前回の記事では中学生がなぜゲームばかりしてしまうのかを解説しました。まだ記事を読んでいない方はこちらを先にお読みください。
大人になってから勉強しておけばよかったと後悔し、自分の子供にはそうなって欲しくないから勉強を頑張って欲しい。でもその思いがなかなか伝わらず、いつになったら勉強と向き合ってくれるのか。こんな家庭がほとんどだと思います。50%以上の中学生が勉強を嫌いだと答えた調査報告もあります。今回の記事ではなぜ今の日本の中学生が勉強の面白さに気付けないのか、前回よりもう一歩進んで解説します。
そもそも「勉強の面白さ」とは?
未知が既知になる快感
無意識のうちに気になっていた何かの本質に気付いて理解できた時、人は快感を覚えます。当たり前のように毎年雨が降りますが、なぜ雨が降るのか理解できたら次の日から雨が降る度に「あっ上昇した水蒸気が氷に変化して雲になっていたのが落ちてきて水になったのがこの雨なんだな!」と少し離れた視点で観察できて気持ちいいですよね。
知らなかったことを知ると今までなんとなく見ていた現象が確実に起こる現象として見えるので世界の見方が変わり、達観的な視点を得られるので快感を覚えます。ここで重要なのが、その情報が「無意識のうちに気になっていた何か」であることです。雨のように身近なものならちょっと気になりますが、いきなりインドの歴史をされても興味は湧きません。
成長を感じる快感
未知を既知にする快感を積み重ねていくと、今の自分を見て過去の自分よりも成長できたと実感できます。この時間の蓄積による自己成長が快感に繋がって、また次の成長を実感するために頑張ろうと思えます。大人でも去年より喋るのがうまくなったり、去年よりモテるようになったり、営業成績が伸びたりしたら嬉しくてまた頑張ろうと思えますよね。模試で成績が伸びてモチベーションが上がるのは、この成長が数値として明確に見えるようになるからです。注意すべきは、この快感はすでにそんな快感を得られている子が勉強を継続することで現れてくるという点です。
「勉強の面白さに気付く」とはどういうことか
上に書いた二つの快感を感じられれば勉強を面白いと感じられます。無意識のうちに興味のあったものを長期的に学ぶことで快感を得られるので、勉強の面白さとは「どれだけ興味があるか」と「どれだけ継続できるか」の掛け算で決まります。どちらかが0だと勉強の面白さにも気付けないし成果も出ません。この2つの値を上げれば上げる程、子供は勉強に対して面白いと感じ、途中で辞めずに継続することができます。そしてこの二つの変数は連動していて、興味があるものは継続して学び、継続して学んでいるものには興味が沸くため相乗効果で伸びていきます。ここからはこの掛け算の変数それぞれを掘り下げていきます。
どれだけ興味があるか
興味があるものならそれについての新しい情報が入っても拒絶反応は起きません。小学時代クラスにいたある鉄道好きの男の子は、休み時間も授業中も給食の時間も地図や路線図をじっと眺めていました。周りの子からは何が面白いのか全く分からないと理解されていませんでしたが、その子にとっては面白いらしく、新しい線路ができたニュースが入った時には誰よりも早く情報を仕入れて楽しそうに話していました。しかしサッカーの話になるとその子は興味を示さずまた一人で地図を眺めに自分の席に戻ってしまいます。今の時代、何か一つハマるものが見つかれば、子供達は放っておいても勝手にネットで調べて自分の好奇心を満たしていきます。ほとんどの子供達にとって、その興味の対象がゲームなのです。
どれだけ継続できるか
興味があったとしても途中で飽きることはあります。やる気を出して取り組み出した勉強も隣にスマホがあればYouTubeを開いてしまうし、テスト期間が過ぎれば勉強なんてしません。しかし知識やスキルの習得は一朝一夕にはできません。数ヶ月でピアノが弾けるようにならないように、得た知識を使って慣れることで成績が伸びます。続ける習慣があれば途中からは「勉強しなさい」なんて言わなくても自分から勉強をやり出すのです。
これを踏まえるとなぜ勉強の面白さに気付けないのかが浮き彫りになってきます。答えは簡単です。この2つの要素を引き上げる仕組みができていないからなのです。
なぜ勉強の面白さに気付けないのか
学校の教科勉強に興味がないから
生まれてからずっと日本にいる我々に、いきなり教科書を渡されて英語を学びなさいと言われたらどうですか? 総理大臣が何かもわからずにいきなり歴史を学びなさいと言われたらどうですか? 勉強の本来の目的は生徒それぞれの興味を掘り下げて探求することですが、いつやる気を出すか分からない学生のモチベーションが高まるのを待っているわけにもいかないので、国は全生徒一律で同じカリキュラムを学ばせることで国民の学力をあげています。みんなと同じペースについていけない子がいるのは当然です。自分の興味が何か分からない状態でみんなと同じフィールドに入れられ、成績を取らないと親に怒らえる環境で勉強に興味を持つなんてほとんど不可能です。勉強を面白いと感じられる子はごく一部なのです。
継続できないから
成果を感じられないものは続けられません。テストで成果を上げるためにはその教科を根本から理解して積み上げなければいけませんが、一度授業に置いていかれたら立ち戻るのに相当の苦労を要します。根本を理解している子は点数が伸びるので継続するやる気も起き、表面しか理解していない子は点数が伸びず継続するやる気が起きません。偏差値が高い子がどんどん成績が伸び、低い子がどんどん成績が下がるのはこのためです。
まとめ:興味×継続=勉強をしていて得られる快感
勉強に限らず全てに当てはまることですが、興味があることを掘り下げるのは面白く、継続して成果が上がるともっとやりたくなります。この二つの変数は相関関係にありますが、問題はほとんどの子供たちにとって学校の勉強が興味の湧くものではなく、継続しやすい仕組みになっていないことです。前回の記事と関連しますが、子供達は勉強からゲームに逃げがちなのはゲームが子供たちの興味が湧かせてすぐに成果が上がるものだからです。
今回は勉強の面白さの定義について話したので少し抽象的になってしまいまいたが、次回の記事ではこの原理に基づきながら中学生の親として何をしてあげればいいのか具体策と共にお話しします。お楽しみに!
前回の記事では、中学生がなぜ勉強の面白さに気付けないのかというテーマで解説しました。まだ記事を読んでいない方はこちらを先にお読みください。 前回の大まかな内容をまとめると、そもそも「勉強の面白さ」とは知らなかったことを知れる喜びと自分の成[…]
著者紹介
藤原 遥人(ふじわら はると)
学校で教えないことを高校生が中学生に教える塾、寺子屋ISHIZUEの代表。現在開成高校2年生。年齢差2.3歳の先生が語りかけ、生徒とともに成長していくことで大人がいくら伝えても届かない「勉強の面白さ」をもっと沢山の日本人中学生に知って欲しいとう思いから2020年冬に創業。最近は「僕たちはなぜ勉強をするのか」というテーマでのイベント登壇など、自身の受験勉強と向き合いながら「中高生にとっての勉強の意義」を追究。趣味はピアノとサッカーとダンス。