ことばを通して自分と向き合い“伝える”を極める昭和女子大学附属昭和放送部

「NHK杯全国放送コンテスト」の全国大会常連校

放送部の甲子園とも称される「NHK杯全国放送コンテスト」において、毎年全国大会に出場している昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校放送部。過去3年間の成績だけを見ても2021、2022、2023年度と続けて中学校、高校それぞれ東京都の代表として全国大会に出場しているほか、2023年度の「第70回NHK杯全国高校放送コンテスト」においては3名が全国大会に出場、うち1名が朗読部門で準決勝に進出するなど全国大会常連校として知られている。

中学校、高校あわせて約2,000校、総勢20,000人ものエントリーがある本大会において、毎年実績を残しているその理由とは。日々の活動の様子や昭和女子放送部の特徴について部長のKさん(高2)、中学生のKさん(中3)、Eさん(中2)にそれぞれお話を伺った。

左からKさん(中3)、部長のKさん(高2)、Eさん(中2)

学校行事の司会や朗読劇、大会に向けた練習など多岐にわたる活動

K部長:「放送部の主な活動内容のひとつは、体育祭や昭和祭といった学校行事で司会を担当することです。体育祭では音楽を流したり実況アナウンスもしたりします。また昭和祭では中学生を中心に朗読劇の発表があり、みんなで練習することもあります。個人の活動としては大会に向けた練習がありまして、アナウンス部門と朗読部門に分かれてそれぞれ練習をしています」

放送部の活動は週4日、「外郎売(ういろううり)」の発声練習から始まるそうだ。「外郎売」と言えば、アナウンサーや俳優、声優などが発声練習に用いる作品として知られているが、古典でなおかつ難解な言い回しにも関わらず部員のほぼ全員が暗唱しているというから驚きだ。

K部長:「外郎売って10分くらいの物語なんですけど、中学生で入部したときからずっと練習しているのですべて暗記してしまいました。予選大会に出たときに他の学校の人から驚かれたことがあって、昭和の特徴なんだっていうことに気がつきました」

全国大会レベルの発表を間近で見られる恵まれた環境

発声練習が終わると顧問の五十嵐先生と1対1の練習、その後、部員全員の前で発表や朗読を行うそうだ。また一人ひとりの発表に対して全員で講評し合う場面もあるようで、たがいに学び合う環境が整っている。

K部長:「大会の審査項目をもとにした講評用紙がありまして、表現の仕方やテンポ、アクセントなどおたがいの発表について講評をします。これを中学1年生から繰り返し行っています」

さらに全国大会出場経験者が身近にいる点にも注目で、レベルの高いパフォーマンスを日々間近で見られるのはこの上ない恵まれた環境だろう。中学生と高校生が一緒に活動する昭和女子放送部の強みのひとつであり、憧れの先輩を目標に努力をしたり、切磋琢磨しながら高め合える環境が全国大会常連校としての礎になっているのだろう。

自分の声を通して誰かに伝える経験が喜びとなり放送部へ

2024年5月現在22名(高校生:10名、中学生:12名)が所属する昭和女子放送部だが、それぞれどのようなきっかけで入部を決意しているのだろうか。

K部長:「小学4年生の時に絵本の読み聞かせをする機会があって、担任の先生からクラスメイトの見本となってやって欲しいって言われたことがきっかけです。その頃から朗読に興味を持ち始めるようになって、放送部に入ろうって決めました」

Kさん(中3):「初等部で図書委員をやっていた時に全校に向けて放送する機会があって、そのときに楽しいって感じたのがきっかけです。入学してすぐにクラブ説明会があって、当時はまだコロナ禍だったのでZoomでしたけど、放送部の先輩がひときわ綺麗な声で、その声を聞いているだけで幸せな気分になったんです。神様みたいって♪ それで放送部に入部するのを決めました」

Eさん(中2):「私はお母さんが結婚式の司会の仕事をしていて、小さい頃に仕事場に連れて行ってもらったことがあります。そのときにお母さんの声がとっても綺麗で、みんなに褒められているのを見て良いなって思いました。その影響もあって小学生の時は放送委員に所属して、先生に上手だねって言われるのがすごく嬉しくて。強豪校って言われている昭和のことを知り入学しました」

それぞれきっかけは異なるものの、自分の声を通して誰かに伝える経験が喜びとなり、全国を目指す昭和女子放送部の活動に繋がっているようだ。

一人ひとり異なるアプローチで自分の課題に向き合い自分を磨く

3人の取材を通して気がつくこと、それは相手に伝わるよう話すスピードや内容、表現に気を配りながら会話をしているということ。それはきっと“伝える”ということを日々研究している放送部ならではのことばに対する感覚や相手への思いやりがあってのことだろう。

Eさん(中2):「五十嵐先生がいつも言っているのは、きれいな日本語を発音するっていうことだと思います。他の人に聞かれても心地良いようにって。私はいまアナウンス部門の練習をしているのですが、原稿のなかで何をもっとも伝えたいのか、自分のアナウンスを通して何を感じ取ってもらえるのか、そういったことを意識しながら練習しています」

「私は体力的なところが自信なくて、去年から腹筋をやるようになりました。寝る前に1時間くらいやっています。発声が良くなるように腹筋を始めた人が他にもいて、ちょっとずつ広めようと思っています」

K部長:「人の声って、性格とかも全部出るなって思っていて。大切なのは話し方を変えるんじゃなくて、自分の内面から良くなるように普段から意識して生活するようにしています」

三者三様異なるアプローチで自分の課題に向き合っている状況がよくわかり、スキルだけではなく内面も含めた自分磨きの地道な活動が行われているようだ。

Kさん(中3):「録音した自分の声を聞いた後にアナウンサーさんの声を聞いたりすると、なんで自分はこんなに下手なんだろうって思うことがあって。この人すごいなって思うところは参考にしたり、自分の録音を聞き直してまた絶望したり、でもまだまだ伸びしろしかないじゃんって立ち直ってみたり、そのサイクルを繰り返しています」

作品中の人物の人柄や心情を理解して行う朗読の奥深さ

アナウンス部門、朗読部門それぞれ基本的な練習は変わらないそうだが、K部長が取り組む朗読部門では大会の課題図書を繰り返し深読みする中で、登場人物の人柄や心情に触れ、自身も変化をしていくようだ。

K部長:「朗読をやるようになって普段から本を読む機会が増えたように感じます。大会の課題図書も読むんですけど、登場人物が素直で情熱的な人柄が多いんです。私が今読んでいるのは三浦綾子さんの『泥流地帯』や芥川龍之介さんの『雛』、あとちょっと前に映画化された凪良ゆうさんの『流浪の月』など。毎日のようにその本の同じ部分を朗読しているので、登場人物やその作品の影響を受けて自分も変わっているのかなと思います」

Kさん(中3):「私は中学1年生の時に聞いた、よしもとばななさんの『ムーンライト・シャドウ』がすごく好きでした」

K部長:「あの時は顧問の先生に感情を込めてって言われてもまったく声に感情が出なくて。作品の中で月影現象っていうのが出てくるんですけど、ちょっとでも登場人物の気持ちになれるようにと思って自宅近くにある川にひとりで行ったこともあります。絶対に見ることはできないんですけどね。笑」

知れば知るほどその活動内容は奥が深く、一人ひとりがことばを通して自分と向き合う“伝える”ことの探究者それが昭和女子放送部の魅力に違いない。

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