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和洋九段女子中学校スペシャルレポート11/PBLの学びとコースの特色を活かした 「グローバル探究」と「理数探究」の授業

Special Report

和洋九段女子中学校高等学校は、高校過程で「本科」「グローバル」「サイエンス」の3種からなるコース制を設置。このうち「グローバル」と「サイエンス」では、それぞれのコースの特色を活かした探究活動を行っている。その取り組みを取材した。

Index

  1. さまざまな視点から「平和」を考える「グローバル探究」
  2. 生徒自らテーマを設定し、研究に取り組む「理数探究」
  3. 「グローバル」、「サイエンス」コースの生徒にインタビュー

さまざまな視点から「平和」を考える「グローバル探究」

 外部講師の話や海外記事を通じて視野を広げる

同校のグローバルコースは昨年度より、高校3年生を対象とした「グローバル探究」の授業を行っている。この授業は「平和」を大テーマに設定し、1学期はさまざまなトピックのもと平和について考え、話し合い、自分なりの意見を構築する。2学期は、ネイティブ・スピーカーの先生が平和に関する英文の記事を用意し、生徒はそれを読み解き、考察する。そして2学期の最後には、自分の考えた平和を英語で論文にし、プレゼンテーションを行う。

 

和洋九段
▶︎水野修先生

 

「グローバル探究」を導入した目的について担当の水野修先生はこう話す。「本校は『平和』を学ぶ機会が多い学校です。そして、高3で平和の定義立てをすると、さまざまな意見が出てきます。平和を捉える視点も生徒によって異なり、地球全体を見て平和を考える生徒もいれば、市民レベルで平和を考える生徒、日本と他国というように2国間で見る生徒もいます。こうした違いを共有しながら、平和について自分の答えを見つけ、アクションを起こせたら良いと考えました。また授業を通じて、物事をさまざまな角度から見る力を付けてほしいと思っています」

1学期の授業では、外部から講師を招いて話を聞く機会も設けている。「たとえば、立命館アジア太平洋大学の方からは『紛争と平和』について講演をしてもらいました。また、カンボジアをはじめ、開発途上国で教育支援を行っているCIESF(シーセフ)の方には、カンボジアの紛争から平和に至るまでの過程や今も介在する問題について、JICAの青年海外協力隊の活動に参加した方には、国際貢献のアプローチなどについて語ってもらいました。生徒たちにとって、新たな気づきを得たり、自分の中の平和や取るべき行動を見つめ直したりする良いきっかけになったのではないでしょうか」(水野先生)

2学期はネイティブの先生が、アメリカやカナダ、ジャマイカ、オーストラリアなどさまざまな国の英文記事を用意し、内容も「世界が平和に関してどんな捉え方をしているのか」「世界は日本をどう見ているのか」などと多岐に渡る。ディスカッションも英語を使い、ネイティブの先生も「グローバル探究は、海外大学の授業のようだ」と評価しているという。

 大学入試にも対応する「グローバル探究」の学び

「グローバル探究」は、同校が重視するPBL(Problem Based Learning)形式で授業を行っている。水野先生によると「平和という答えのない課題について、自ら考え、解決を目指します。授業は対話型で行います。その中で、自分の意見を共感してもらえることもあれば、人の意見を聞くことによって自分の考えや固定概念が崩れることもあります。そしてもう一度、自分の考えを構築していく。そのプロセスが生徒を大きく成長させますね」と話す。

また「グローバル探究」で身につけた力は、大学入試にも対応すると言う。「1つの題材をいろいろな視点で見て、自分なりの答えを出し、他者に伝える。これは総合型選抜や学校推薦型入試でも必要とされる力です。2学期は、英文を読んでレポートを書き、ネイティブの先生が添削をします。読む力や書く力は、もちろん一般選抜でも活かされます。プレゼンテーションも行うので、アウトプットの力も付く。総合的に英語のレベルアップが図れるのです」

とはいえ「グローバル探究」でもっとも大事にしているのは、グローバルな視点を育てることだと水野先生は強調する。「今後は、タイプの違う外部の方に話をしていただき、英文記事も国の範囲を広げ、開発途上国の記事も扱いたいと思っています。より多角的な視点で平和を考えていきたいです」

