和洋九段女子中学校スペシャルレポート12/生徒同士で学び合って成長していくPBL型授業の魅力

 

最優秀作品に選ばれた“未来の空港”アイデア

 仮説を立てて、実験、検証する理系の学びを実践

中3のときに「HANEDA EXPO 第1回こども未来ピッチ」に応募して、最優秀作品に選ばれたグループの3人に話を聞いた。

 

和洋九段
▶︎写真左より:Eさん、Hさん、Oさん
Eさん(高1 グローバルコース)
Hさん(高1 本科コース)
Oさん(高1 グローバルコース)
「HANEDA EXPO 第1回こども未来ピッチ」
テーマ:「こども達が思い描く“未来の空港”アイデア」
制作者:和洋九段女子中学校 グループ名:rukako
作品名:「イライラ脱出、ワクワクトンネル!」

 

――「こども未来ピッチ」に応募した経緯について教えてください。

Eさん PBL型授業で、外部コンテストへの挑戦に関するアンケートがあって、その後にこの3人が集められました。この3人は、挑戦してみたいという気持ちが前面に出ていたのかもしれません(笑)。

Hさん 3人で集まってからコンテストを探してみて、「こども未来ピッチ」を見たときに「楽しそうだね」とみんなの意見が一致したので挑戦してみることにしました。

Oさん 他のコンテストもありましたが、未来の羽田空港について考えるのが楽しそうだなと思ったのです。特に私は、空港や飛行機が好きなのでいいなと思いました。

 

――テーマについてはどのように考えましたか?

Eさん 主催者から出ていたのは、「“未来の空港”アイデア」という大きなテーマのみでした。

Hさん まず、それぞれで案を出して、1人ずつプレゼンをして、PBLの授業みたいな流れで提案しました。

Oさん その中で、Eさんの案がいいなということになり、そこに私とHさんの案も加えて1つにして、「イライラ脱出、ワクワクトンネル!」という作品を提出しました。

 

和洋九段

 

――「イライラ脱出、ワクワクトンネル!」は、どのようなアイデアですか?

Eさん まず、何が問題か考えてみて、保安検査場の待ち時間が長いことをなんとかしようと思いました。保安検査場をトンネル型にして、今ある保安検査場のストレスをなくそうと考えたのです。今は荷物をトレーに乗せてX線検査に通して、人は金属探知機を通ったりして手間がかかりますが、荷物を持ったまま大きなトンネルを通ることで人も荷物も一度に検査ができるというアイデアです。トンネルの上にはAIセンサーを設置して、今と安全性も変わらずに、効率よくできるようにしたいと思いました。

 

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Hさん 空港はいろいろな国の人が集まるので、トンネル内にシンガポールならマーライオン、フランスならエッフェル塔というように、プロジェクターで各国のイメージ画像を映し出すという私のアイデアもプラスしました。

Oさん 私は、トンネルを出た後のアイデアを出しました。空港は広いので、迷いやすいことも課題の1つです。トンネルを出たところにAIロボットを設置して、わからないことがあればロボットに聞いて案内してもらいます。スタッフを配意すると、人材にも限りがあるし、人件費もかかってしまうので、ロボットにすることで人手不足対策と人件費の節約にもなると考えました。ロボットは丸くてかわいい癒し系にすることで、お客さんが声をかけやすくなると思います。

 

――どのくらいの期間、取り組みましたか?

Oさん 本番が11月中旬だったのですが、10月ぐらいに案を出し始めたのであまり時間がなかったです。案を出すのは3日ぐらいで終わったのですが、プレゼンの練習が大変でした。

Eさん 本番までは、ほぼ毎日放課後に集まって、部活も休んで取り組みました。

Hさん 持ち時間が3分だったのですが、台本を作って発表してみたら長くなってしまいました。原稿を見ずに、自分たちの言葉で発表しようと思っていたので、原稿を頭に入れるのも大変でしたが、なんとか時間内に収めることができました。

 

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Oさん 原稿を覚えるだけでなく、身振りや手振り、アイコンタクトなど、いろいろなことに気を付けなければならなかったので、完成するまでにはかなり時間がかかりました。

Eさん 外部コンテストは初めてでしたが、中学に入ってからものすごい数の授業をPBL型でやってきて、グループ内で発表し、クラスの代表として発表したりする経験を積み重ねてきたので、意見やアイデアを短い時間で考える力もついていたのだと感じました。みんなにわかりやすく発表する力や人の目を見て発表するなど、基本的なことから学べていたので、コンテストに挑戦できる力も身についていたのだと思います。

 

外部コンテストを経験して得た自信と目標

中3で外部コンテストを経験して現在高1となった3人に、今後の目標などを聞いた。

――今回のコンテストを経験して、どんなことを学びましたか?

