「中学受験の基礎知識」シリーズでは、「私立と公立の違いは?」「偏差値って何?」など、小学生のお子さんを持つ保護者の皆さんが気になる項目について解説していきます。
Vol.9では「公立中高一貫校の適性検査とは?」をテーマに、中学受験について解説します。
「受験」ではなく「受検」
公立中高一貫校の入学者選抜に関しては、「学校教育法施行規則」の規定により、「入学者選抜に当たって学力検査を行わないものとする」と定められています。学力検査を行わない理由は、偏差値による学校間格差を助長することのないように、そして受験競争の低年齢化を招くことのないように配慮するためでした。学力検査を行わず、学校の個性や特色に応じて、多様で柔軟な方法を適切に組み合わせた入学者選抜方法を検討した結果、適性検査が行われるようになったのです。
適性検査の出題は教科横断的なものが多く、教科ごとの学力を判定するための学力検査とは異なるという考え方のもとで実施されています。しかし実際は、適性検査が学力判定の有力手段として機能していることは否定できないでしょう。適性検査の対策を指導する進学塾も、数多く存在しています。公立中高一貫校に入学した子どもたちの大半は、そのような塾で受検のための技術を学んでいるのが現状です。
適性検査で測られる力とは?
適性検査は、一般的な私立の中学入試と違い、小学校で習わない知識や特別な解法が必要な問題は出題されません。長い文章や資料を読み取り、そこから必要な情報を引き出し、自分の考えを的確にまとめる力などをみる問題です。算数・国語・社会などを組みあわせた教科横断型の問題や、深い思考力を求める問題が多く見られます。都立の中高一貫校の場合、適性検査ⅠとⅡ、または適性検査ⅠとⅡとⅢを行う学校があります。平成27年度から、都立の中高一貫校による共同作成問題と各校独自問題との組合せにより実施されるようになりました。
適性検査の問題は、都道府県ごとに大きく異なります。例えば、東京都の適性検査Ⅲは、身近な事象を通して、分析力や思考力、判断力などを生かして、課題を総合的に解決できる力をみる問題です。一方、千葉市立稲毛国際中等教育学校の適性検査Ⅲは、小学校の外国語活動や外国語科の授業で学習した内容を基に思考・判断する力と、自分の思いや考えが明確になるように、文章の構成や展開を考え、筋道の通った日本語の文章を書く力をみる問題になっています。
※千葉市立稲毛高等学校と附属中学校は中等教育学校に移行し、「千葉市立稲毛国際中等教育学校」と名称が変わります。また、令和4年度から2次検査で適性検査Ⅲが加わります。
大阪市立咲くやこの花中学校では、「ものづくり(理工)」「スポーツ」「言語」「芸術(美術・デザイン)」の4分野それぞれで生徒を募集。適性検査Ⅰは共通問題、適性検査Ⅱは「ものづくり(理工)」、「スポーツ」、「言語」、「芸術(美術・デザイン)」、それぞれの分野に関する才能の芽生え等をみる問題となっています。例えば、令和3年度の「スポーツ」分野の適性検査Ⅱは「50m走」と「立ち幅とび」を実施。「芸術(美術・デザイン)」分野の適性検査Ⅱは、「自分がお年寄りと昔からの遊びをしている様子」と「何かの遊びをイメージさせる旗のデザイン」を色鉛筆で描く問題が出題されました。
※咲くやこの花中学校・高等学校は、令和4年度から大阪府に移管するため大阪府内全域から受検できるようになります。
大学受験につながる力
適性検査Ⅱでは、太郎さんと花子さん、時には先生などが加わった2~3人があるテーマについて話している会話文を読んで、数理的な問題に答える形式がよく見られます。このような問題を解くためには、日常生活や社会の出来事を、数理的な問題としてとらえて答えを導く力が必要です。また、適性検査Ⅰでは、2つの文章を読み、それについて自分の考えを400文字から500文字程度で書くという問題もあります。そのような問題では、ある程度の長さがある文章を読み取ったうえで、自分の考えをアウトプットする力が求められます。
大学入試改革により、令和3年度から大学入学共通テストがスタートしました。「知識・技能」を問うことに偏重していたこれまでの大学入試から、「思考力・判断力・表現力」や「主体性・多様性・協働性」を測る入試へと変わることが大きなテーマとなっています。令和3年度は、記述式問題の導入は見送られたものの、数学ⅠAで太郎さんと花子さんの会話に沿った出題があるなど、適性検査と形式が似ている問題も見られました。適性検査で求められる力は、新しい大学入試で求められている力と重なっているのです。自分の意見をアウトプットする練習は、やればやるほど力がつきます。小学生のうちにそのような練習に慣れておくことは、大学入試に向けた勉強をするときにも役立つでしょう。
学力試験ではないが対策が必要
適性検査とは別に、作文を課したり、集団活動の中で評価する学校もあります。例えば、神奈川県立相模原中等教育学校と平塚中等教育学校では、「グループ活動」による検査を実施しています(令和3年度、4年度は中止)。集団の中で人間関係を構築していく基礎的な力と、中等教育学校で学ぼうとする意欲や目的意識をみることが目的です。8人程度のグループに分かれ、与えられた課題について自分の意見をまとめた後、グループで話し合いを行います。このようなタイプの検査は、初対面のメンバーと話し合いを行う経験を重ねておかなければ、思うように力を発揮できないかもしれません。
受験競争の低年齢化を招くことのないように、公立中高一貫校は学力検査を行わないことになっています。しかし、公立中高一貫校に特化した塾に通っても、合格するのが難しいのが現実です。
次回は、公立中高一貫校を受検する場合の併願校について解説します。
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