第4回 「頭がいい」って何? -行動編-

前回の記事では頭がいいと言われる人に共通する特徴の中でも、特にその話し方に焦点を当ててお話ししました。まだ記事を読んでいない方はこちらを先にお読みください。
前回の大まかな内容をまとめると、頭のいい人は語彙力が高く話の順序が構造的で、みんなが気付かない切り口から話すことができ、その能力の根底には話す前に頭の中で情報を整理する力も関わってくるということでした。
第2回から今回の第4回では、僕自身の実体験を踏まえてより詳しく「頭がいい」とは何か洗い出していきます。この連載は、僕の高校生活や学外での活動を通して沢山の優秀な人たちに出会えた経験を元に僕個人から見た「頭のよさ」を彼らの共通点などから仮説し分析する内容です。「頭がいい」と言うと一見それが正義の様に聞こえてしまうこともありますが、あくまでも生活を豊かにする可能性のある一つのツールであって、全てを犠牲にしてまで手に入れるべきものではないと考えていることは先に伝えさせていただきます。
「我々の性格は、我々の行動の結果なり」というアリストテレスの言葉があるほど、行動は人の内面を形作る上で大きく関わってきます。同じ24時間を過ごす中で「頭がいい人」達は何を意識してどんな行動を取るのでしょうか。第4回の今回は、行動から伺える「頭がいい人」の特徴を具体的に検証していきます。

行動①:知識を行動に反映できる

学校の授業や本、ニュースなどで知識を入手しても、せっかく手に入れた知識をただの情報として保存しているだけになっていませんか。本来インプットした知識は行動という形でアウトプットできるはずなのですが、多くの人に理解してもらうために体系化された知識は余分な情報や解釈を削ぎ落として綺麗になっているがゆえに、自分個人に当てはめてその知識を活かすためには自分なりの“解釈力”が必要です。抽象的な内容を具体化して自分に落とし込むことで今まで自分の中になかった行動パターンを生み出せるので、自分のできる行動範囲が拡大します。

例えば世界史を勉強していると600年代に誕生した中国の唐という国は国を守るために節度使という軍部組織を設置しましたが、権力が暴走して節度使のリーダーが755年に安史の乱という反乱を起こし、唐を衰退させました。これは高校の教科書なら必ず載ってる内容ですが、テストで90点を取るためだけなら「何年に誰が安史の乱を起こしたか」を暗記するだけで十分です。しかしそれだけでは勿体ないのでこの知識を解釈したらどうなるでしょうか。例えば、武力装置という諸刃の剣を都から離れた地方に置いたら最初は従順だとしても将来謀反を起こすかもしれない。自分を滅ぼす可能性がある程大きい権力を他人に与える時にはその人を自分の側に置いた方が良さそうだと考えて、会社の社長であれば大事な資料を見せる時には自分と相手の一対一の時でしか見せないことにしたり、フォロワー100万人のインスタグラマーは自分のアカウントの共同管理権を渡す時には例え事務所の相手だとしても信頼関係を築けるまでは渡さないことにする、などと自分の行動を決めたりその根拠を考えることができます。

学んだ知識はいつ使えるタイミングが来るか分かりませんから、学んだ内容をその内容のままでほったらかしにせずに自分だけの価値をそこに上乗せしつつ、いつそれが使えるか常にアンテナを張って生活する必要があります。僕がオンライン塾を運営していた時、英語の授業をする担当だった同級生の子は、学校の授業でつまらない授業があった時にも時間を無駄にせずに、なぜその先生の授業は生徒の関心を惹かないのか、自分ならどうやってその授業を面白くするのか考えてその気付きを自分の授業に反映させる日課を送っていたそうです。時間を無駄にせずに入ってくる情報に解釈を与えて、それを活かせる場で存分に活かす姿勢は、「頭がいい人」の行動そのものでした。

このように解釈力とそれを自分の生活に落とし込む行動力があれば、同じ1日を過ごしていても毎日違う気付きや行動を生み出すことができ、そんな人からすれば「勉強」はめちゃくちゃ面白くて価値のあるものなのだと思います。