Oさん コンテストは全国の小中学生が対象だったのですが、事前選考を通った5組のうち2組が和洋九段のグループで、残りの3組が小学生のグループでした。小学生は明るくて元気で、見ていた人がみんな笑顔になるようなかわいらしさがあったのですが、とても堂々としていました。もう1組は、同じ学年のグループです。身振り手振りだけでなく、壇上で歩いたり、語りかけたりして、とても引き込まれる発表だったので、すごいなと思いました。私もあんな風に語りかけるようなプレゼンをしてみたいと思うなど、学ぶことが多かったです。

 

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Hさん 私はプレゼンをするのが好きですが、人前で話すのはあまり得意ではありません。他の人は堂々として、生き生きと発表しているので、自分もそうなるにはどうしたらいいか考えてみました。緊張しないように、自分をリラックスさせるコツとして、自分で「大丈夫、大丈夫」と言い聞かして落ち着かせる方法を見つけたので、これから使っていきたいです。

Eさん 中学生の頃は、社会の問題について気づいたことがあっても、どうやって変えていけばいいか、何をどうやって行動に移したら変えられるか、具体的にどうしたらいいかわかりませんでした。今まではPBLで校内の友達や先生に向けて発表していましたが、今回、外部のコンテストに3人で協力して出てみて、自分ごととして考えられるようになったと思います。緊張しましたが、たくさんの人に認めてもらえたので自信にもなりました。

 

――PBL型授業のどんなところが好きですか?

Eさん PBLは楽しいです。PBLだと自分1人の考えで終わらず、友達同士だからこそ意見も言いやすくて、いい意見や確かにそうだと思える意見が出て、視点が広がるところがいいなと思います。

Hさん PBL型授業は、みんなと一緒に考えられて、自分だけの考えだったものをみんなとシェアできるし、他の人の意見も聞けるのがいいなと思います。

Oさん 私は自分の考えを言葉にしたり、書くのが好きです。PBLは、私の好きなことを体現している授業なので楽しいです。

 

――これからどのように活動していきたいですか?

Eさん 社会の問題など、よりよくしていきたいことを発見できるようになってきたので、いろいろなところに視点を向けていきたいです。今回のコンテストは自分も利用する場所でしたが、ウクライナの戦争など、今は自分とは直接関係ないと思うことでも自分ごととして考えて、普段からもっと自分の意見を世の中に活かせるように考えていけたらいいなと思っています。例えば、産休や男性の育休の問題など、取りやすくするにはどうしたらいいか、みんなの意識で変えられることに着目していきたいです。

Hさん この3人での活動としては、観光甲子園というコンテストにエントリーしました。全国の多様な地域課題を観光産業で解決するプランを提案するコンテストです。私個人としては、積極的に自分から話せるようになりたいので、リラックス法を活用して自分のペースで、緊張しないで話せるように頑張りたいと思っています。

Oさん 私は、積極的に行動できるようになりたいです。迷ったりすることもありますが、 小学校の先生が「迷ったらとりあえずやってみる」と言っていたことが印象に残っています。中学の3年間ではあまり実践できなかったのですが、今回のコンテストを機にできるようになってきたので、その気持ちを忘れずに今後も頑張りたいです。

 

――将来についてどのように考えていますか?

Eさん 昔から音楽や舞台、ライブなど、人を楽しませるものを見ると感動して、いつか私もみんなを笑顔にして幸せな気持ちにできる職業に就けたらいいなと思うようになりました。表舞台に立つ仕事に限らず、裏方の仕事でも誰かを幸せにできる仕事がしたいです。

Hさん 父がよく会社でプレゼンをしていると聞くので、自分もプレゼンができるような仕事をしたいと思っています。

Oさん お話を考えたりするのが好きで、映画とかアニメとか漫画も好きです。私の人生を変えたのは『鬼滅の刃』という漫画です。6年生の頃に見てはまってから、漫画は全巻買って、アニメはリアルタイムで見てから録画したものも見ていました。それから他の作品を見るようになり、本も中学生から読むようになりました。脚本家や映画監督など、芸術系の道に進みたいと思っています。