生徒自らテーマを設定し、研究に取り組む「理数探究」

 仮説を立てて、実験、検証する理系の学びを実践

サイエンスコースでは、昨年度の高校の学習指導要領改訂を見越し、2020年度から高校1、2年生を対象に「理数探究」の授業を実施している。導入の経緯について、数学科の平山慎一先生は「仮説を立てて実験し、検証することが理系の学びのサイクルです。このサイクルを回しながら、理数的思考力を育てたいと考えました」と話す。

 

和洋九段
▶︎数学科 平山慎一先生

 

高1では、理科と数学科、それぞれ2名の教員が交代で、それぞれの専門分野を中心にテーマを設定し、PBL型の授業を実施。その中で生徒たちは、理数の基礎知識や実験技能、データ分析などを学ぶ。それをもとに高2では、自分でテーマを決めて研究活動を行い、最後にプレゼンテーションをする。

平山先生によると「理数探究のコンセプトは、生徒も教員も楽しいこと。高1の授業では、生徒の知的好奇心を喚起するようなテーマを4人の教員が自由に選んでいます。私は確率や統計学が専門で、新型コロナウィルス感染症が流行り出した頃、PCR検査をテーマにしたことがありました。本当は陽性なのに陰性と診断されたり、その逆もあることを確率をもって話をすると生徒たちは興味津々の様子でしたね」と話す。

高2では、生徒が自分の興味関心のあるテーマを設定し、仮説を立てて実験、検証、レポートをまとめるところまで主体的に研究活動をする。「最初に重要なのは、テーマ選びです。基本的に生徒のやりたいことを優先しますが、時々、壮大過ぎて学校では調べられなかったり、実験にお金がかかり過ぎたりするものもあり、その場合は、もっと身近なところで探すように声がけをします。生徒が選ぶテーマは実にさまざまで『のびるチーズを作るにはどうしたらよいか』『ダンボは実際に飛べるのか』といった面白いものもたくさんありますね。とにかく調べ学習では終わらせず、実験をするか、何かを創り出すか、データを取って分析するか、そのどれかを必ずやるように指導をしています。

そして教員は、生徒の質問に応じたり、実験の方法やデータのとり方のアドバイスをしたりしますが、原則、サポートに徹します。たとえば、実験は、温度や湿度など同じ条件のもとでなければ比較ができず、そこがずれている生徒もいるので、条件を揃えるにはどうすればよいか、一緒に考えたり、アドバイスを送ったりしています」(平山先生)

 進路選択や大学の学びにつながる「理科探究」授業

「理系探究」の取り組みも、卒業後の進路選択や大学入試の総合型選抜や推薦型選抜につながることがあるという。実際「のびるチーズ」を研究した生徒は、その分野をさらに学びたいと北里大学の酪農系に進学。1年かけた研究活動で自信をもって面接に臨み、大学の教授からも「良い研究をしている」と評価を得たそうだ。また、自分で仮説を立て、科学的な論拠で検証する学び方は大学でも行われており、その基礎を高校時代に築くことができる。

平山先生は「研究の中で、生徒たちは『こういう実験をしたら、こんな結果が出るだろう』と予想を立て、それが外れることも多くあります。その原因を探し、実験の仕方が間違っている時は改善し、自分が勘違いをしていた時は考え直す。そういう学びがとても重要です。生徒には失敗から学ぶ経験をたくさんしてほしいと思っています」と話す。「そして今後は、似たようなテーマで自由研究をしている生徒同士を組ませたり、先輩が取り組んだ研究を引き継いだりして、研究活動を進化させたいと考えています」

 

「グローバル」、「サイエンス」コースの生徒にインタビュー

 

グローバルコースの高校3年生とサイエンスコースの高校2年生にそれぞれの探究授業の取り組みや感想などを聞いた。

Kさん グローバルコース 高校3年生
Nさん グローバルコース 高校3年生
Tさん サイエンスコース 高校2年生

 

――最初に、今のコースを選んだ理由を教えてください。

 

和洋九段
▶︎Kさん グローバルコース 高校3年生

 

<Kさん>私は小学生の時、海外に住んでいて、帰国後もインターナショナルスクールに通っていました。ネイティブの先生とオールイングリッシュで授業を受けられるのが魅力で、中学からグローバルクラスに入り、高校でも英語をレベルアップしたかったので、グローバルコースを選びました。

<Nさん>私は反対に、英語は0からのスタートでしたが、ネイティブの先生や英語力の高い生徒から刺激を受けて勉強しようと思い、中学の時にグローバルクラスを選びました。3年間で英語力が上がったことを自分でも実感でき、もっと成長するためにグローバルコースに進みました。

