【連載:数学と言葉】第2回 数の言葉使いその2 数と数字のちがい説明できますか

数の発見

1という数自体はリンゴ、鉛筆、物差し、砂糖、時間そのものではありません。数は考え方です。その数という考え方を表すための象徴・記号・形が数字なのです。リンゴと鉛筆をじっとながめる時、その思考の中に現れるのが1という数です。目に見える「数字」目に見えない「数」は私たちの心の中にあるといえます。人類が見えない1という数を発見するのに長い時間が必要でした。数十万年の人類の歴史の中で数が発見されたのがほんの二千年前にすぎません。この見えない「数」の世界の大冒険こそ数学なのです。

社会に必用な数値

物の量を測るときに必要になるのが「数」と「単位」です。リンゴ1個、鉛筆1本、物差し1m、砂糖1kg、時間1秒さらには1番目というばらばらな量に共通するのが「1」という数です。1という数のおかげで物の個数や量、順序を表すことができます。数は何にでも使うことができるとても便利な考え方なのです。数+単位で表されるのが「数値」です。

見える数字、見えない数

数と数字と数値の区別は思いのほか簡単ではありません。ましてや意識して使い分けることはさらに難しいです。「数字」が3つの中で飛び抜けて使われるのは致し方ないことです。

その理由は簡単。数字は目に見える形・モノだからです。オフィスで配られるモノはコピー用紙であり、そこに印刷されるのが文字や数字です。プリンター用紙にはインクがのって数字ができあがります。テレビの画面に映し出される数字も見える映像です。

数とは概念です。したがって目で見ようとしても見ることができません。重さもなければ色の臭いもありません。図形についても同じことがいえます。直線とは、両端が無限に延びて端点をもたず、長さだけがあり幅がない幾何学的対象(図形)です。そして点とは、大きさをもたず位置だけをもつ存在です。すなわち、直線も点も概念です。

最終的に目に見える「数字」だけを見ていては単なる動物です。私たち人間が持つ力、それは見えないものを見る力です。
リンゴとミカンというまったく独立な存在の背後に共通の1という数をみつけるまでに、わたしたち人類は数十万年におよぶ長い時間を必要としました。

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