1805年のトルファルガー海戦
1805年、提督ネルソン率いるイギリス海軍はナポレオン率いるフランス・スペイン連合艦隊に大勝利を収めました。スペインのトラファルガー岬の沖で行われたトラファルガー海戦です。ナポレオン戦争における最大の海戦で、イギリスはこの海戦の勝利により、ナポレオンの英本土上陸の野望を粉砕しました。
トラファルガー海戦が注目されるのは、イギリス33隻対フランス41隻というイギリス不利の中でイギリスが勝利した点にあります。
この勝因を分析する時に数学の出番となります。最大のポイントは、敵イギリス艦隊を分断するネルソンの戦術です。33隻のイギリス艦隊が分断したフランス艦隊をそれぞれを叩いていくことで勝利に導きました。
いま簡単に41隻のフランス側を20隻と21隻に分断したとしましょう。すると、イギリスとフランスの戦隊の数は、最初の戦闘で33:20、次に33:21となります。これならば形勢が逆転します。
そもそも開戦当初の戦力のままでもなんとか戦えるのではないかとも思われます。33:41はイギリスが圧倒的不利ではなさそうです。しかし、実はこれがそうではないのです。33隻のイギリスが41隻のフランスに立ち向かっていく場合、イギリスは圧倒的不利、勝ち目はなかったのです。
ナポレオンの法則(兵力2乗の法則)
英仏戦力比は隻数の比33:41=1:1.24(約1.2倍)ではありません。結論を急げば、33の2乗:41の2乗、となります。したがって、1089:1681=1:1.54(約1.5倍)となり1:1.24よりも差がひらいていることがわかります。
なぜこうなるのかを説明するのが微分方程式ですが、それは後回しにして、このナポレオンの法則をもう少しだけくわしくみていきましょう。あらためてナポレオンの法則とは、簡単に言えば「戦力は、数(戦闘員、隻数)の2乗に比例する」というものです。
トラファルガー海戦では、戦闘員の代わりに隻数(イギリス33隻、フランス41隻)を考えます。もし、隻数が小さいイギリスがフランスによって全滅させられた場合フランスは何隻残るでしょうか。ナポレオンの法則によって次のように計算できます。
√(41の2乗 − 33の2乗)=24
フランスは当初の半分以上の24隻が残るという計算です。
ネルソンがとった戦略はフランス41隻に体当たりしては勝ち目がないので、半分ずつを順にたたいていこうというものでした。先にも述べたように、最初33:20、次に33:21のように分けて闘ったとすると、ナポレオンの法則によって戦力は次のように計算されます。
英:仏=33:20 → 33の2乗:20の2乗=1089:400=1:2.72(約2.7倍)
英:仏=33:21 → 33の2乗:21の2乗=1089:441=1:2.47(約2.5倍)
どちらも形勢逆転となります。
ナポレオンの法則(兵力2乗の法則)の意味すること
簡単のために小さい数で説明してみましょう。イギリスが3隻、フランスが4隻だとした場合、その差は1隻だけなので大差ないように思われますが、ナポレオンの法則は
英:仏=3:4(約1.3倍)→ 3の2乗:4の2乗=9:16(約1.7倍)
になるということです。
これは、たとえ最初の隻数の差がわずかであっても、差が時間が経つにつれ大きくなっていき最後には大差がつくことを表しています。逆に言えば、人数(隻数)が大きければ大きいほど有利な戦いになるということです。
▶︎次のページ「ナポレオンの法則の別名、集中効果の法則」
次のページへ
- 1
- 2