シミュレーション
200年に渡り欧米では現実の社会問題──医学・経済学・物理学・生理学・ロケット工学・芸術・軍事に対して、「微分方程式であらわされる数学モデル」を用いたシミュレーションが問題解決に貢献してきた歴史と伝統があります。
その原点が、英国の経済学者マルサス(1766-1834)による「人口論」(1798年)です。マルサスの人口論はシンプルなモデル──シンプルな形の微分方程式がゆえに広範囲に渡り影響を与えました。
微分とは勢いのこと
いったいどのようにして未来予測(シミュレーション)が可能なのか。簡単に説明してみましょう。分かりやすい例は車の運動です。今、時速100kmで走行しているとすれば、1時間後はここから100km先の地点に到達しているはずです。停止状態(時速0km)が1時間続くとしたら、その位置は変わりありません(0km先の地点)。この車の速度が数学でいうところの微分です。時速は車の勢いと言い換えることができます。ある時点での勢いが分かれば未来が計算できるということです。
こんどはアクセルを踏み続ける状況を考えてみましょう。車が停止状態でアクセルを踏み続けると速度が10km/h、20km/h、30km/h、40km/hと大きくなります。速度の勢いがある状況です。
アクセルを一定にしている時と踏み続ける時、それぞれで勢いがあることがわかります。前者(時速100km)は、位置の勢いがある状況で、後者(0km/hから40km/hに変化)は、速度の勢いがある状況です。
位置の勢い(微分)が速度で、速度の勢い(微分)が加速度ということです。
微分が勢いのことだと分かれば微分方程式も恐くありません。これから登場する微分方程式とは、勢いの方程式と読みかえましょう。勢いがどのような量に関係して決まるのかを表した式のことです。
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