<Tさん>私も中学3年間は、グローバルクラスでした。そのまま上がるつもりでいたのですが、中3の理科の授業で、担当の先生が大学で蜂の研究をしていたという話を聞き、生物学に興味を持ちました。ぎりぎりまで悩んだのですが、最後はサイエンスコースを選びました。

 

――「探究」授業の取り組みや感想を教えてください。

 

<Kさん>どうすれば平和を実現できるか、いろいろなトピックで課題解決をする学習をしています。学校が力を入れているSDGsに関連した授業もありました。SDGsの目標が書かれたカードを使い「平和につながるのはどれか」グループでカードを並べて、意見を出し合いました。

 

和洋九段

 

<Nさん>大学の教授や、現地で国際貢献をしている人から、話を聞くこともあります。これまで全く知らなかったことや、教科書に載っていないことを生で学べるのが新鮮で、知識も増えました。

<Tさん>1年の時は、先生が理数に関係する身近なテーマで、授業をしてくれました。学校で教わる数学は計算方法などを知っていても、あまり使う場面がありませんが、探究の授業では既にある現象を数字化したりするので、数学も楽しく感じられます。

 

――特に印象に残っている授業はありますか。

 

和洋九段

 

<Kさん>「なぜ戦争が起きるのか?」というトピックの授業があり、その時に、「時間がかかってゴールにたどり着けない話し合いよりも、短期間で勝ち負けの決着がつく戦争のほうが、メリットがあるので戦争が起きる」といった話がありました。私はこれまで戦争の影響ばかりに目が行って、原因について考えたことがなく、戦争のメリットという捉え方に衝撃を受けました。

 

 

 

和洋九段
▶︎Nさん グローバルコース 高校3年生

 

<Nさん>先生が、古代から現代に至るまでの戦争の年表をまとめてくれたことがありました。戦争単体で勉強したことはありましたが、年表を見ると、ものすごい数の戦争が途切れることなく続いていることがわかり、その事実に驚きました。

<Tさん>印象深い授業はいろいろありますが、3×3の格子の〇×ゲームをどうしたら勝てるか、ペアで必勝法を考えるという授業が面白かったです。ちょうど数学で確率や場合の数を勉強していたので、教わったことを活かしながら考えました。

 

――現在、取り組んでいること。また、授業を通じて身についたことなどを教えてください。

 

和洋九段
▶︎Tさん サイエンスコース 高校2年生

 

<Tさん>「植物に音楽を与えたら、どう影響するのか」というテーマで、自由研究に取り組んでいます。夏休みに実験をするのですが、温度や水、光などの条件を同じにして、2つのカイワレ大根を育て、最初は音無しと、ピーという音を鳴らして成長を比較します。次に、クラシックやロックなど、ジャンル別の音楽を流してみようと考えています。人間も落ち着いた曲を聞くとリラックスするので、私はクラシック音楽が一番カイワレ大根の成長につながるのではないかと予想しています。

 

和洋九段

 

<Kさん>以前から海外のニュースにも目を通していましたが、グルーバル探究で世界の紛争や貧困などを学んだ後は、もっと意識して世の中の出来事に目を向けるようになりました。また日本の報道は、海外で伝えられていることを知らせなかったり、この国のことは細かくピックアップするけれど、こっちの国のことはアバウトだったり、偏っていることがあります。そこは気を付けないと自分の考えが偏ってしまうので、情報を幅広く集めることの大事さを改めて感じました。

<Mさん>私は物事を深掘りして考える癖がつきました。戦争という大きな出来事には、何らかの原因があり、それを突き止めるにはいろいろな情報を集める必要性があります。よって情報リテラシーを高めたいとい思うようになりました。また、戦争や平和を国際的な視点から考える授業を通じて、その他の問題、例えば高齢化の問題なども、日本の中だけでなく、世界的な視野に立って考えようと意識するようになりました。

 


取材を終えて

同校はコース制をとっていて、探究活動にもコースの特色が出ている。また、グローバル探究、理数探究とも、生徒が主体的に取り組み、PBL型の学習スタイルが定着し、成果を上げていると感じた。グローバル探究は2年目、理数探究は4年目になり、また新たな展開があるのではないかと期待している。

 

和洋九段女子中学校のホームページ

 

 

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