深め、高校生になると地域、世界へと視野を広げていく。高校2年次には、課題解決型研修旅行でカンボジアを訪問。
地域貢献や社会貢献につながる学びや体験
東京立正中学校・高等学校では、生徒が自ら地域貢献や社[…]
東京立正中学校
〒166-0013 東京都杉並区堀ノ内2-41-15
TEL 03-3312-1111
MAP