生徒同士で学び合って成長できるPBL

PBL型授業の導入から8年を経て、教員や生徒たちの変化について石井槙先生(美術科・入試広報室)に話を聞いた。

PBL型授業と基礎学力養成のバランス

同校では、生徒が自ら考えることを促すPBL(Problem Based Learning)と呼ばれる問題解決型の授業を全教科で実施している。PBL型授業では、教員が投げかけたトリガークエスチョン(導入の課題)に対して、生徒たち自身で考え、その後グループで話し合って意見をまとめて、最後に発表するという流れになっている。PBL型を導入したのは、8年ほど前だと石井先生は振り返る。

「PBL型授業は、社会科の教員が中心となってスタートさせました。軌道に乗るまでは、社会科や国語など、答えのない問いを提示しやすい教科で実施して、段々と複数の教科に広げていったのです。PBL をカリキュラムの内容を学ぶ手段として使ったり、授業の導入や学びの動機づけとして行ったり、様々な活用法が見いだされ、どの教科でも取り組めることに気が付きました。経験を積み重ねる中で生徒たちも熟練してきましたが、教員側が提示するトリガークエスチョンがバラエティに富んだものになってきたことが、PBL型授業の進化と言えるかもしれません」(石井先生)

PBL型授業を展開させるためには、基礎学力も重要であると石井先生は語る。

「PBL型授業では、生徒同士で話し合いをするときに基本的なことがわかっていないと考えを深め合うことはできませんし、発表しても説得力がありません。インターネットを活用して自分の主張に必要なデータを拾ってくる際には、そこに書いてあることが信じられる情報か判断する力も必要です。そういった力は、基礎学力を養うことで育てられると考えています。PBLをスタートさせてからしばらくは、PBLに振り切った時期もありました。近年は、PBLで培ったプレゼン力を活かして総合型選抜で大学受験に挑む生徒も多いです。総合型選抜では、この大学でこれを学びたい、こんな風に社会貢献したい、将来はこの職業につきたい、などのビジョンが語れないと合格できません。そこに結びつけられるかが重要ですが、たった6年弱で将来のことを明確に語れるようになるのは難しいでしょう。PBLは、1つの手法です。現在は、基礎学力の大切さを再認識しながら、 双方の学びの手法が良い影響を与え合うバランスを模索しつつ、授業を展開しています」(石井先生)

PBL型授業の5ステップ

1.共通認識を持つ
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2.トリガークエスチョンの提示
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3.個人で意見構築する
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4.グループで討論する
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5.仲間へプレゼンテーション
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1歩を踏み出すきっかけを教員がサポート

PBL型授業がフィットしてうまく使いこなし始めている生徒は、様々なコンテストから興味のあるものを自分たちで選んで応募している。昨年開催された「HANEDA EXPO 第1回こども未来ピッチ」というコンテストでは、同校から参加したグループのアイデアが最優秀作品に選ばれた。

「PBL型授業で身につけたことを活かして、授業以外の場で積極的に活動しているグループもありますが、力があるのに自信が持てないため活動につなげられない生徒もいます。そういった生徒たちが1歩を踏み出せるように、教員が声をかけてみたのが受賞した3人だったのです。教員が動いたのは3人に声をかけたところまでで、何をやるかは本人たちが考えました。多くの生徒は、良いトリガーと出会えれば自分たちで取り組めます。興味・関心に従ってトリガーを自分で見つけられるように、その力を自分の将来につなげられるように、教員はきっかけ作りのサポートをしています」(石井先生)

教員が何かを教えるより、生徒同士で学び合って成長していけるところが、PBLの面白さだと石井先生は語る。

「最短で答えにたどり着こうとするより、たくさんチャレンジして、たくさん失敗できる人が本校に合うと思います。的外れな意見が出る場合があってもよいのです。それをみんなで聞き合って、意見交換を繰り返すことが安心して行われる6年間でありたいと思っています。他の生徒の意見を聞いたり、プレゼンをする姿を見たりして、あの意見がいいとか、あんなプレゼンがしてみたいなどと感じながら、生徒たちは少しずつ変化していきます。自分以外の他者と一緒に頑張ることが好きな人なら、本校で過ごす6年間の中で大きく成長できると思います」(石井先生)


取材を終えて

インタビューした3人が集まったのは、教員からの声かけがきっかけだったが、そこから先は自分たちでコンテストを見つけて取り組んで、結果を出すことができたのだ。その経験が大きな自信となっていることが、3人の話から伝わった。同校ではPBL型授業体験会を開催しているので、興味を持った方はぜひ体験していただきたい。

和洋九段女子中学校のホームページ

 

 

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