女子聖学院と合同で、資源・環境をテーマとしたエコプロジェクトに取り組む。学校内でもSDGsに関連する宿泊行事や探究学習などを実施している。
環境エコに取り組む女子聖学院と合同の「SDGsプロジェクト」
2021年度に女子聖学院と合同の「SDGsプロジェクト」を立ち上げ、初年度は「防災・共助」、2022年度からは「資源・環境」をテーマとしたエコ活動に取り組んでいる。メンバーは両校の中高生合わせて約80名。昨年は、NPO法人「アースカンパニー」のサポートを受けて地球環境の現状について学び、その後、聖学院両校でのCO2排出量を計測。水や電気の無駄遣いをしていないか、廃棄物の処理の仕方に問題はないかなどを調査。集めたデータをもとに「自分たちは環境のために何をすればよいか」を考え、プロジェクトにつなげた。
今年度は「聖学院をエコな学校にする」を全体の目標に設定し、「菜園」「フードロス」「無添加石鹸」「コンポスト」「プラスチックゴミ削減」「創エネ」の6つのチームに分かれて活動を実施。一般社団法人「ユースキャリア教育機構」がプロジェクトの運営などのサポートに入り、フードロスチームは荒川区のフードパントリーの施設、菜園チームは日本橋茅場町の屋上菜園を見学するなど、外部との連携も図った。11月の記念祭(文化祭)で活動の成果を発表し、3月の「SDGsデー」では聖学院小学校でワークショップも開催している
1.防災・福祉では、救命救急研修や「食とSDGs」に関する特別授業などを実施。中1の本校独自科目である理科探究では、3学期の授業テーマを「防災」とした学びを展開。日本列島の成り立ちから、地震や火山についてを学び、自宅と学校で地震などの災害に遭った場合を想定して防災バッグの中身を検討したり、避難所や行政の支援の確認、自宅や通学路中の地盤や浸水危険性などから、被災時の行動を考える。
2.資源・環境は、中2で蝶ヶ岳(長野県)を登山し、自然環境テント生活について探究学習をしたり、中3の糸魚川農村体験学習では、農業、林業に加え、2022年度から漁業体験も加え、第1次産業の現状について学ぶ。高1は、フィールドワークを通じて地方の課題と解決策を考えるソーシャルデザインキャンプを実施。
3.平和・国際では、高2が修学旅行で沖縄平和学習を行うなど、近年は、SDGsを軸とした宿泊行事を行っている。また、中3の理科の時間には毎年エネルギー問題に関する探究活動を実施するなど、各教科の授業や、海外研修、高校のゼミ活動においても、SDGsをテーマにした学習を行っている。
生徒インタビュー
【聖学院、女子聖学院の「SDGsプロジェクト」メンバー】
聖学院 高校1年 Oさん (菜園チーム リーダー)
聖学院 中学3年 Hさん (無添加石鹸チーム リーダー)
女子聖学院 高校2年 Nさん(無添加石鹸チーム リーダー)
女子聖学院 高校1年 Fさん (フードロスチーム リーダー)
「SDGsプロジェクト」に参加した理由は?
中2の時、環境を守るために何かやらなければいけないと思いつつも、どんなことをしたらよいのか、そもそもどんな問題があるのかもわかっていませんでした。環境について学び、自分ができることを探してみたいと思いました。
2年間ほど、コロナでいろいろな活動ができず、何かにチャレンジをしたかった。友だちに誘われてプロジェクトに参加したのですが、飽き性な性格なのに活動が楽しく、2年も続けています。がんばったことが成果として現れるのも、モチベーションになっています。
小5の授業でSDGsについて学び、興味を持ちました。でも、自分がどんなアクションを起こしたらよいのかわからず、このプロジェクトの存在を知って、「ここだ!」と思いました。1人でやるのではなく、みんなで意見を出し合って物事を進めるのがよいですね。
中3の時、気候変動が大きくニュースに取り上げられていました。関心はありましたが、自分だけで課題を考えたり行動するのは難しく「SDGsプロジェクト」は同じ思いを持った人が集まっているので「何かできるのではないか」と可能性を感じました。
チームで、どのような活動をしているのですか?