行動②:周りを見て自分のとるべき行動が分かる

例えば会話する時、同じ集団の中で喋る人が多かったら聞き手にまわったり、逆に聞く人が多かったら喋る側にまわったり、いじられてる人が少し傷ついていそうな片鱗を見せたら話題を変えたり、一人だけに話題が集中して他の人が楽しめてなさそうだったら話題を別の人に振ったり。例えば小さい子たちの面倒を見る時、一人の子がものを独占して周りの子が困っていたらそのアイテムを使わずにできる楽しい遊びを考えたり、喧嘩が始まれば少数vs多数になって少数側が傷つかないように話をうまく展開させたり、喧嘩はないけどいまいち盛り上がらなければ思い切って一発ギャグをしたり。その場の状況に合わせた臨機応変なアドリブ対応は、周りを注意深く観察した上で、今足りてないものと自分ができることとが合致する行動を探し出せる人にしかできません。その中でも更にレベルが高いのは、自分が間接的にその場を支配しながらもそのことを周りに気付かせない影のMC的な存在として上手に場を回すこと。これは影のMC本人がいる時といない時の場の雰囲気の違いを体感することでしか気付けないほど高尚なものです。

別の言葉で言い換えれば「空気が読める」とか「気を遣える」とも似ていますが、集団的圧力に耐えかねて自分の本心を抑えてまで周りに迎合してその一部になるというニュアンスはなく、周りの不足を自分が補うことでより良い集団に昇華させるという積極的なニュアンスにおいて似ています。

また、相手の言動は本人の意図の一部しか表現できていなかったり、意図と真逆の伝わり方がされる言動を無意識にとってしまうこともあります。この言動と意図の差をできる限り読み取って正しい観察をするためには知識や人間関係の経験が必要ですし、読み取った上で自分がどの行動に出るかを考える時にも何を是として何を非とするのか判断する軸が備わっている必要があり、一筋縄にはいきません。例えばAさんがBさんのことを強く非難しているように見えたとしても、AさんはBさんには優しく諭すより敢えて強めに指摘した方が心に響くと分かった上での言動かもしれません。そこまで読み取れずに目の前の視覚情報だけで考えてしまえば、BさんがかわいそうだからBさんの味方についてあげなくてはいけないと先走って下手に介入し、Bさんの受け取り方によっては強い指摘を受けたAさんの愛に気付けずに二人の間に溝を作り出してしまう可能性もあります。かと言って周りのCさんとDさんから見たら単にAさんが怒りの捌け口としてBさんを使っているだけに見えている可能性もあるため、自分が取るべき行動の最適解は、AさんとBさんを二人きりにした上でCさんとDさんにはAさんの意図はこうかもしれないから今は見守っておこうと、2人に心配をかけないように説明をしておくことかもしれません。数多ある自分の行動パターンの中で最適解を取るためには、目の前の視覚情報以上の他人の意図を察するための知識や経験を積むことと同時に、自分が取れる行動パターンそのものを増やすことが大切なのだと思います。

まとめ:解釈力が「頭のいい」行動を生む

知識を行動に反映し、周りを見て自分のとるべき行動を考えるのは、どちらも無色透明な客観情報に自分なりの色を着けることで行動パターンを決定するという同じ過程を踏んで行われます。自分なりの色を着けるとは自分独自の解釈を与えることであり、解釈の仕方が違えばそれに影響されて発動する行動パターンも変わるので、「どう解釈するか」が行動に深く関わってきます。「頭がいい人」は抽象→具体の捉え方が得意だったり、様々な背景知識を持っているので深く正確な解釈が行えますが、この部分は経験によっても代替できるため“考え方”や“話し方”に比べると「勉強ができる」ことの前提条件は必ずしも必須ではありません。

今回は「頭がいい人」はどんな行動を取るのかをテーマに、彼らの特徴を具体的に分析してみました。これまで3回に渡って彼らの特徴を暴いてきましたが、次回から後半戦が始まります。次回は「頭がいい人」はどうやって生まれるのかをテーマに、後天的な特質である「頭のよさ」を作り出す根本的な習慣や努力に注目します。

著者紹介

藤原 遥人(ふじわら はると)

学校で教えないことを高校生が中学生に教え、勉強の面白さを伝える塾、寺子屋ISHIZUEの創業者。現在開成高校3年生。受験指導ではない、自分で考えて人に伝える力を育てる塾の運営経験から「誰かに何かを教える」教育の難しさを実感し、自らの学を深める大学生活をおくるため受験勉強に奮闘中。趣味はピアノとサッカーとダンス。

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