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【連載:数学と言葉】第4回 論理の言葉使いその2「すべての」と「否定」

否定の多用

それとは別に日常での否定の使い方で気を付けなければならないことは「否定の多用」です。これは数学の言葉使いではなく日本語の言葉使いです。

「できないわけではない」というような二重否定──強い肯定──はまだいいとして、次のような使い方は問題があります。

「早く起きないと約束に間に合いません」

これは単純にわかりにくいということで、肯定文で言えばすむ話です。

「早く起きれば約束に間に合います」

次の例も同様です。パソコンで表示されるダイアログの選択肢には「キャンセル」「OK」が使われます。次のような表示を考えてみましょう。

ダイアログ「編集内容をキャンセルしてもいいですか?」
選択肢「キャンセル」「OK」

「OK」を選んだ場合には、「『編集内容をキャンセルする』が実行」すなわち破棄されることを意味します。
「キャンセル」を選んだ場合には、「『編集内容をキャンセルする』をキャンセルする」となります。この二重否定は分かりにくいです。編集内容を破棄しないという意味です。

キャンセルが二度使われることが問題です。キャンセルという英語も日本人にはひっかかります。

ダイアログ「編集内容を破棄してもいいですか?」
選択肢「破棄しない」「破棄」

といったわかりやすい文が考えられます。

否定の多用で問題になるのは次のような文です。

「そのようなことができないことはないといえなくもない」

ほとんど意味が分からない日本語の文章です。否定を多用しわざと意味を不明瞭・不明確にする意図(場合によっては悪意)が伝わります。

以上のように「すべての(みんな)」「否定」は日常でもよく使う言葉ですが、安易な使い方には注意しなければなりません。数学の言葉使いのトレーニングが有効であることを説明してみました。

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執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)

1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
桜井進WebSite

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