学校に緑を増やしてCO2を削減することを目標に、屋上菜園を作っています。昨年はカブ、今年はナス、トマト、バジルを栽培し、小学校のワークショップでは、ペットボトルを使ってプランターを作りました。最初は菜園作りがゴールでしたが、茅場町の屋上農園を見学して、自分たちだけで完結するのではなく、いろいろな人が集まれるコミュニティの庭にしたいと思うようになりました。来年は、よりビジョンを明確にして活動をしたいと思っています。
石鹸の多くは、アブラヤシから採れるパーム油を使っています。アブラヤシを伐採することが地球温暖化につながり、ぼくたちのチームはパーム油の使用を減らすことを広める活動をしています。昨年は試験的に、中2と高1のトイレに廃油で作った石鹸を置いてみました。余った石鹸は固形石鹸に作り替えて、記念祭のワークショップでクイズの景品にし、無添加石鹸をアピールしました。
女子も廃油石鹸を中3と高1のトイレに試験導入したのですが「匂いが臭くて嫌だ」という声があがりました。そこで、ラベンダーなどのエッセンシャルオイルを入れて固形石鹸にしたら、評判が良くなりました。昨年の活動では、石鹸にフォーカスして水質汚染問題からSDGsに取り組んだのですが、日本の水質管理の技術は優れていることがわかり、今年は森林の伐採問題へとテーマを変更しました。
私たちのチームは、「生徒の家庭から食品を集めて必要な人に寄付をしよう」という目標を立てました。しかし、寄付の仕方もわからなかったので、荒川区のフードパントリーの施設でお手伝いをさせてもらいました。昨年3月のSDGsデーでは、生ごみを減らしていかに美味しいカレーを作れるかというクッキングバトルを催し、身近にフードロスを感じてもらいました。11月の記念祭では食品の寄付を募り、それを荒川区の施設に届け、この3月にも食品を集める予定で、今度は自分たちの手で配布まで行おうと思っています。
プロジェクト活動を通じて、自分が成長したと思うことはありますか?
自分がリーダーになって周りを引っ張っていくというのは、初めての経験でした。責任感や忍耐力が付いたと思います。また、日本は水のろ過技術が世界でも進んでいることなど、SDGsに関する知識も身につきました。
プロジェクトは目的が明確なので、ゴールに向けて何をすればよいのか、筋道を立てて考えるようになりました。また、私たちのチームは外部の方にもお世話になっているので責任もあり、最後まで諦めずにやり通す根性なども培われたと思います。
私は「リーダーをやる?」と聞かれたら「嫌だ」と即答するタイプでした。今回、チームで3年続けているのは私だけで、リーダーをやらざるを得なくなってしまったんです。でも、務めてみたらメンバーを引っ張るコツやみんなが快く活動できるような伝え方がわかってきました。
前は人から指示を受けて行動していましたが、プロジェクトに入ってからは自分から動くようになり、リーダーシップも身についてきました。また、最後まで人の話を聞いたり、いかに活動の場が良くなるかを考えるようになりました。
プロジェクト活動で得たことを、今後どう活かしていきたいですか?
子ども食堂に関わることで、ひとり親家庭の事情など、実際に見たり体験しなければわからないことを知ることができました。たとえ自力で人を助けられなくても、知識を持つことは大事ですし、この先もボランティア活動に参加したいと思っています。
活動を通じて感じたのは「環境問題は誰かが解決してくれるから、自分はやらなくてもいい」と思っている人が、まだ多いということです。そんな考えを変えていきたいし、今後は地域や外部にも活動の範囲を広げたいです。
昔から人と関わったり人を笑わせたりするのが好きで、菜園チームのリーダーをすることで人をまとめることもできるようになってきました。これからもいろいろな人と菜園を作りながら、笑顔を分かち合いたいと思っています。
高校卒業後は考古学を学びたいと思っていたのですが、最近は環境系の学部学科への進路を考えています。面白いSDGsの活動をしている大学もあり、将来は環境に関わる仕事に挑戦してみたいです。
同校のその他の取り組み
女子聖学院と合同の「SDGsプロジェクト」を立ち上げ、防災エコ、環境エコに取り組む。糸魚川農村体験学習などSDGsを軸とした行事も実施。
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